2024年3月27日水曜日

北海道鈴木知事への泊原発再稼働。核ゴミ調査に反対を求める申し入れ

 

2024327

北海道知事

鈴木直道 様

原発問題全道連絡会

 

能登半島地震をふまえ、泊原発の再稼働を認めず廃炉を求めることと、「核のごみ」最終処分場の概要調査に反対することを求める申し入れ

 

【申し入れの趣旨】

1.泊原発の再稼働を認めず、廃炉を求める申し入れの趣旨

本年元日に発生した能登半島地震(最大震度7、M7.6)により、240名以上が亡くなり、7万5000棟を超える住宅が被災、発災から2か月後も1万人を超える避難者が残されています。半島沿岸部では最大4mに達する地震性隆起が発生、海域が陸化するなど重大な被害が生じています。この地震は北陸電力の志賀原発を直撃し、外部電源の変圧器の一部損壊、約2万Lの油の流出、使用済み核燃料プールの冷却水漏出などが相次ぎ、3mもの取水槽の水位変動も発生。同じく被災した柏崎刈羽原発とともに、もし稼働中であれば取り返しのつかない大惨事になりかねませんでした。

泊原発の立地する積丹半島についても、学識者によって能登半島と同様の地震性隆起により成立したとの見解があり、西方沖の活断層が黒松内低地断層と連動して動く危険性や、能登半島地震の原因とされる流体の存在が指摘されるなど、能登半島と近似した条件が揃っています。いつ大地震が起こってもおかしくありません。しかし泊原発の基準地震動は693ガルと、近年の地震の最大加速度(能登半島地震2826ガル、胆振東部地震1796ガル)に到底及びません。地盤の隆起や液状化、津波に対する対策も不十分です。安全対策の不備を理由に運転差し止めを命じた2022年の札幌地裁判決を重く受け止めるべきです。

また原発の避難計画は、PAZ(50キロ圏)、UPZ(30キロ圏)内の住民は自家用車やバスでの避難や窓を閉めるなどした屋内退避をするとしていますが、能登半島地震では避難ルートは多くが土砂崩れや陥没、液状化により寸断され、集落が孤立化、避難も救援も困難になりました。原発事故時に屋内退避すべき家屋は多数が倒壊、そもそもモニタリングポストが18も故障し、避難の判断さえできない事態に陥るなど、避難計画が机上の空論だったことは明白です。

泊原発に関する道の避難計画も、志賀原発と同様に国の原子力災害対策指針をなぞったものでしかありません。能登半島地震と同規模の地震が起きれば避難どころかバスそのものが被災地に近づけず、過酷事故の際には被災者はただ被曝するのを待つしかありません。実効性のある避難計画の策定そのものが物理的に不可能であることを認めるべきです。

そもそも原発の発電コストが太陽光などよりも高いことは経産省も認めており、泊原発は停止した2012年以降1Wも発電しないなか、22年度までに維持費だけで7296億円が投入され、すべて道民の電気料金に加算されるなど、もはや経済面でも成り立ちません。そのうえいったん泊原発が過酷事故を起こせば、道民のいのちと健康が損なわれるだけでなく、北海道の大地は取り返しのつかない汚染に見舞われ、農漁業や観光業など北海道経済はもとより道民生活そのものが壊滅的打撃を被ることは明らかです。泊原発の再稼働を認めず、廃炉を求めることこそ、政治の責任です。

2.「核のごみ」最終処分場の建設地選定の概要調査に反対を求める申し入れの趣旨

寿都町、神恵内村で文献調査が進められた「核のごみ」最終処分場の建設地選定についても、安全性に重大な疑義があります。上述の活断層や流体の分布といった指摘に加え、豊浜トンネル事故で大規模な崩落を起こした脆弱な地盤である水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)が、調査地域一帯に広がっていることも知られています。豊富な地下水が浸出する恐れもあり、最終処分場が建設できる条件はありません。処分される「核のごみ」であるガラス固化体は、20秒浴びただけで致死量に至る放射線を放ち、その毒性半減期は10万年とされています。そのうえ、放射性物質の漏出リスクがきわめて高いとの指摘もあるTRUという低レベル放射性廃棄物も同時に処分されます。かりに処分場が建設されて付近一帯が地震等で被災した場合、埋設物が地上に漏れ出すなどして、原発事故同様に北海道の破滅に至りかねません。

ところが、2月公表の文献調査報告書原案は、地震や断層、火山のリスクを過小評価するなど科学的と言えない分析に立ち、寿都町では「避ける場所の基準に該当する場所は確認されなかった」と全域を概要調査の候補としました。経産省の「科学的特性マップ」が「好ましくない特性があると推定される地域」とするエリアさえ候補に加え、能登半島地震で露呈した危険性に一言も触れないなど、あまりに不誠実な内容です。

昨年10月には27人の地球科学の研究者が連名で「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない―現在の地層処分計画を中止し、開かれた検討機関の設置を―」との声明を発表し、そもそも日本列島での地層処分は不可能であると指摘、地上での暫定保管などを柱とした2012年の日本学術会議「回答」をふまえた対応を求めています。こうした科学的見地にこそもとづき、政府に対して「地層処分ありき」の政策の見直しを求めることこそ、知事に求められていると考えます。

そもそも最終処分場の建設地選定については、文献調査で20億円、概要調査で70億円もの交付金を設けて、「札束で頬を叩く」ように財政難の自治体に調査を迫る政府の手法そのものが問題です。公正で科学的な合意形成へのプロセスが歪められ、調査とカネをめぐり地域共同体の分断が深刻化しています。そもそも北海道では2000年に「核のごみ」を受け入れ難いとする「核抜き条例」が道民の総意で制定され、寿都・神恵内の周辺自治体をはじめ道内各地の自治体で「核のごみ」持ち込みを拒否する条例や同趣旨の議会決議、意見書採択が相次いでいます。2020年の全道世論調査(北海道新聞)では道民の66%が調査に「反対」とするなど、民主主義の観点からも、調査中止こそが道民の総意にもとづく判断です。

以上を踏まえ、道民の生命、身体及び財産の保護する広域自治体の首長としての使命を果たすために、貴職に以下のことを申し入れます。

                  記

1.北海道電力に対して、泊原発の再稼働を認めず、廃炉を求めてください。

2.「核のごみ」最終処分場の建設地選定の概要調査には、反対をしてください。

                                           以上

                      連絡先:東区北9条東1丁目 道労連内

                             原発問題全道連絡会

                       電話:011-777-1060

                       e-mailgenpaturen@gmail,com