2015年12月22日火曜日

原発問題連絡会ニュース 第267号2015年12月20日


原発・核燃サイクルから撤退の
             合意形成をすすめよう!
  原発問題全国連絡センターが、

         第29回総会・交流集会 ~ 12月13日・東京都内で


 原発問題住民運動全国連絡センター(伊東達也筆頭代表委員)の第29回総会・交流集会が12月13日東京都内で開催され、道原発連から米谷道保代表委員が参加しました。総会では、伊東達也筆頭代表委員が報告と提案を行い、柳町秀一事務局長が新役員案を提案、いずれも参加者全員の拍手で承認されました。その概要を報告します。

原発事故から4年9カ月―
    目に余る安倍政権の賠償打ち切りと「帰還促進」への暴走

 総会では、代表委員会を代表して伊東達也筆頭代表委員が報告と提案を行いました。伊東氏は最初に、原発事故から4年9カ月の被災地福島の現状について、今なお10万人を超える被災者が避難生活を強いられているほか、震災関連死者が1989人(11月30日現在)、全住民避難し役場も移転した9町村中、2012年4月にいち早く帰還した川内村と広野町は3年経っても住民の4割しかもどらず、今年9月5日に帰還宣言した楢葉町は、一カ月後321人(人口の4%)、3カ月後も5%しか戻っていないし、今後戻る見通しもないと深刻な実態を明かにしました。     
ところが、安倍内閣は、事故後5年(2016年3月)を区切りに、賠償打ち切りと「帰還促進」への暴走を強め、営業損害賠償は2017年2月で、自主避難者の住宅無償期間は2017年3月で、精神的損害賠償は2018年3月で、それぞれ打ち切るなど、加害者である国と東電が被害者に一方的通告を突きつけるのは本末転倒だ、原発事故を終わりにするなど絶対許されないと厳しく批判、福島の原発全10基の廃炉が福島復興の前提であり、福島の復興なしに原発の再稼働はあり得ないと述べました。

「フクシマ切り捨て反対」と「原発再稼動反対」
   「原発事故再発の危険に反対」の2つの共同行動の強化を

 次いで伊東氏は、日本の原子力政策は深刻な行きづまりに直面しており、根本的な見直しが求められているとして、高速増殖炉“もんじゅ”の破たん、六ケ所再処理工場の事実上の破たん、高レベル放射性廃棄物の処理・処分の行きづまりについて詳しく解明し、今こそ「原発・核燃から撤退」「原発ゼロ」の国民的合意形成へ、①「安倍政権の福島県民切り捨てに反対」の共同行動、②「原発再稼働に反対」・フクシマ原発事故の再発の危険に反対」の共同行動をよびかけました。

「NO NUKES DAY~福島から5年、
               チェルノブイリから30年~原発のない未来を!
3・26全国大集会」を5万人以上、
               10万人規模をめざし、圧倒的に成功させよう!

さらに伊東氏は、「原発・核燃から撤退」「原発ゼロ」の合意形成の広がりと深さが、時々の原発情勢を決めるとして、この2年余の「原発ゼロ」実現が、この間の合意形成の到達点だが、まだ再稼動阻止までには到達していないーと述べ、引き続き福島切り捨てを許さない闘いと連帯し、「原発ゼロ」実現をめざし、前記の2つの共同行動を全国規模でも地域規模でも成功させようと呼びかけ、当面、来春の福島から5周年の節目に行なわれる「3・26全国大集会」(東京・代々木公園B地区・ケヤキ並木・サッカー場)を5万人以上、10万人規模をめざし大成功させようと訴えました。
最後に伊東氏は、合意形成をめざす運動成功ために、私たちの主体的力量の強化が不可欠だとして、原発立地道県での情報誌「げんぱつ」読者の三桁以上への拡大と財政強化への協力を訴えました。(詳しくは、「げんぱつ」情報誌12月25日号を参照してください)

来年4月からの
   「電力自由化で何がどう変わるか」
―11月25日、水島能裕さんを講師に
           「電力自由化とは何か」の学習講演会開催ー
 原発連と国民大運動道実行委員会共催で11月25日、「電力自由化とは何か ~電気料金、再生エネはどうなるか~」学習講演会を開催。講師の水島能裕さん(原発ゼロをめざす旭川連絡会代表委員)は、自ら北電で働いていた時の経験も紹介しながら、わかりやすく語りました。

来年4月から家庭用も自由化され
                      北電以外からでも電気を買えることになる

 

「電力自由化とは何か」学習講演会
(2015年11月25日 エルプラザ)
最初に水島さんは、戦前電気は自由に発電し売られていたが、戦後1951年に9電力体制(のちに沖縄電力が加わり10電力体制)になったこと、規制緩和の流れの中で2000年から段階を追って電力自由化が進められ、2005年に50kw以上まで自由化され、中規模の工場やスーパーなどまで規制緩和されてきた。福島原発事故を契機に2016年4月から50キロワット未満の家庭用電気まで自由化されることになったと経過を紹介しました。
ついで水島さんは、一般家庭用などの50キロW未満の市場規模は約7・5兆円と、携帯電話市場に匹敵する大規模なもので、その市場へ10電力以外の新電力会社が続々参入、すでに66社が登録済(北海道では北ガス、いちたかガスワンなど)で、来年4月から電気は全国どこからでも買える時代に入る(実際には9電力会社の送電線間で融通できる電力量が限られていてその範囲内でしか買うことができない限界がある)。
また、発送電を分離する法律は今年6月17日に成立したが、発送電分離の実施は2020年4月からで、それまでの間、契約を新電力に切り替えても、電力そのものは送配電線を所有している電力会社(北電など)から供給され、代わりに新電力は契約したお客さんが使った分の電力を送電線に供出する仕組みとなるだけで、電気料金と電気料金を払う相手が変わるだけと考えればよい。
電力の需給調整を全国規模で行う広域的運用推進機関がすでに立ち上がっており、新電力に切り変えたからといって、停電が起きたり供給が不安定になったりすることはない。猛暑や厳寒期に電力不足となるリスクが高まるわけでもない―と説明。


新電力への切り替えはどうすればよいか ~ 簡単にできます

さらに水島さんは、新電力会社への切り替えの手続きについて、電話やインターネットから手軽に新電力に申し込みができる。ただ、スマートメーター(賢い電力量計との意味で、無線でデーターの双方向のやり取りができる)が設置されていない場合(北電管内はまだほとんどが未設置)、メーターの交換作業が発生し、北電が取り替えに来る。その交換作業の際に15分間程度停電することがあり得るが、屋外に電気メーターがあれば、作業に立ち会う必要はないし、メーターの交換費用はかからないーなどと解説しました。

電力自由化で電気料金は安くなるか?
                     再生可能エネルギーだけを買えるのか?

 水島さんは、札幌市民生協も新電力・トドック電力を立ち上げ、家庭向けに電気の供給を行う予定だとし、そのトドック電力が分析した資料を紹介し、値下げするとしても精々3%程度だと言っていること、価格競争にさらされるから、北電が原発再稼働後値下げなどすれば、新電力の電気料金の方が安くなるかどうかわからなくなる場合もありうると説明しました。
 また、再生可能エネルギーだけを買う契約は可能だが、送電線は大手9電力(北海道は北電)が占有しており、送電線に乗ってしまうと、再生可能エネルギーも原発も、その電気は混じってしまうので、使用する電気が再生可能エネルギーだけとはならない。純粋に再生可能エネルギーだけを買うには、自ら太陽光発電を設置するのが一番確実となると述べました。(再生可能エネ抑制の動きなどは、以下次号)


「電力自由化とは何か」学習講演会に参加して   
                    岩清水暢子(道原発連会員) 

  来年4月1日から、一般家庭でも電気をどこから買うか、という選択ができるようになるそうです。
 この電力自由化で、大勢の消費者が再生可能エネルギーでつくった電気を売る会社を選択すれば、原発でつくった電気を扱う会社はどんどん減り、そのうち「原発ゼロ」の世の中がやってくると、私は気楽に単純に考えていました。
 講師の水島能裕氏のお話を伺うと、そう簡単なものではありませんでした。これまで地域を独占してきた大手電力会社は、新規参入業者を黙って見過ごすでしょうか?原発に固執する政府とともにあの手この手を使って、新規参入事業者を不利な状況に追い込んでいくのでしょう。大口需要の電力自由化は既に行われていて、託送料金(既存の大手電力会社の送配電線借用料)が高いため、新規参入事業者へ切り替えられたのはほんの数パーセントに過ぎず、大手電力会社による独占状態は続いているようです。
 11月30日からパリで、地球温暖化防止のための国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が行われました。地球温暖化防止対策は待ったなしです。でも日本では、石炭火力発電所新設計画が48基あるそうです。安倍政権の電力政策は、原発と石炭火力を「重要なベースロード電源」として推進し、再生可能エネルギーは抑制させる方向に進んでいます。
 世界最悪レベルとなった福島原発事故を経験し、温室効果ガス排出量が世界第5位の日本なのに、こんなエネルギー政策には怒りが湧いてきます。本当に「安倍政治を許さない」です。
 未来社会にあらゆる面で負荷の少ない再生可能エネルギーによって作られた電気を購入したいという、消費者が願う自由化がすすめられていくことを願っています。


本の紹介「いちから聞きたい放射線のほんとう
                       ―いま知っておきたい22の話」
  菊池誠・小峰公子 共著、絵とマンガ おかざき真里、 
                                                               2014年・筑摩書房


 副題であえて「いま」とことわっているのは、この本は福島原発事故から3年経って出版されたのですが、放射線による低線量被ばくの影響をどう受け止め、対処すればいいのか、多くの人の戸惑いが続いていたからだと思います。この戸惑いは今も変わりませんが、そのような人たちがみずから判断するのに少しでも役に立ちたいという著者たちの思いが伝わってきます。文章は二人の著者(物理学者とミュージシャン)が世間話を楽しんでいるような会話体で書かれており、その傍でやりとりを聞いているような雰囲気で読むことができます。
 前半の第一部は「放射線ってなんだろう」で、12の話がでています。まず原子と原子核の仕組みがイラスト入りで詳しく示されています。原子によっては別な原子に変わっていくことがあり、放射線はこのときに出るのだとその様子が説明されています。分かりやすい挿絵が理解を助けてくれます。ベクレルやシーベルトの話もここで出てきます。放射性物質の量や被ばく線量の測り方です。測るときにどのようなことに注目しているのか注意しなければならず、やはりこの分野の説明は難しいなと思いました。
 後半の第二部は「放射線とわたしたち」で、残りの10の話がでています。放射線が人の体にはいりこむと、細胞や遺伝子にどんなことが起きるのか、それががんにどう結びつくのか、が説明されています。同じようなことは天然の放射線やいろいろな発がん物質によっても起きます。そのような中で原発事故による放射線被ばくをどう受け止めるのか、著者たちの考えが述べられています。
 私は何か話をするときに、「中学生でも分かるように」と注文されることがありますが、この本の帯には「これ中学校の教科書にした方がいいよ。」とあります。一読をおすすめします。(科学者会議会員・石崎健二)


北海道原子力防災訓練に関する申入れ

  今年10月21日に実施された北海道原子力防災訓練の現地調査を踏まえ、道知事宛に改善などを申入れます。ご参加下さい。
  ◇日時   12月24日(木)午前11時~正午
          参加者は10時45分までに道庁本館ロビー集合
  ◇会場   道庁別館西棟4階2号会議室

原発問題全道連絡会 第25回総会開催のご案内

 ☆日時   2016年1月23日(土) 午後1時30分~午後4時(予定)
 ☆会場   札幌エルプラザ2階環境研修室
 ☆参加者 加盟団体代表、理事、個人会員ほか