2013年4月28日日曜日

幌延センター廃止に関する道知事への申し入れ


北海道知事                    
高橋はるみ様
                   2013年4月26日
                        原発問題全道連絡会
                           代表委員  大田  勤
                             “    菅野 一洋
                                       “   畠山 和也

日本原子力研究開発機構の

幌延深地層研究センターに関する申入れ


 日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センター(以下 幌延研究センター)は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(2000年5月成立)にもとづき、2000年から20年計画で、使用済み核燃料を再処理して排出される高レベル放射性廃棄物の深地層処分に関する研究を行っています。
しかし、幌延研究センターは、発足当初から、地質や地震の専門家などから、地質学的にも地震学的にも最終処分地としても研究地としても不適地だとの強い批判があり、2012年9月には日本学術会議が国の地層処分の政策を白紙から見直すべきなどとする回答(提言)を原子力委員会に提出しています。
また、政府は、昨年9月、幌延研究センター事業の進捗状況について、紙智子参院議員の質問主意書に対する答弁書で、2000年度から2012年度までの地下施設建設の進捗状況は約40%だが、建設費の予算総額は、当初試算額の89%に達していること、それは幌延の地質環境に起因する湧水抑制対策や工事排水処理設備等に要した費用が、当初の試算時の見込みを上回ったためであるとしています。
こうしたなかで、今年2月に、幌延研究センターの地下350メートルの地下坑道で、地下水湧出量の急増とメタンガス濃度の上昇で、現場から作業員全員を緊急避難させる事故が起き、処分場としても研究地としても不適地であることを裏付ける事態となりました。
また、政府は2013年度予算案のなかで、使用済み核燃料を再処理せず、直接地中に埋める直接処分のための研究開発予算を、文科省と経産省にそれぞれ約3億円づつ計上し、今年度から研究を開始するとし、文科省は「その研究を幌延研究センターで行うこともあり得る」と述べたとの報道もあります。
以上のような諸点を踏まえ、以下のことを要請します。


1、幌延研究センターは最終処分場としても研究地としても不適地であり、早急に国に廃止を求めること。

(1)幌延町は、地質学的には新第3紀(2300万年~260万年前)及び第4紀(260万年前~現代)からなる新しい地層で、泥岩を主体とした堆積岩で、断層・割れ目も多く、割れ目伝いに地下水の浸透があり、一般的には放射性廃棄物の最終処分場としては不適地だと厳しく批判されてきたが、今年2月の幌延研究センターでの地下湧水急増、メタンガス濃度上昇、作業員緊急避難事故によって、改めて不適地であることが明確になったと考えます。ところが、幌延研究センターは、これからの地下坑道掘削予定地域の3カ所で地下水脈にぶつかり、今回と同様な事態に遭遇する可能性があるとしています。 
同じ堆積岩を地層処分の対象に検討しているスイスのモン・テリ地下岩盤研究所の地質時代はジュラ紀(2億年前~1億4500万年前)であり、幌延の堆積岩と比べはるかに古くかつ硬い岩石で、水が移動しがたく、割れ目も少なく、卓越した不透水性の条件にあることで地下実験プロジェクトが実施された理由とされています。その他の国でも、幌延のような地質環境のところを地層処分の対象にしている例はありません。こうした事例からみても、割れ目の少ない不透水性の地層で、周囲からの地下水の流入が少ない土地を選定すべきであり、幌延は当然不適地と考えるべきです。
また、幌延研究センターの地下施設建設費は、既述の通り地下水対策などに手間取り、当初試算時見込みを大幅に上回っており、予算的にも大幅な無駄遣いと言わなければならない事態となっています。この点からも、幌延研究センターは、早急に国に廃止を求めるべきです。
(2)文科省地震調査研究推進本部は2005年、「主要活断層」の12カ所の追加指定に際し、サロベツ断層帯を加え、2007年の評価で「この断層帯は長さからみてマグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性があり、断層帯近傍の地表面では、3~4メートル程度の隆起が生じる可能性がある。今後30年間に地震が発生する可能性が、わが国の主な断層帯の中では高いグループに属する」としています。現に一昨年来、宗谷・天北地方でM4前後の地震が頻発し、住民の不安が高まっています。
 昨年9月、日本学術会議は、原子力委員会の依頼を受けて2年半余にわたって検討して提出した回答(提言)で、「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」とし、「(地層処分という)従来の政策の枠組みをいったん白紙に戻すぐらいの覚悟をもって見直しをすることが必要」だと提言しています。幌延を含む道北日本海側は、プレート境界上にあり地殻変動が激しい地域とされています。仮に高レベル放射性廃棄物を深さ350mに埋設したとしても、1万年~10万年の時間単位で見ると、その位置が10~100m上下に変位する可能性が高い場所との指摘もあります。具体的に幌延センターの研究サイト(立坑)は大曲~豊富断層という北海道北部での第一級の断層に隣接している場所にあります。こうした地殻変動帯は、最終処分場にも研究地にも不適地であると考えるべきです。

2、幌延研究センターを使用済み核燃料の直接処分の研究地としないよう国に求めること。

 国は2013年度から、原発の使用済み核燃料を再処理せず、直接地中に埋める直接処分の研究を開始するとして、文科省、経産省が2013年度予算案にいずれも約3億円づつ、合計約6億円の関連経費を計上し、今後5年程度の期間で使用済み核燃料を長期間保管する直接処分に関する基礎技術を開発するとされています。
 文科省はこの研究開発を、「幌延深地層研究センターで行うこともありうる」(2013年2月3日「道新」)と述べたと報道されています。
 しかし、幌延研究センターは、地層処分法に基づき、高レベル放射性廃棄物の深地層処分に関する研究を行うとされており、直接処分に関する研究を行うとはされていません。また、道の「幌延町における深地層研究所(仮称)計画に対する基本的な考え方について」(2000年6月)の中でも、直接処分の研究を行うことは予定されていません。
こうした経過を踏まえ、「高レベル放射性廃棄物処理施設誘致反対豊富町民の会」と「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」は今年2月22日、貴職宛てに「幌延深地層研究センターでの『使用済み核燃料の直接処分研究』に関する申入れ」を行い、「使用済み核燃料の直接処分の研究開発について、文科省や経産省から依頼があっても、また共同研究に形を変えた事業であっても、断固受け入れず拒否するよう強く申入れ」、文書での回答を求めています。
 北海道と幌延を核のごみ捨て場にしない立場から、また地元住民の合意のないまま、使用済み核燃料の直接処分に関する研究を受け入れないよう求めるものです

3、道民合意なしに北海道と幌延を核のごみ捨て場にしないよう国に求めること。

 最近一般紙などで、国が今夏の参院選後にも高レベル放射性廃棄物の最終処分地の候補地選定を本格化させるとの報道が相次いでいます。例えば、北海道新聞(4月16日)は、今年3月道新のインタビューに、資源エネ庁の放射性廃棄物等対策室長が「道の条例は廃棄物を持ち込まないという条例であって、文献調査まで禁止する条例ではないと解釈できる。国の申入れの対象から、同条例があるという理由をもって外すことにはならない」と答え、最終処分の事業主体となるNUMO(原子力発電環境整備機構)の理事長は「道に条例があることは承知しているが、候補地の選定では北海道も対象外ではない」と答えたことなどから、“「核抜き」道条例の骨抜きあらわ”などとの見出しを立てて報道しています。
 しかし、北海道は、「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」(2000年10月制定)で、「特定放射性廃棄物の持ち込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたいことを宣言する」としています。この条例を、骨抜きにするかのような発言は許されないものです。また、幌延町と道と原子力機構は、幌延研究センターに放射性物質を持ち込まないとの3者協定を結んでおり、3者は繰り返し協定順守を表明しています。こうしたことからも、北海道と幌延を核のごみ捨て場の候補地の対象にするということ自体あってはならないことと考えます。
国もNUMOも道も、核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会が4月12日、文献調査を拒否するよう道知事に申入れたとことも重く受け止めるべきです。北海道知事は、あらためて国やNUMOに北海道と幌延を核のごみ捨て場にしないよう強く求めるべきです。

                                                                                           以上