2012年11月21日水曜日

原発問題連絡会ニュース第230号 2012年11月21日

原発問題連絡会ニュース 第230号  



地層処分をやめ管理しつつ安全な処分技術の研究を
    原発連主催の核廃棄物の処分問題学習講演会に96人―10月24日
 フクシマ原発事故後、溜まりつづける核のゴミ=使用済み核燃料の処理・処分問題が、あらためて国民の大きな関心事になっています。この問題で原発問題全道連絡会は10月24日、核廃棄物の処分問題学習講演会を開催、鈴木剛氏(日本共産党中央委 原発・エネルギー対策委員)が基調講演、清野政明氏(日本科学者会議会員)と鷲見悟氏(核廃棄物の誘致に反対する道北連絡協議会代表委員、幌延町議)が北海道からの報告を行い、96人が参加し最後まで熱心に視聴しました。

安全に処分できる技術が未確立 ー 見えるところで管理しつつ研究を ~ 鈴木剛氏 


 「使用済み核燃料の処理・処分問題を考える」と題した基調講演で鈴木剛氏は、使用済み核燃料は放射能が非常に強い高レベル放射性廃棄物で、半減期が数十年から数十万年、何百万年に及ぶものまで含まれ、その処分は何万年単位で考えなければならないし、それは原発建設当初からわかっていたことだった、だから人間の手の届かない宇宙に捨てる案や日本海溝深くに捨てる案などが提起されたが、どちらも危険だと否定され、結局、国は地下300m以深の地中深くに処分する方針を決め、2000年に「地層処分法」を制定、2002年から処分場の公募を始めたーしかし、いまだに処分場誘致に手をあげるところがなく行き詰まっていると報告。
また、鈴木氏は、9月に紙智子参院議員が、近年の地震学の進展を踏まえて政府に提出した2つの質問主意書を紹介し、地層処分の見直しを求めたのには、安全な場所を確保して進めるとゼロ回答だったが、幌延の地層処分研究の中止については、地下水対策が難航し、予算が計画より余計にかかっており、最終総額も不明だと回答―こういう場所での研究自体が無意味だと指摘しました。
さらに鈴木氏は、日本学術会議が原子力委員会の依頼に応じてこの2年間地層処分について検討し、9月5日に、政府がこれまで進めてきた地層処分について「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻す」ことを提言したことは重要なことだと指摘しました。
最後に鈴木氏は、原発が稼働すれば処理・処分できない核のゴミが増え続ける、危険な負の遺産を将来世代に押し付けることは許されないから、まず即時原発ゼロを実現することが必要、同時に、人間が見えるところで厳格に管理しつつ、安全な処理・処分技術の研究を進めていくことだと提起しました。


 
幌延付近はM7・6程度の大地震が10万年間に12~25回起きる  
地層処分場として明らかに不適地 ~ 清野政明氏  



 清野政明氏は、「北海道の地震活動と幌延」と題して報告。同氏は、北海道の内陸地震活動は、予知が難しいとし、文科省が2009年に公表(2010年に更新)した「全国の確率論的地震動予測地図」を示し、北海道には確率ゼロはどこにもなく、どこでも地震が起きうると説明。また、M7・4以上の大地震は活断層で発生しているが、M6・8~7・3の地震は、活断層のないところでも発生しているし、M6・7以下の地震はほとんど活断層がないか、活断層だと認識していなかったところでも発生しており、日本の内陸ではM7・3以下の地震は、活断層がないところでも起こりうると強調しました。
 ついで清野氏は、サロベツ断層帯では、M7・6程度の大地震が4千年~8千年の間隔で発生すると予測されるので、核燃機構(現原研機構)は「安定な状態で10万年間」というが、この大地震が幌延付近では10万年間に12~25回発生すると予測されるし、道北地域には地震活動の線状構造や帯状構造がよく見える、これは地殻変動が進行中であるあかしであり、幌延の深地層研究センターは、地盤が軟弱な地域で地下水の流動性を変化させる効果や噴砂現象・不動沈下等も予想されるので「地層処分場として明らかに不適地だ」と指摘しました。



誘致派は10年経ったら処分場誘致運動に移行すると主張――
いまも変わっていない ~ 鷲見悟氏


 鷲見悟町議は、「最終処分場誘致の動きと現地でのたたかい」と題し、深地層研究センター事業予算の実態にも触れて報告。最初に鷲見氏は、昨年の6月町議会で、国から文献調査の申し入れがあると東奥日報(青森県の地方紙)が3月と5月に連載したことを取り上げ、「文献調査の申入れがあるようだが、どう考えているか」と質問、町長が「これからの検討課題だ」と答弁、これを毎日新聞が書いて町内は騒然となり、マスコミの取材に町長は「3者協定を守る」と表向き文献調査に応じることを否定した。しかし、誘致派の考えは12年前のスタート時から、20年計画の半分=10年経ったら処分場誘致運動に移行すると言っていたし、現に町長は「地上施設は農業施設に使いたい。これは原研機構も認めてくれる」と語っている。また、2010年11月に原研機構の地層処分研究開発検討委員会の委員が幌延に来て「地下施設はジオパークとして存続させ、地上のPR施設は民間団体に移管する」と話すなど、埋め戻すことも閉鎖することも考えていないと強調しました。


「幌延を最終処分場に」―の意図が見える2本立て予算

さらに鷲見氏は、深地層研究センターの事業費について、幌延と東海と瑞浪の3カ所で20年間で合計1600億円の事業計画だが、このうち幌延が1040億円で3分の2を占め、瑞浪は地層研究だけで地層処分の研究はしないとの協定を結んでおり、幌延だけが地層処分研究の対象になっていると語り、文科省の幌延の研究費は毎年35億円の計画だが、一番多かった2007年度でも6億8千万円程度で35億円にほど遠いが、文科省予算のほかに経産省資源エネ庁から「地層処分技術調査等委託費」が毎年約34億円研究費として来ており、結局総事業費は文科省予算、



深地層研究センター事業は町民の暮らしや酪農振興に役立っていない


 最後に鷲見氏は、「幌延町に電源3法交付金が毎年1億5千万円来ており、立派な施設はいっぱいできているが有効に使えないものもある。一部の施設は地層処分反対派には貸さないというものもある。一方、2600人の町民の所得は、180万円以下が2割、400万円以下が6割を占め、町民が豊かになっているわけではない。酪農の町なのに農業振興予算は、年間4億円のみで、しかも町単独予算はほとんどない。幌延深地層研究センター事業が、町民の暮らしや酪農の振興に役立っていないと、ゆがんだ町政の実態を厳しく批判しました。
 参加者の一人Sさん(札幌市内北区屯田は「3人の報告はどれも具体的で大変有意義でした。核廃棄物の処理は、これから一番重要なポイントだと思います」との感想文を寄せています。



今冬の電力の安定供給等に関し北電に申入れ
  ― 11月1日、道原発連が道労連と連名で ―
 原発連は11月1日、道労連と連名で北電本社に「道内の今冬の電力の安定供給等に関する申入れ」を行いました(写真)。原発連から、畠山和也、菅野一洋両代表委員、米谷道保事務局長ら5人、道労連から黒沢幸一議長、村井秀一氏、新婦人道本部から鈴木由妃江さん、共産党から野呂田博之衆院1区候補、森つねと衆院3区候補ら、計10人が参加しました。北電からは、エネルギー広報部の内山洋課長、同三上博光担当課長ら3氏が応対しました。なお、この申入れは、STVが取材し、同日午後6時直前のニュースで報道しました。
冬も安定供給可能の見通し ~ 泊原発は即時廃止・廃炉にすべき   原発連
    設備のトラブル折り込み一日も早く再稼働したい    北電


申入れたのは5項目です。1点目は、夏に続いて冬も泊原発なしで電力の安定供給ができる見通しが立ったのだから、泊原発の即時廃止、廃炉は当然だと求めました。これに対し三上課長は、設備のトラブルを折りこんで考えるべきだとし、夏も冬も、基幹電源としても、環境面でも、エネルギーの自給率の面でも、原発が一定の役割を果たすべきだ、早く稼働したいと居直りの答弁。
2点目は、節電や計画停電で道民に不安を与える卑劣なやり方は厳に慎むよう求めました。三上課長は、設備のトラブルのリスクを考えると楽観できる状況にはないので、10月30日の国の需給検証委員会委員にも、適切な節電目標を持って各界の協力を得て進めると説明している、卑劣なやり方を意図しているものではないと開き直りました。
3点目は、不測の事態に備えるというなら、不安をあおるのでなく、安定供給の社会的責任を自覚し、東電や東北電力が今夏の供給力確保対策として実施したように、緊急電源設置をもっと増やすなど不安を与えない対策を講じるべきだと求めました。
三上課長は、計画外停止が起きないよう秋から保守点検をすすめているとか、夏に続いて冬は南早来変電所内に緊急電源を設置(7万4千kw)、苫東厚真火発2、4号機で出力増(1~2万kw)をはかるーなど、今冬の新対策を説明するだけでした。
 4点目は、「自然の宝庫・北海道でこそ安全な自然エネルギーの本格的普及を」求めました。これについて三上課長は、固定価格買取制度の趣旨に沿って対応しているとしながら、太陽光は昼夜の変動が大きく冬のピーク時の夕方には出力が出ない、また風力は風次第で安定電源とするには無理があるなどと述べ、自然エネの本格的普及は言いませんでした。
 5点目は、エネルギー浪費型社会を根本から見直し、低エネ社会に転換する牽引車の役割発揮を求めました。これに三上課長は、限りある資源であり、無駄なく使うようホームページなどを通じて展開していると述べるだけでした。


再稼働か値上げかの二重の脅かしは許されない ~ 菅野一洋代表委員


 北電の回答に対する質疑で原発連の菅野一洋代表委員が、「今夏関西電力大飯原発の再稼働がなくても3%超える予備力があり原発なしで乗り切れたことが明らかになり、国民は、政府と電力業界のいうことは信用できないことを体験した」「煽っているというのが国民の体験だ」と反論。さらに菅野氏は、昨日(10月31日)の北電社長の記者会見は、電気料金値上げの脅かしをやっている。しかし、国民はコスト高になっても自然エネを進めるべきだが50.4%、反対が9.6%、朝日新聞の世論調査でも原発の割合をゼロにするため電気料金の追加負担にも賛成が55%であり、再生可能エネへの転換が国民の選択だと述べ、泊原発の再稼働なしでは電力が回らないし値上げもやむなしという二重のおどかしは許されないと厳しく批判しました。


冬も乗り切れる見通しーなのに再稼働しようというのか ~ 黒沢幸一議長


 ついで道労連の黒沢幸一議長が、冬も乗り切れる見通しだが、それでも泊原発を近日中に再稼働という考えか、昨年のフクシマ原発事故後、本州(の電力会社)は、数十万kwクラスの対策を取っているが、なぜ北電は取らないのか、また経団連の米倉会長が北海道まで来て再稼働したらよいと言ったが、道民の多数はゼロを望んでおり、北電は道民の意見をしっかり聞くべきだと要請。
 北電の内山課長は、「大飯原発を再稼働しなくてもまかなえたというのは結果的にはそういうことだったと思う」「昨日の社長の記者会見は、現行料金を維持したいが、燃料コストが1千億円増えるので、再稼働しなければ料金値上げの検討も考えなければならないという趣旨だ」と述べ、さらに、「規制委員会の安全基準を見て再稼働が遠くない時期にあるかどうか見極めながら対応する」、「緊急電源設置と言っても燃料確保の目途がつかないと出来ないこと」などと答えるにとどまりました。


 北海道に資源はある―有効活用する発想がずれている ~ 野呂田(のろた)博之氏
10・13大集会の1万2千人の声、金曜日道庁前の声を受け止めよ ~ 森つねと氏


 また、野呂田博之氏(衆院選小選挙区北海道1区の共産党候補)は、北海道には資源はある、それを有効活用する発想がずれていると厳しく指摘しました。森つねと氏(衆院選小選挙区3区の共産党候補)は、供給力に風力を見込んでいるのか、10月13日大通公園に1万2千人集まったし、毎週金曜日には道庁前で訴えているーこのことをどう受け止めているのかなどと問いました。