2013年7月25日木曜日

原発問題連絡会ニュース 第238号2013年7月20日

原発問題連絡会ニュース 第238号


原発連が7月8日
北電の泊原発再稼動申請にあたって「緊急声明」を発表
―北電社長、原子力規制委員長、北海道知事、総理大臣、経産大臣宛てに送付―
 
原発連は8日、北電が泊原発1,2,3号機の再稼働申請を行ったことに関して、声明(別紙)を発表し、同日北電社長、原子力規制員会委員長、北海道知事宛てにFAXで送付、さらにこの3者と内閣総理大臣、経済産業大臣、あわせて5氏に声明文を郵送しました。また、原発連は同日、道政記者クラブに声明文を届け、5氏に送付する手配をとったことを伝えました。「道新」は9日の朝刊で、原発連が緊急声明を出したことを報道しました。

【声明】 北電による泊原発の再稼働申請にあたっての声明
2013年7月8日    原発問題全道連絡会
                   (札幌市白石区菊水5条1丁目4―5 道労連内
                          電話:011(815)8181、fax:815‐4545)
   
 今日、北海道電力株式会社(以下 北電)は、泊原発1,2,3号機の早期運転再開を期して、原子力規制委員会(以下 規制委員会)に、今日から施行される規制基準による審査申請を行った。
 しかし、フクシマ原発事故は、2年以上経過した今も、原因究明もできず、事故の収束の見通しも立っていない。15万人を超える福島県民は厳しい避難生活を強いられたままである。このような現状を放置したまま、原発の再稼働や再稼働のための審査請求を行うなどとんでもないことである。
しかも、今日施行される規制基準は、人類がコントロールできない原発の過酷事故が起きうることを想定している。その過酷事故に備える対策でも、地震や大津波に備える防潮堤の設置や免震重要棟の設置、加圧水型軽水原発のフィルター付ベント装置の設置などは、最大5年間の猶予期間を設け、計画さえ立てていれば、運転再開を認めるなどというもので、“再稼働ありき”と言わざるを得ない拙速なものである。これは、国民の安全を二の次三の次にするものであり、無責任きわまりないものである。
泊原発の場合では、建設中の防潮堤は来年度の完成見込みであり、免震重要棟の建設も、フィルター付ベントの設置も2015年度の完成予定となっている。より精密な基準地震動策定のための敷地内や敷地周辺の地下構造の3次元的把握は未実施である。  また、泊原発から30キロ圏内の13町村の防災計画にもとづく7万8千人にのぼる住民の安全な避難の検証も行われていない。フクシマ原発事故では、30キロ圏にとどまらず、200キロを超える地域にもホットスポットが確認されており、北海道の大半の地域が原子力防災対策の対象地域になり得るが、そのような地域の防災計画は無視されたままである。
 ふくしまの原発事故から2年余の体験は、原発と人類は共存できないことを示し、いまも国民の多数は、原発の再稼動に反対であり、原発ゼロを願っている。放射性廃棄物の処分問題、使用済み核燃料を「資源」として再利用する核燃料サイクル計画の破たんが明白となったいま、再生可能エネルギーへの転換こそが未来への責任として急がれている。
 以上を踏まえ、北電の再稼働申請にあたって、以下のことを緊急に要求する。
                記
1、北電は、泊原発1,2,3号機の再稼働審査申請を撤回すること。また、泊原発の再稼働を前提とする電気料金の値上げは撤回すること。
2、規制委員会は、再稼働ありきの拙速な規制基準を見直し、過酷事故が起きない規制基準とすること。
3、北海道知事は、道民の安全に責任を負う立場から、北電に泊原発の審査申請の撤回を求めること。また、規制委員会に、再稼働ありきの拙速な規制基準の根本的見直しを求めること。泊原発から30キロ圏の13町村の原子力防災計画にもとづく広域避難の安全性を至急検証すること。フクシマ原発事故の実際を踏まえ、原子力防災計画を作成すべき市町村の範囲を道内全域に拡大するよう、国に求めること。
4、政府・関係機関は、民意を尊重し、再稼動を認めず、すみやかに原発ゼロの政治決断を行い、再生可能エネルギーの本格的普及に転換すること。                                                     

原発のない北海道の実現を求める
「全道100万人署名」推進
6月26日 原発連などチカホ宣伝・署名行動で910筆
チカホでの100万人署名の取り組み(6月26日)
                             
 原発連と国民大運動北海道実行委員会の共同で6月26日、チェルノブイリデーと位置づけて午前9時45分から午後5時45分まで、8時間のロングラン宣伝署名行動で「原発のない北海道の実現を求める 全道『100万人署名』
行動を、札幌駅前通地下歩行空間(通称・チカホ)で実施しました。



8本の長机をつないで約11メートルの長さの署名場所に、真新しい横断幕やノボリを掲げ、「原発のない北海道を全道『100万人署名』にご協力下さい」と遠くからも目立つように会場を設営し、A3判の宣伝ビラを手渡しながら取り組み、910筆の署名が寄せられました。原発連としての「全道100万人署名」の本格的スタートとなりました(写真)
署名した方々は、「原発はやめるべきだ」「なぜ、やめないのだろう」「政治家はどうしてやめないのか」、「北電は自社の儲けのことは考えるが、道民の安全や食料基地・北海道のことは考えないのか」など、フクシマを体験した道民の原発ゼロへの思いの強さが感じられる行動でした。
 なかには、「原発はやめるべきだと思うが、電気は大丈夫か」
との疑問の声とともに、「フクシマを体験したのになぜ原発やめられないのか、もっとわかりやすく説明してほしい」、「とくにこれからの日本を担う若い人にわかるようにしてほしい」と長い時間椅子に座って真剣に尋ねる方の姿もありました。
この日は、北電の株主総会当日で、総会の取材とともに原発のない北海道の実現を願う道民の声を取材しようと、UHBやHTB、「毎日」などが訪れ、テレビ2社は昼と午後、夕方のニュース番組で放映しました。



                                                     
「東海第2原発の廃炉を求める全国交流集会in茨城」
6月29日(土)ひたちなか市に 16都道県から約250人がつどう  
          石崎健二原発問題全道連絡会事務局次長の報告  

 今年の全国交流集会「東海第二原発の廃炉を求める全国交流集会in茨城」は6月29日ひたちなか市で開かれ、16都道県から約250人が参加した。集会は「全国共通課題を確認することを目的とする」との開会あいさつで始まった。来賓あいさつの後、祝電・メッセージが十二団体から寄せられたと紹介されて、記念講演に移った。

記念講演「ターニングポイントー原発と改憲」
                 村上達也氏(東海村長)が巧みな話術で魅了

記念講演は村上達也氏(東海村村長)の「ターニングポイント―原発と改憲―」である。ターニングポイントというのは戦後歴史の転換点という意味で、サブタイトルで原発と改憲を並べたのは原発推進と改憲はその思想は同じだからとのことである。どちらも民意封殺の国権主義で、目先の利益を手放したがらない、3・11を見たのに転換できないでいる。憲法については、日本人の哲学では現在の憲法は作れなかったのではないか。自民党の「憲法改正草案」を見よ。せっかく良い憲法を持っているのだから日本人はこれをよく勉強してその思想を我がものとしなければならない、と力説した。原発については、映画「ヒロシマ」の上映に関して原発と原爆は違うと批判されたが、その導入の経過や政治的意図からすれば両者は一卵性双生児ではないか、との見解を述べた。たくみな話術で談論風発、最後まで飽きさせなかった。


福島からの報告「3大要求掲げ、実現迫る」   
野木茂雄氏(原発問題福島県民連絡会事務局長)

以上で開会行事を終えて議長団を選出し、最初に「福島からの報告」(野木茂雄・原発問題福島県民連絡会事務局長)を聞いた。原発事故の危機的状況は続いており、県民は放射能による被害と将来不安をかかえて生活している。住む場所、遊ぶ場所、食べる物、作る物、飲み物など、選択しながら悩みながらの毎日である。そんな中でも「県民全体で」を合言葉にたたかいが進んでいる。「県民アンケート」の結果、三大要求として「除染・賠償・廃炉」が明らかになり、国・東電に対して直接交渉をつみ重ねている。仮設住宅の改善、十八歳以下の子供の医療費無料制度などの成果をあげつつあり、県民過半数をめざす署名運動の準備を進めているところである。全国からの支援と激励が元気と希望を与えてくれる、と報告を終えた。



「原発からの撤退」「核燃サイクルからの撤退」の合意形成をめざして

    伊東達也全国センター筆頭代表委員が問題提起  


昼食後、伊東達也・原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員から「問題提起」を受けた。テーマは『「原発からの撤退」「核燃料サイクルからの撤退」の合意形成をめざして』で、A4版7頁からなるレジメが配布された。章立てに従って手短に紹介する。



はじめに ~ 核分裂と核壊変(核崩壊)に伴う核反応熱の除去不能による苛酷事故の発生を軽水炉では本質的に排除できず。
1、当面する原発情勢~福島原発事故は収束せず、復興・復旧・廃炉問題も。事故調査報告書は事故現場での検証なし。新規制基準は「世界で最も厳しい」など新たな「安全神話」のもとで原発の再稼働、輸出をもくろむ。安全規制委員会が「原則四〇年運転」「特例六〇年運転」を法令化しての発足は不条理。
2、活動期に入った大地震に対する備えがない日本~「苛酷事故の未然防止」を最大の課題として取り組んできたが、「安全神話」宣伝に質量とも圧倒され、「日本の原発立地の危険」の認識について国民の多くと共有できず福島原発事故を許す結果になったと痛感。新潟県中越沖地震(二〇〇七年)重大な警鐘、福島第一原発苛酷事故は決定的な警鐘
3、原発の日本立地の六重の危険~①技術上の危険:苛酷事故排除出来ず。②経済上:総括原価方式、リスクをコスト計上せず。③地質上:世界有数の地震国。④地理上:人口過密地域への接近・集中化。⑤行政上:国際基準に則った規制機関の不在。⑥営業上:営利優先の運転。
4、日本の原子力政策の歴史的検証~原子力政策の根本的見直しに直面。原発システムは軍事技術のエネルギー利用であり、核武装の潜在的能力の維持。負の遺産としてプルトニウム、高レベル核廃棄物、使用済み燃料、廃炉。
5、日本の特徴を生かした再生可能エネルギー~電力システムは自律分散解放型へ、その中で再生可能エネルギーに期待。既存エネルギーも効率化と環境対策を徹底して一定の役割を担う。
6、国民の生活と暮らしを守る運動の新たな視点~原発ゼロ、核兵器廃絶、9条改悪阻止はトライアングル運動であるという認識をそれぞれの運動で共有されるべき。さまざまな共同行動から国民的対話・議論が生まれ、さらなる共同行動の展開へ。この循環が国民合意への道を開く。
おわりに ~ 国民の皆さんに冷静かつ分析的議論を呼びかける。





討論では十四人が発言、次いで「合意形成こそが再稼働、原発輸出を抑える社会的規制力となることを確信する」との「東海からのアピール」を採択。最後に次期集会予定地の高野博氏が閉会あいさつで、幅広い人々との対話・合意を進めて新しいエネルギーを作り出せるように運動し持ち寄りたい、と述べて集会を終えた。