原発連ニュース第241号(10月20日)に、道と北電への申入れ項目と道と北電の1回目の回答を掲載しました。ここには、質疑応答部分を紹介します。
大田勤:北電の姿勢を道はどのようにとらえているか、聞きたい。北電が地域の家庭に配布しているパンフでは、今の安全対策の工事で事故は絶対防げると書いている。ところが、規制基準では、事故はあり得るとしている。北電は、事故は防げるというパンフを配布している。どうとらえているか。
もう一点、安全基準について聞きたい。8月27日の湧水事故では、防水対策として水密性対策がやられていない。福島の事故をどうとらえているのか。
10月8日の防災避難訓練について、道新はスムーズに行われたと報道。しかし、泊村では避難住民が集まる場所―堀株集会場、渋井集会場などは、いずれも海抜10m程度であり、そういうところに避難者を集めている。津波対策が全く抜けているのでないか。
道の新エネ・省エネ条例では、原発を過渡的エネルギーと位置づけており、脱原発を知事も言っている。すぐにシフトするのが大事でないか。どのくらいのスパンで考えているのか。
菅野一洋:福島の事故を踏まえてのリスクの問題。同じ基準と体制で動かされてきた日本の原発は同じリスクにさらされてきたと受け止めるべきだ。日本の原発リスクの基準―原子力安全委員会の決定文書―1992年5月28日―で、「SAは工学的には現実には起こると考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっており、原子炉施設のリスクは十分低くなっていると判断される」とされている。「したがって、‥原子力安全委員会は、原子炉設置者において効果的なアクシデントマネジメントを自主的に整備し、万一の場合にこれを的確に実施できるようにすることは強く推奨されるべきことと考える」としてシビアアクシデントを法規制の対象から外してきた。したがって、フクシマのリスクは泊原発でも起こり得る―この認識に立っていないのでないか。
我々は原発ゼロを求めている。代替エネルギーにどういうものが考えられるか。
フクシマ第一原発から60キロを超える福島市、郡山市にも放射能が及んだ。手稲山は泊原発から真東に60km。UPZに札幌市は含まれていない。札幌市もUPZに加えるべきだ。
道・竹沢主幹
北電のパンフに「絶対防げる」と書かれているというが、事故は起こり得る立場に立った安全対策や防災対策を取るべきと考えている。北電がどういう態度をとるか、同じ認識に立ってもらわないとならない。
湧水事故は、情報を聞いてすぐ対処すべきとして対応した。内部溢水も規制基準に盛り込まれており(規制委員会が)適正に審査してほしい。
防災訓練については、様々な事象を想定してやっている。今回は内陸部の大地震で複合災害が発生し、津波が発生した想定だが、今回は車での移動を重点にしており津波対応は入れていない。今後は、日本海側のハザードマップを見直して訓練していく必要がある。フクシマ後3回訓練をやった。今後の訓練に役立てていきたい。
手稲山まで60キロの件だが、札幌市は原子力安全対策課を設けて対策を検討している。UPZは30キロ圏内の市町村が災害対策指針で重点的に対策を取ることになっている。福島並みの事故では、15.4㎞とされている。IAEAの基準で30キロ圏としている。PPA(プルーム)はまだ示されていない。
SA対策は、規制基準の中に盛り込まれていなければならない。
省エネ・新エネ条例についての知事の認識は、原発を過渡的エネルギーと認識し、新エネの利用拡大を推進する考え。スパンはどうかということだが、FIT(固定価格買取制度)で急速に増えている。(次頁へ続く)太陽光や風力は、安定電源にはまだ課題があると認識している。
送電実証事業は、十年位かかる。苫東の蓄電池事業は5~6年、地熱発電は10~10数年かかる。短期的には難しいが、取り組んでいく。何年のスパンとはしていないが、長期的にすすめていく。
規制基準は、新知見で安全性を高めていく。安全レベルを高めていくことが大事。
津波想定は、規制委で基準が厳しくなっている。それで審査しているところ。
道・宇野主幹:
避難は、絵に描いた餅にならないようにすることが大事。燃料ピットに核のごみがあるしー。
要支援者の防災訓練への参加については、事前に関係者からの要請があり、30キロ圏内の方は参加して下さいと回答し、バスも用意したが来なかった。要援護者の訓練は大事だと認識している。要援護者をサポートする人の訓練による検証も必要で、そういう方法も含めて、できるだけ多くの人が参加できるようにしており、肢体不自由者などの参加も実効性あるものにしたい。
防災訓練は、道は枠組みを示し、具体化の内容については、関係市町村に考えてもらっている。
避難道路では、国道229号線が使えないことも想定し、積丹町は船での避難に毎回トライしている。大地震の余震で孤立化した集落の避難を計画したが、波が高くて船の避難は断念し、屋内退避とした。
自衛隊の装甲車などの装置を使うことにはいろいろな意見がある。要介護、健常者、防災関係者とも協議して訓練を積み重ねる以外にないと考えている。
畠山:再稼働は規制委で厳正に審査しているというが、知事は「議論できる環境にない」と言っている。今回はどうしたか。汚染水対策については、規制基準に入っていない。重要性を認識しているのか。地下水対策とセットで検討すべきでないか。冷却すれば汚染水対策は、課題になっていないのではないか。地下水対策の調査をやるよう提案したい。
道・竹沢主幹
安全審査中であり、再稼働は議論できる段階にないというのは、その通り。汚染水対策は、シビアアクシデント対策に盛り込まれていない。原子炉に閉じ込める ― まずここを守っていく。地下水の調査は考えていない。
道労連・黒沢議長
12月再稼働はあると見ているのか、スケジュール的に検討しているのかどうか、聞きたい。
フクシマに行かれたのか。フクシマを見て対策を取っているのか、計画されているのか。
道民署名は、知事にどう届けたのか、知事の反応はどうだったのか、聞きたい。
道・竹沢主幹
審査は全体のまだ3分の1。半年~1年かかる発言もあったが、まだまだ時間がかかるのかなと思う。
フクシマには2年前に調査団を組んで行った。防災計画で避難先にホテルや旅館を使うことにしたのは、避難が長期化するということを行って学んでとった措置だ。UPZ圏内13町村の住民8万6千人分のホテル、旅館300軒に避難者を収容することにした。
道・氏名不詳
署名用紙は、知事に内容を説明している。金曜日行動も重々承知している。
菅野一洋:避難者のリアルな様子が「読売」の8月11日付の写真にあるが、いまだに高校の屋内運動場にダンボールで囲って暮らしている人たちもいる(埼玉県加須市)。
(以上道への申入れ)
大田勤:北電発行の「あなたの電気」では、新しい規制基準に適切に対応することで、事故は防げると書いている。本当に、新基準で福島のような事故は防げるのか。
水蜜性の扉の問題について、8月27日の雨水と津波対策は別々に考えているのか。今回雨水が最下層サンプに集って排水可能な設計になっている。なぜ浄水ピットが溢れて制御用地震計室に流入したのか、シリコンゴムを入れて水蜜性を高めると言われるが、電線管はどういう対策になっているのか、170トンの水で地震計が動かなくなったがどうなっているのか。
もう一つ、汚染水対策に関連してだが、泊原発では地下水として20トンの水が流れているというが、これは1日20トンなのか、毎時なのか。地下水対策はしていないというが、しなくても大丈夫なのか。
北電・三上博光課長:新基準で安全対策を講じても事故をゼロにはできないことをフクシマが教えてくれた。新基準をクリアしなければ許可されない。津波対策は、防潮堤16.5㍍になるので防げる。16.5メートル超える津波は来ないから。従来最大津波を9.8㍍としていたが、今回7.3㍍にしている。
今回の雨水溢水対策は、直接津波対策とは関係ない。雨水は、短期的記録的豪雨により、普段はやらない工事だが、土を入れ替える工事をやった。ちゃんとできなかったのかと言われたら言い返す言葉がない。地下サンプになぜ落下しないのかという問題だが、水がこぼれたときフロアーの目皿(マンホールのふたのようなもの)のところまで流れていかずウエスで拭いたためサンプに落ちなかった。
外部溢水は、扉で防いで中の機器を防ぐが、内部溢水対策は、今回規制基準で求められている。安全機能を持たせるために、どの扉でブロックするか承知していないが、規制基準で求められている。20トンという数字は何の数字なのか今は説明できない。
菅野:昨年2月、北電は風力発電の募集を行い、メガソーラーの接続希望とあわせ、277万kwという泊原発3基分を超える応募があった。原子力エネルギーは人の手に負えないことがはっきりしているにもかかわらず、原発3基分を超える申し込みがあったのに、再稼働を申請した。これに矛盾を感じないのか。
再稼働すれば、使用済み燃料がさらに増える。保管能力を超える負の遺産を解決できる見通しをもたないまま、再稼働の道を選択するのか。倫理的に認められない。前回のやりとりを今回まで持ち越している。認識の発展はないのか。
フクシマの現状について、原水禁大会で福島の現状が報告されているが、避難場所ではケータイ電話を取ったら、隣の家にかかってきた電話だったという。プライバシーもない避難生活を強いられている。原発作業員には、健康診断が義務づけられているが、福島第一原発では4300人分が未提出。ここにも電力会社の倫理が問われている。
大田勤: 溢水対策というが、地震計のある部屋の側は管理区域、地震計のある場所は非管理区域、地震計は安全上重要機器ではないのか。
北電・三上課長 地震計は重要機器にあたる。非管理区域に置いてある、普通の作業服で行けるところに置いてある。
倫理という点から難しい質問があった。倫理の定義、国柄でも異なる。世界で41か国で原発を運転しているが、これから運転する国もある。
電力の安定供給については、原子力を平和に限って利用する、規制基準を満たしたものは利用する。国策と法にのっとって安全操業を果たしたい。
菅野: 8月11日付「道新」に札幌の主婦が、北電役員報酬についての投書。北電は、自然エネも選択肢に入れてベストミックスを考えているというが、役員報酬2000万円の報酬にびっくりした。社長は、今の水準はそんなに高くないよと言ったという。役員報酬に疑問がある。北電の役員報酬はいくらか。有価証券報告書に役員報酬が出ている。
“もんじゅ”は半身不随で動かないのに毎年200億円かかっている。これまで国は1兆円つぎ込んでいる。動いていなくても保守が必要であり必要な額になるのだという。現実を無視した延命策だと思わないのか。
森つねと: 倫理の問題は難しくないと思う。被災者の現状に心が痛まないのか。北電の泊原発は絶対に安全だと言えるのか。絶対ということはないと言われてもフクシマ以前は怒らないできたが、今は絶対と言えないなら、どうしてやめると言えないのか。
フクシマの原因について、津波の影響だというが、国会事故調報告は、地震の影響もあると言っている。現場に入れないから本当のところはわからない。
雨水の流入事故については、現場に行ってきたが、稼働しているときには、こんな工事はしないというが、そういう想定をしないで工事をやっていたのではないか。
再稼働しないことを真剣に考えてほしい。
北電・三上課長: 国会事故調の報告は昨年7月だが、4つの事故調報告が出そろった。国会事故調は、地震で壊れた可能性を言っている、,NHK特集で、国会・黒川、政府・畑中、民間・北澤の3人の番組で、黒川氏は地震で壊れたかは宿題だと言った。地震、津波でこわれたというと地震・津波国の日本で立地できないことになる。「岩波」の「科学」でも同じ主張をしている。原子力規制委員会、雑誌「世界」、国会事故調でいくつか指摘されている。津波前にコンデンサーが壊れていたなどなど…。
8月30日に原子炉建屋で水がどっと出た。最近10月7日、(政府の?)検討会第4回会合でのやり取りなどでもいろいろされている・・・。3号機でも爆発が起きたのではないか、いやそうは考えられない、などなど。国会事故検討会(?)の中で今再検証されている。放射能の高いところであり、中に入って確かめられない状況で、確かめられないとわからないことがある。
畠山:今年から送電網整備の実証事業が行われる。応募者の出資額、企業債の額など明らかにしてほしい。
黒沢議長:12月再稼働をあきらめていないということか。再稼働の見通しをどう受けとめているのか。
北電・三上課長: 審査中であり事業者が予断めいたことを言える状況にはない。
規制委の資料がHPに出ている。いつ終わるのかは言えない。
森: 3号機の地震計は8個のうち4個が修理中ということか。
北電・三上課長
点検修理中だ。
以上
(原発連事務局FAX通信 10月25日発行より)