2016年4月29日金曜日

原発問題連絡会ニュース 第271号2016年4月20日

 道原発連と国民大運動道実行委、原発問題後志住民の会の3団体は、2月中旬に行なった後志管内14自治体への訪問要請行動で出された自治体の見解や要望をまとめ、3月22日から4月7日の間に道と北電、道経産局、泊原子力規制事務所に要望書をまとめ申し入れを行いました。そのうち道知事と北電社長への申入れの結果の概要をお知らせします。




過酷事故前提の「原発は安全」と言えない!
「安全最優先」をいうなら


泊原発再稼働を容認せず、

      即時廃炉入りを求めるべき
―4月7日、道原発連、国民大運動道実行委などが

道知事に要望を申入れー

 

道知事への要望は、次の5項目。①フクシマの教訓=「原発と人類は共存できない」を踏まえ、過酷事故想定で安全だと言えない(泊)原発は再稼働を容認せず、国や北電に即時廃炉を求める、②毎年の原子力防災訓練は、住民参加は僅かで手順の確認が中心であり、実効性を検証できる訓練になっていない。実効性が検証できない防災訓練を繰り返すばかりでの泊原発の再稼働は容認せず、廃炉入りを求めるべき、③国の原子力防災指針は、被ばく前提で安全な避難が保障できないことを直視し、抜本的見直しを求めるべき、④UPZ圏も事故前にヨウ素剤を配布すべき、⑤再稼働の地元了解は、30キロ圏の13町村ばかりか、事故の影響が及ぶと想定される全市町村にすべきという自治体の声を踏まえ、国に道知事の具体案を示して求めるべきーです。



泊再稼働問題等で道へ申し入れ
(2016年4月7日、道庁第2別館)

 これに対して道側は、①については、国は万が一事故が発生した場合に備える規制責任があり、事業者には規制基準以上の安全レベルの達成をめざす保安責任がある。再稼働については、今規制委で審査中であり予断を持って言えない。②については、防災訓練は秋の大規模訓練のほか、冬季の暴風雪想定の訓練も行うなど工夫改善しながら実施してきた。今後も気象条件や複合災害など多様な事態も想定しながら、より実効性のあるものになるよう取り組んでいく。今年度の訓練は、国から国の総合防災訓練を泊原発で行いたいと表明があり、参加住民の安全、気象条件や複合災害など多様な事態を想定し、取り組む考えだ。③については、規制委員会が、過酷事故時の影響を最小限に抑えるために、フクシマ事故やIAEAの考え方などを踏まえ、専門的・技術的な観点から定めたもので、道と関係市町村は、法令に基づき、この指針に従って、防災計画を策定することとされている。5㎞圏のPAZは、放出前から予防的に避難する、5~30㎞圏のUPZは、まずは屋内退避し、緊急モニタリングの測定結果により放射線量率が一定以上となった場合、プルーム(放射性雲)通過後に避難を開始する。この避難では、30㎞圏境界付近で放射性物質の付着状況を検査し、必要に応じて除染を行うなどの防護措置が定められている。道はこうした対応に万全を期す。④については、屋内退避により内部被ばくを出来る限り回避したうえで、万が一避難などが必要となった場合、原子力規制員会が服用の必要性を判断し指示するもの。道は関係市町村と連携して、緊急時の配布体制の整備に不断に取り組んでいく。⑤については、再稼働の地元了解に法的定めはなく、国がエネルギー基本計画のなかで、「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」として行なっている。道は、国の責任で具体的な手続きを明確にすべきと考え、原子力発電関係団体協議会を通じて繰り返し意見を反映しているーなどと回答。

道の回答に対して、大田勤岩内町議から、「北電はこれまで基準地震動を3回引き上げてきた。370ガルから550ガルへ、今度は620ガルへ。しかし、建屋や施設などの強度を上げる工事を行なったように見えない。道はどう受け止めているか」、大石美雪岩内町議は、「地元了解は法的要件でないというが、法的要件にすべきだ」などとただしました。また、米谷道保代表委員は、新規制基準はフクシマ並みの過酷事故が起きることを想定としており、安全だと言えない。規制委員長も繰り返し「規制基準に適合しても安全だというわけではない」と言っている。避難計画も被ばく前提であり、安全最優先とは言えない。二度とフクシマを繰り返してはならないというのが国民多数の願いだ。原発はやめる以外にない。安全最優先という道知事の納得いく見解を聞きたいーと強く要求しました。

 


安全と言えない原発は再稼働せず、
即時廃炉の決断を!

―後志管内自治体関係者の声を真摯に受け止めよ!
 3月31日、北電本社へ申入れー

 


北電本社には3月31日、次の3項目を要望し、申入れました。①規制委の審査に「適合」しても安全だと言えないのだから、泊原発は再稼働せず、即時廃炉を決断すること、②後志管内の30キロ圏内の13町村の避難計画は、実効性がないから、フクシマのような過酷事故になれば、貴社が責任を負えない規模の環境破壊や環境汚染、国土喪失を招きかねないことを直視し、泊原発は再稼働せず直ちに廃炉を決断すること、③万が一の再稼働に向けての地元了解については、道知事と泊村長だけなく、30キロ圏の13町村はもとより、被害が及ぶ想定されるすべての市町村の了解を得ることについて、貴社も積極的に賛成を表明することー。


北電本社へ申し入れ
(2016年3月31日)


 応対した北電広報部の大照真由美エネルギー担当課長や三上博光課長らは、①フクシマ原発事故の教訓などを踏まえた新規制基準の審査を受け、泊原発の安全性は高まっており一日も早く再稼働させたい、②原子力防災は、関係法律で国と道、市町村、電力事業者の役割の大枠が決められており、避難計画は自治体が作ることになっている。30キロ圏の13町村は策定済みで、内閣府が泊地域原子力防災協議会を設置し、協議しながらやっていると認識している。当社が支援できるものがあれば取り組む。③泊原発周辺4町村と安全協定、16市町村と安全確認協定を結び、情報提供や意見交換の機会を設けるなどしている。当社の安全対策は、HPやチラシで示しているが、一層理解を得るよう4月13日から後志管内20市町村に地域説明会に出向くことを昨日プレス発表した。むずかしい専門用語も出てくるが丁寧に説明したいーなどとの回答にとどまりました。


これに対して原発連から、「貴社の回答は、後志管内自治体の真剣で切実な声を真摯に受け止めないものだ」「真摯に受け止め、泊原発は再稼働せず、廃炉の決断をすべきだ」と厳しく批判しました。

いまこそ原発から撤退し、
    再生エネの抜本的普及に転じるべき
―第1回定例道議会―日本共産党道議団が知事に迫るー
 
フクシマ原発事故から5年。今号には、日本共産党北海道議団の第1回定例道議会での原発・エネルギー関連の質疑の一部を紹介します。
原発は莫大な費用負担なしに成り立たない電源
であることは明らか
この費用を再生可能エネの普及や廃炉に投じ、
     安心なエネ供給に転じよ ー 真下紀子道議
代表質問に立った真下紀子道議(団長)は3月4日、原発・エネルギー問題について再質問、再再質問を重ね、原発再稼働を 
選択せず、再生可能エネに大きくシフトすること、廃炉を含めた現実的スケジュールを示すべきと道知事に決断を迫りました。


真下紀子道議:泊原発では、北電が安全対策として2000億円以上を費やし、泊原発3号機の停止以降は、年間で812億円の維持管理費と冷却費用が4年間で約3200億円など、合計5000億円を超える費用が(投入され)、総括原価方式で電気料金として道民負担になるわけで、道民生活、道内経済の不利益は非常に大きいといえる。また、1984年から今日まで31年間に投入された約1415億円の原発関連の立地交付金、補助金と給付金等の原発マネーは国民の負担であり原発は莫大な国民の費用負担を前提にしなければ成り立たない電源であることは明らかです。知事は、原発の危険を回避し、高い電気料金の負担から道民を解放するためにも、もう原発を断念すべきではないか。泊原発の再稼働を選択せず、再生可能エネルギーに大きくシフトしていく、廃炉を含めた現実的スケジュールを示すべきではないか。

真下紀子道議
高橋はるみ道知事:暮らしと経済の基盤である電力は、それぞれの電源の特性が生かされた多様な構成としていくことが必要。将来、原発に依存しない北海道をめざし、新エネルギーが主要なエネルギー源の一つとなるよう、道内の様々な資源を生かし、その導入拡大を図っていく。

全国首長アンケートで将来の原発比率は
       「引下げ45%、全廃21%」(共同通信社)
再生エネ推進の道予算~毎年4億円前後では
     20年度導入目標81億kwhの実現は不可能  
―佐野弘美道議 ~ 予算特別委でただすー
 佐野弘美道議は3月18日、予算特別委で原発・エネルギー問題について質問に立ちました。

佐野弘美道議:フクシマ原発事故から5年たち、共同通信社が全国の首長に原発のエネルギー比率の在り方を聞くアンケートを実施。原発の比率低減が44・6%、将来全廃が21%で、原発の安全性や核廃棄物処理への不安を解消できないとして再生可能エネへの転換を望む声が目立ったと報道。道知事は将来的にゼロにすると言及していない。省エネ・新エネ道条例にのっとった回答になってないのでないか?

佐野弘美道議
道環境エネルギー室長:共同通信社のアンケートは、国のエネルギー政策の在り方を問う趣旨だったので、「社会経済の変化に柔軟に対応できるよう多様な電源構成とすることが必要」と回答したもの。
佐野弘美道議:再生可能エネルギーの供給量はいくらか。道内のエネルギー供給量に占める割合はどうなっているか。
道環境エネルギー室長:2014年度の道内の風力、太陽光、地熱による発電電力量は10億8千万kwhで、総発電電力量395億6千2百万kwhの2・7%。2010年度の1・5%に比べ年々増加している。
佐野弘美道議:比率として1・5%から2・7%に増えたが、発電電力量が減少しているなかでそうなっただけで、4億3千2百万kwh増に過ぎない。道は全国一のポテンシャルを持っていると公言しているが、再生可能エネ推進予算の推移と2016年度予算はいくらか。
道環境エネルギー室・山野参事:新エネの予算額は、2012年度が3億3905万円、2013年度が3億7997億円、2014年度が4億1303万円、2015年度が4億246万円、2016年度が4億4696万円。
佐野弘美道議:毎年4億円程度の予算しかついていない。これでどうして推進できるか。原発予算に比べてあまりに少なすぎるではないか。
道環境エネルギー室長:新エネが主要なエネルギー源の一つとなるよう導入拡大を進めていく。来年度も「一村一エネルギー事業」をはじめ、地域の特性や取組みに応じた支援に努める。今後とも、全国トップクラスのポテンシャルを発揮し新エネ導入に取り組んでいく。
佐野弘美道議:そう答弁されても、二〇二〇年度の導入目標は81億kwhではありませんか。これまでの五年間で4億3200万kwh増に過ぎません。このペースでは目標の実現は不可能でないか。
道環境エネルギー室長:新エネ導入は毎年着実に拡大してきており、今後期待されるバイオマスなどのエネルギーの地産地消の取り組み支援や大型プロジェクトの実現などにより、2020年度までの導入目標の実現に向けて取り組んでいく。
 

《原発連ニュースにみる道原発連のあゆみ》 
第1回  原発連結成から35年。今号から先輩諸氏のご協力でこの企画を始めます。

原発連ニュースが創刊された頃 

           
               石崎健二 (日本科学者会議会員・道原発連顧問)

今、手許に「原発問題全道連絡会ニュース」の創刊号がある。A3版2頁の立派な活版印刷で発行日は1981年7月15日。編集発行責任者は事務局長の佐藤信安氏(道統一労組懇代表委員)。第一面は「共和・泊原発問題重大局面に」「くらしと安全ともに守る」の見出しと大きな写真があり、「5月12日、泊村原発建設予定地を視察する連絡会の現調団」と説明されている。記事の見出しは「原発建設予定地堀株住民と懇談」で、連絡会からは26名が参加、堀株部落「住民の会」の人々の一言ひとことには、原発を文字通り「生きる権利」全体の問題として捉える厳しさがこもっていた、と懇談の様子を紹介している。第二面は81年4月17日に起きた放射性廃液大量流出事件についての北大工学部教授神山桂一氏の談話で「敦賀原発事故は偶然でない」。事故はちょっとした不注意から起きること、後始末には作業員の放射線被ばくという犠牲が避けられないこと、などと指摘されている。


 原発連発足のいきさつを第一面の囲み記事でみてみよう。呼びかけたのは北海道統一労組懇、原水爆禁止北海道協議会、安保破棄諸要求貫徹実行委員会の三団体で81年4月21日発足である。申し合わせとして、情報交換、学習会の組織化、その他、道民世論を喚起する必要な共同行動の推進、などを挙げている。


ところで、北電が道と札幌通産局との協議で泊原発を共和・泊地区に決めたのは1969年9月である。岩内郡漁業協同組合はその前年68年に敦賀市などの原発先進地を視察していた。そして70年8月に、漁業の町として発展するには原発は害あって益なしであると岩宇4漁協による原発設置反対漁協連合委員会が原発問題を漁民の立場を加味して総合的に取り上げた冊子を作成した。漁協連合委員会が中島篤之助、川崎健の両氏を招いて最初の講演会を開催したのも70年11月である。71年にはいると「原発を考える会」が1月に共和町で2月に岩内町とそれ以降各地に住民組織が誕生した。一方で北海道原発五者共闘(社会党、全道労協など)が3月に服部学氏を招いて最初の講演会を開催。そして71年12月には社、共、地区労、漁協、考える会などの45団体で「原発設置に反対する岩内町民会議」を結成するに至った。


しかし75年4月の岩内町議選で原発協力議員が過半数になり、12月には岩内郡漁協が北電との話し合いを始めた。76年12月に岩内町議会が条件付き賛成を決議すると77年にかけて他の町村議会もそれに続いた。81年9月に岩内郡漁協が条件付き賛成に転じると、12月に通産省が「第1次公開ヒアリング」を開催。こうして泊原発設置反対運動の第一ラウンドが終わりを告げようとしていた頃、原発連が発足したのである。