2016年12月28日水曜日

原発問題連絡会ニュース 第279号 2016年12月20日


2016年 原発再稼働STOP!
                    どうする核のごみ!
 「全国交流集会in岩手」に15都道府県から270人      


  今年の全国交流集会が11月27日、岩手県盛岡市内で開かれ、15都道府県から約270人、うち岩手県内から200人余、北海道から5人が参加し、終日熱心に基調報告と記念講演、各地の経験を視聴し、交流を深めあいました。岩手県は原発未立地県で原発問題住民運動県連絡センターも未結成です。こういう県での成功は意義深いことです。


伊東達也筆頭代表の基調報告にもとづき

         原発・核燃サイクルから撤退の運動をさらに広げよう

 
基調講演は約50分でしたが、内容の濃いものでした。1つはフクシマ後の情勢の特徴。被災者対策も被災地対策も進まず、被災県民切り捨て政治が目に余ること、いまだに帰還困難区域の337㎢、26300人の居住者には帰還計画も除染計画もなく、黙っていれば廃村と棄民が強いられかねない。浪江町津島地区が集団訴訟を起こしたのは当然のこと。2つは、事故収束対策の見通しも立たないまま、国と東電はフクシマ原発事故の検証も行わず、原発再稼働と海外輸出に暴走―これほど無責任なことはない。3つは、日本の原発災害損害賠償法で無限責任だったものが、事故後原子力損害賠償支援機構法に改悪され、東電を生き残らせたばかりか、2014年には原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に再改変され、廃炉費用を国民に負担させるものとなった。チェルノブイリ原発事故30周年の今年秋、ウクライナなどの現地調査に行ったが、あらためてウクライナやベラルーシでは、原則として国の責任で被災地を決め被災者を特定し、事故被災者に対する健康と暮らしを保障することをチェルノブイリ法に法制化している。対比して日本では「子ども被災者支援法」は出来たが、国が責任をもって支援する法制度にはなっていない、何としても「国が責任もつ原則」にして支援施策の抜本的拡充・強化を求めていく―と強調。
4つは、原発再稼働反対の運動と福島切り捨て政治の転換を求める運動を前進させようと訴え。
5つは、核のごみの最終処分場問題と岩手県の歴史的かかわりを紹介したうえで、政府が進めている科学的有望地の候補地選定作業の動向に触れつつ、社会的合意形成の方向を示す日本学術会議の「回答」と「提言」を踏まえ、社会的合意形成に尽力しようと呼びかけました。

最後に、原発・核燃サイクルからの撤退の合意形成について、運動の到達点を司法の前進や再稼働を争点に勝利した鹿児島県と新潟県の知事選の勝利の教訓に触れつつ、国と電力会社の責任を明確にせよと求める運動を起こそう。衆院選では「原発」を争点に安倍自公政権を打ち負かそう。来春に向けて「国と東電が責任を果たすことを求める請願署名」運動を成功させよう。3月4日には「ふくしまの復興と原発ゼロをめざす3・4大集会」(東京・日比谷野音)を成功させよう―などと呼びかけました。


今田高俊東京工大名誉教授(社会学)の記念講演を

         核のごみの最終処分問題の国民合意形成に生かそう
 
 
午後の冒頭に今田高俊東京工業大名誉教授(日本学術会議フォローアップ委員会の責任者を務めた)の記念講演「高レベル放射性廃棄物最終処分をめぐる日本学術会議の『回答』と『提言』について」がありました。岩手県の北上山地は地層が安定した花こう岩層と言われ、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の有力な候補地の一つと言われていて県民の関心も高く意義ある講演となりました。日本学術会議の『回答』と『提言』には、日本学術会議全体の合意をはかるうえで、やや譲歩的ととられる表現部分もあるとの説明も含め、日本学術会議が内閣府の機構の一つとは言え、今もそれなりの独立性・自律性を保持しており、その提言は、やはり意義あるものと受け止めることができました。特に国民合意形成へ向けた3つの組織・機構の提言―高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会を上に置き、そのもとに核のごみ問題国民会議と科学技術的問題検討専門委員会を置くーは、政府・経産省やNUMOは無視しているが、まじめに核のごみの処理・処分問題で国民合意の形成をはかる上では、今後必ず役立つものだと受け止められるものでした。

 
【特別発言から】  報告に続いて行われた特別発言から3氏の発言(要旨)を紹介します。


 井上勝博さん(さつま川内市議)は、11月の市議選で得票を417票増やし勝利、初当選の社民党市議と新会派「脱原発の会」を結成。鹿児島県知事選で三反園候補は、原発問題に意思表明がなく、やむを得ず県労連から候補を擁立した。候補の一本化を求める県民世論が高まり、「川内原発をいったん停止し、熊本地震の影響の再検証を行う」を公約に掲げることで告示1週間前に一本化が実現。原発問題が争点に浮上して8万票差で圧勝した。三反園知事は、九電に2回停止を申し入れたが拒否された。いま知事は、熊本地震の影響などを検証する検証委員会の設置を決意し、検証委員の人選を検討中。県議会は51人中39人が自民など原発推進派。県民は、再稼働反対を粘り強く闘い、一年間原発ゼロを実現した。ここに県民合意の方向がある。これを力に引き続き闘っていく―と発言
 

 山本雅彦さん(福井県嶺南連絡センター代表委員、大飯原発訴訟原告団)は、原発反対の全勢力が署名に取組み30万筆を超えた。昨年12月に知事に提出したが知事は出てこない。署名の中でのアンケートでは「子どもが小さい、原発は動かさないで」「原発止めても仕事はなくならない。動かさないことに賛成」など合意が広がった。大飯原発の再稼働差止訴訟は名古屋高裁金沢支部で争っている。裁判長は最高裁から来た人物で、一気に福井地裁の樋口判決を覆すだろうと思われていた。しかし、最近「若狭湾の地震の構造がよくわからない。これでは基準地震動が決められない」とか「規制委員会にいた島崎邦彦さんを証人に呼ぶ」と言い、立石雅昭先生なども証人に呼ぶことも認めた。広域避難については、まともな避難ができるマニュアルもないことが藤野、倉林国会議員の質疑でわかってきた。この問題も闘っていく―と発言。

持田繁義さん(柏崎市議)は、この間参院選と3つの首長選挙があった。参院選は市民と野党共同の森ゆうこさんが激戦を制して僅差で勝利。県知事選は、野党と市民共同の米山隆一候補が予想を覆して6万票の大差で勝利し、新潟ショックが起きた。米山候補は告示6日前に立候補を表明し①再稼働を許さない大義を掲げ、本気の共闘が実現した。NHKの出口調査でも、再稼働反対が62%、自民支持層の24%、民進支持層の83%、無党派層の60%で、再稼働許さないが県民世論という結果になった。一方、柏崎市長選挙は推した女性候補が敗れ、刈羽村長選は、再稼働オンリーの現職の無投票5選を許した。この間「なくそて原発!」の奮闘があって「再稼働を許さない柏崎刈羽の会」を結成して頑張れた。相手側は経団連が乗り込んできて「柏崎刈羽原発を動かすことが原発の安全性を示すことになる」などと大キャンペーンをはった。これに対抗して大同団結し、再稼働を許さない!が過半数を制した。全県民の運動が巻き起こりつつある―などと発言。
 
 
泊原発原子力防災訓練 ~
   これで安全最優先の避難訓練と言えるか
―手順確認の訓練にしても、
      あまりに安易なミスや計画変更など続出―
              岩内町の大田勤議員の視察から
 
今年度の泊原発の原子力防災訓練が13,14日の2日間にわたって行われました。道原発連は、北海道原子力防災センター(オフサイトセンター・共和町内)の現地対策本部の立ち上げや岩内町の要配慮者の避難、屋内退避訓練、環境中に放出された放射線量測定のモニタリングポスト設置訓練などを大田勤岩内町議が現地視察しました。いくつかの例を紹介します。
その1 テレビ会議を進める道庁危機管理官の音声が出ない
                初歩的ミスからスタートとは?

13日午前10時30分オフサイトセンターで原子力規制庁、道庁の危機管理官、泊村長、共和町長のテレビによるオフサイト会議は、進行役の道庁の危機管理官のマイクから音が出ないミスが発生し、急きょ規制庁の担当者が「本来は道が会議を進めるところですが、私の方でレジメを読みあげます」とメモを読み、泊村長と共和町長の確認を取って会議を終了するありさま。目を疑う光景でした。

その2 ヘリで飛来予定の中央省庁要員用ヘリ飛ばず。
           副大臣もヘリをバスに変更し1時間遅れ

 中央省庁派遣要員約40人はヘリで岩内町陸上競技場に正午頃到着予定で、競技場駐車場には報道関係者用のスペースも確保され、会場整理要員がヘリ到着を待っていました。当日の岩内の天候は曇り、雨は降っていませんでした。30分前には小型ヘリが競技場の上空を通過していきました。ところが、到着20分前に係員が来て「今日は飛んでこない」と連絡に来ました。現地対策本部長を務める予定の内閣府副大臣もヘリでの共和町の憩いの広場への飛来を断念し、バスに変更、オフサイトセンター到着が1時間遅れ、結局現地事故対策連絡会議は中止され、代わりの会議も開かれませんでした。一方、副知事はヘリで共和町憩いの広場に到着していました。

 その3 初めての安定ヨウ素剤配布訓練だったが、
               事前配布が一番効果的では?

回岩内町では初めて安定ヨウ素剤の緊急配布訓練が行われた。訓練参加者は大人14人、乳幼児2名の16名。事前の説明では、「ヨードチンキやうがい用のルゴール液でアレルギーが出る方は服用できません」と説明があった後、問診を受け、大人はヨウ化カリウム2錠、幼児はヨウ化カリウムゼリー状(模擬)が配布された。手順確認は必要だが、問診待ち時間が子どもたちには大変。訓練だから親は落ち着いていたが、事故になれば、問診する側も受ける側も相当混乱するのでないかと危惧された。
岩内町の0才から5歳まで約500人、6歳から18歳まで約1400人、歩行困難者約2500人、集合場所に集まれない住民も含め全町民に速やかに安定ヨウ素剤を手渡すことができるのか疑問でした。「誤飲を避けるために、問診を受けてから安定ヨウ素剤をもらったほうが安心」という幼児を抱えるお母さんもいたが、避難集合場所やバスで移動(避難)するときにヨウ素剤を受け取ることができるというが、自家用車による避難者はそのまま30キロ圏外に移動し、安定ヨウ素剤を手にすることができないのではと不安はぬぐえませんでした。
配布には事前問診が必要であり、一刻も早く子どもたちが服用できるようにするには、事前配布が一番効果があると思われた。
 
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《原発連ニュースにみる道原発連のあゆみ》   第6回  
 
「泊・幌延」直接請求運動  その1   菅野一洋 (道原発連 顧問)
 
「泊・幌延」直接請求の会の結成総会は1988年8月17日、全道から50団体が結集(または加盟の意思を確認)して開かれ、①会が要求する条例の内容、②署名目標と受任者の組織目標、③推進体制、を討議し確認。「道民へのよびかけ」を採択したたかいの火ぶたを切りました。盆明けの暑い日でした。

  *署名目標 ― 条例制定を請求するには、その該当する自治体に住む有権者の50分の1(北海道は8万人)以上の有効署名が必要。総会は50万署名を目標としました。
  *受任者 ― 署名を収集する人。国家公務員と5現業職員、公立学校教員は、法律の制約があるため受任者になれない。総会は受任者を2万5千人以上を組織するとしました。
 総会が確認した「条例と内容」、「具体的な取組み」の主要点は以下の通りです。
 〈条例と内容〉 安全性の未確立な泊原子力発電所と幌延の「貯蔵工学センター」を設置しない条例
  ―安全性の未確立な泊原発と幌延の核廃棄物「貯蔵工学センター」を設置せず、道民の生命と安全、豊かな自然を守ることを目的とする。
    そのための条例案として、①原発や核廃棄物貯蔵・処分施設はいずれも技術的に未完成で安全性の保障がないこと ②知事はこれらの施設の運転・建設の中止を勧告し、また、一切の協力をしないこと(この点で、全道労協が中心となって進めている「直接請求」は「知事…が原発運転の可否について道民の意思を確認することを目的」とし、道民投票の結果を「設置者と国に伝える」というだけであること)
   *全道労協などで構成する「泊原発凍結道民の会」が泊原発1号機運転に対し道民投票条例制定を求め直接請求署名を展開(1988年7月25日~9月25日)
 〈具体的な取組み〉 ―一刻も早く全道の全ての市町村に実行委員会を結成する。職場、学園でも実行委員会をつくり、宣伝、組織戦のセンターの役割を果たす。ニュースを発行し全道の取り組みを知らせみんなで活動の輪を広げる。各実行委員会はビラや宣伝カーを出し「泊・幌延」の風を吹かせる。 原発問題や、「いま、なぜ直接請求か」など大中小の学習会を開き、確信を深めあう。 全道民に「泊・幌延」直接請求運動への協力を呼びかける。
総会の終了後、会は記者会見をして結成総会の詳細を説明。直接請求の法定手続きが済み次第、全道一斉に署名運動が実施されることになること
を報告しました。

 8月22日、会は北海道条例制定を道知事に請求しました(地方自治法第74条第1項の規定により道条例制定を請求したのは齋藤敏夫、渡辺昌子、伊藤正明、鷲見悟の4氏)。請求代表者は同証明書の交付を道知事に申請しました。
「泊・幌延」署名推進ニュース第1号(8月24日付)は“いよいよダッシュ”の大見出しで全道に檄を飛ばしました。
 9月10日、安全性の未確立な泊原子力発電所と幌延の「貯蔵工学センター」を設置しない条例の制定を求める直接請求の代表者証明書が交付され、直接請求運動は告示されました。11月10日までの2カ月間にわたる「泊・幌延」直接請求のたたかいです。
 
 
 

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