2024年3月27日水曜日

 

                            2024327

内閣総理大臣      岸田文雄 様

経済産業大臣      齋藤 健 様

原子力規制委員会委員長 山中伸介 様

                         原発問題全道連絡会 

 

能登半島大地震が志賀原発、柏崎刈羽原発を直撃。地震大国・日本に原発はいりません! 志賀原発、柏崎刈羽原発、泊原発をはじめ国内の全原発の稼働停止、廃炉を決断するよう求めます

  東京電力福島第一原発事故(福島原発事故)から13年目を向かえた2024年11日、午後410分、最大震度7(志賀町)、マグニチュード(M)7,6という2018年9月の胆振東部地震以来の強い揺れと津波を伴う能登半島大地震が発生しました。この地震は、能登半島をはじめ、日本海沿岸の広範な地域に甚大な被害を及ぼしています。政府地震調査委員会は、震源断層は半島の北西部から北東沖まで長さ150㌔程度とし、北陸電力が想定し原子力規制委員会(規制委員会)が審査でも認めている断層96㌔が誤りで、活断層を過小評価していたことが明らかになりました。また国土地理院の衛星データ解析では、能登半島北西部にある石川県輪島市西部が最大約4㍍も隆起するとともに、西へ最大約1㍍移動したと発表しました。気象庁は12日、震度7を観測した志賀町の揺れの最大加速度が2826ガルを記録し、東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵する大きさだったと発表しました。能登半島地震では活断層海域のリスク評価(長期評価)が示されておらず、石川県は被害想定を見直せずに被害を拡大・長期化させました。

この地震で、石川県を中心に多くの家屋や建物が倒壊し、輪島市では断水で消火栓が使えず初期消火が遅れ大規模火災が起きました。また、東日本大震災後初の大津波警報が発表され、短時間 (珠洲市で第一波到達までに1分、七尾市で同2)で能登半島はじめ日本海沿岸の広範な地域に被害をもたらしました。余震も続いており、地震当初には2万件を超える停電や5万戸を超える断水、広範な地域で道路の隆起や陥没、液状化、家屋倒壊や土砂崩れによる寸断・通行止めなどで、孤立状態の地域も多数発生、石川県では災害時の道路啓開道路計画が策定されておらず、被災者の救命・救援に重大な遅れをもたらしました。また輪島市や珠洲市等能登半島北部西海岸部で最大4㍍も海域が隆起し、漁港が使用不能になり海路からの避難や救援ができない事態になりました。原発災害では、放射性物質が周辺に漏れ出した際、福祉施設の高齢者や入院患者、妊婦らすぐに逃げられない人たちを支えることが重要です。にもかかわらず能登半島地震では志賀原発30㌔圏内にあり、事故時に一時避難する21の放射線防護施設のうち6施設に損傷や異常が起きました。また自衛隊についても、地元自治体からの情報に基づき捜索や救難活動を行うことが初動対応の「定石」(じょうせき)ですが、今地震災害発生時は交通網と通信網が寸断されそれは通用しませんでした。

更に重大な事は、この地震が、石川県志賀町に立地する北陸電力志賀原発(1,2 号機の 2 )と新潟県柏崎市と刈羽村に立地する東電の柏崎刈羽原発(2,3,6,7号機の4 )を直撃している事です。これらの原発は、いずれも運転停止中ですが、専門家からは今回動いたエリアの両脇、能登半島西側の志賀町沖、半島東側の新潟・佐渡沖の断層で今後、地震が発生しやすくなっているとの指摘がされています。志賀原発の10㌔圏に限っても陸に福浦断層、沿岸地域に富来(とぎ)川南岸断層、海に兜岩沖断層や碁盤島沖断層があります。

 北陸電力は今回の地震の影響について発表するたびに被害が大きくなり、過去における情報隠しもあり、その信憑性に疑念さえ生じさせています。志賀原発1号機では震度5強の揺れを観測、3㍍の津波(当初は「水位変動なし」)、使用済み核燃料のプールの水が飛散、変圧器が破損し約2万㍑の油漏れ(当初発表の5倍に修正)、外部電源5回線のうち2回線が使用不能、非常用ディーゼル発電機1台が故障など深刻なトラブルが起きています。原発の新規制基準は、地震で地盤変動が起きても、原子炉を冷却するための海水の取水に影響が出ないことを求めています。全国の原発で電力会社が想定する地殻変動による隆起や沈下量は、最大でも2㍍で、稼働中の6原発では1㍍未満にとどまっており規制委員会も妥当と判断していますが、最大4㍍の隆起が確認された能登半島地震を受けてその想定の妥当性、見直しが求められます。液状化や周辺道路に無数の亀裂が生じた同じく被災した柏崎刈羽原発とともに、もし稼働中であれば、福島原発事故の二の舞になった可能性も否定できません。志賀原発建設以前には、国や電力会社による「珠洲(すず)原発」建設計画(1975年計画浮上~2003年計画凍結)があり、候補地の一つだった珠洲市高屋町は、今回の震源となった地区と隣接しています。もしも住民運動による建設断念ではなく、高屋町に建設・稼働していたら、福島第一原発事故と同様の大惨事を引き起こしていたと考えられます。

 今回の地震「半島震災」で、地震と原発事故が同時に起きる原発震災・複合災害では、安全な避難が不可能であることが明らかになりました。原発事故が起きた場合の原子力災害対策指針では、原発から半径5㌔圏の住民は直ちに避難し、5~30㌔圏の住民は屋内に退避し、モニタリングの結果に基づき避難の有無を判断するとなっています。しかし、今回の地震では、原発事故の際に住民避難の判断基準となる放射線量を測定する志賀原発から半径30㌔圏内にあるモニタリングポスト116局のうち、地震による停電や通信障害、道路不通で18局が欠測となりました。また多くの家屋や建物の倒壊で屋内避難はできず、避難ルートに定められた国道や県道計11路線のうち、過半数の7路線で地震に伴う崩落や亀裂による通行止めが起き、30㌔圏内の輪島市と穴水町では、8集落435人が孤立状態になり退避は不可能となりました。これでは国の原発事故の「指針」は機能せず、避難する住民が被ばく線量、避難経路や避難場所、放射線防護策などを知り判断することができず、空間放射線量の実測に基づいた避難の判断は「机上の空論」でしかありません。

原子力防災の仕組み自体が実情に合わないことは明らかであり、「海底活断層と断層活動の連動、地下深部流体と地震・断層運動との関連」、海底活断層の認定に変動地形学的手法を音波探査とは独立に採用すべき(規制委員会規制基準)など、断層と地盤隆起を含め、既存の原発の安全性の基準が妥当かどうかの見直しが必要です。

 国・原子力発電環境整備機構(NUMO)による「科学的特性マップ」では、能登半島の海岸部でさえ、核ごみの地層処分の適地とされており、国・NUMOの「非科学性」が白日の下に晒されました。火山・地震の活動期にある世界最大級の変動帯日本に、大規模な過酷核事故を引き起こす原発の適地も、10万年ものあいだ地層処分する適地もありません。

 能登半島地震では、自然災害が起こるたびに想定外の事態に直面する原発の危うさが改めて浮き彫りになりました。多くの国民、周辺住民を放射能の恐怖と不安に陥れたまま原発再稼働は許されません。福島原発事故を経験して福島県民が選択したように、脱原発・原発廃炉へと進むことが国や関係機関が目指すべき道です。

 以上を踏まえ、貴職に以下のことを申し入れます。 

一、能登半島地震の新たな知見に基づき、日本列島沿岸部周辺の活断層調査に予算と人員を投入してその大きさや年代の推定を行い、それを踏まえてリスク評価を行う必要がある。北海道沿岸をはじめ全国の海底活断層に関し、位置や形状、発生が見込まれる地震の規模などの活断層海域のリスク評価(長期評価)を早急に公表すること。

一、災害時の道路啓開道路計画が被害の拡大を防ぎ、人命救助を左右します。ただちに積丹半島・泊原発での複合災害(地震、津波/積雪、暴風雪、流氷、原発事故)を見据えた地域版道路啓開計画を国・道・関係自治体が一体となって設定すること。

一、自治体の避難計画の前提となる国の原子力規制委員会が策定した原子力災害対策指針は、能登半島地震で機能しないことが証明されました。にもかかわらず規制委員会は大幅に見直す考えはないとする無責任な態度に終始しています。規制委員会は、「原子炉が安全ならそれでいい」ではなく「万が一、事故があっても安全に避難できる」という人命重視の立場から、避難を妨げる自然災害への対応にも責任を持つべきであり、避難計画も審査対象に含め、原発立地地域の安全確保に責任を果たすこと。

一、原発事故での放射線防護施設について北海道電力泊原発でも、泊村役場など周辺の公共施設や学校、福祉施設などが防護施設に指定されています。地震や津波、積雪や暴風雪、流氷などの災害と原発事故が重なる複合災害・半島災害でも機能を維持できるよう、国による支援策を具体化し、耐震性、暖房等の冬季対応などの再点検、強化を行なうこと。

一、地震・火山大国、世界最大級の変動帯の日本に、原発と高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の地層処分の適地はありません。志賀原発、柏崎刈羽原発の廃炉を決断するとともに、泊原発をはじめ国内の全原発の稼働停止、廃炉を行なうこと。北海道寿都町と神恵内村での核ゴミ文献調査を撤回すること。

一、安全面での懸念・不安・脅威に加えて経済的優位性もない原発に固執することは、環境や国民の命と暮らしを脅かします。脱炭素は原発回帰ではなく、省エネと再生可能エネルギーの拡大で進めること。                                           以上