フクシマ事故で原発コスト安の安全神話は破たん
再生可能エネを軸に地域分散型の
強靭性のある電源構成と設備を
―9・14「フクシマ後の世界の原発の動向と
電源構成の未来を考える」講演会からー
電力という商品の特殊性を理解して扱うことが大事
宮尾氏は最初に、「電力という商品の特殊性をよく知って使うことが大事です」として次のように語りました。「電力には色も匂いもなく“品質がない”。金属の電線で、発売元と買い手をつなぐだけで手に入ります。金属の中には電気の元になる電子がぎっしり詰まっていて、売り手が売り先へ電気を押し込むと、ところてんのように買い手の口から押し出されます。どこでつくられても全く区別がつきません。あるのは電圧という規格だけです。光速の速さで流れるが、貯めにくく扱いが難しい商品です。貯めにくいから発電量と消費量のマッチング(消費量より発電量を5%くらい余裕を持ち安定に供給できるように維持しなければならない)が大前提です。足りなくなると、発電所が次々落ちて間違えば瞬時に全停電になる。1カ月ほど前、台湾で発電所1カ所を操作を間違って止めたことから大規模な全停電になった。このため電力会社は常に予備発電所を用意しなければならない、これが電力の供給予備率です。
今一つ、電力は交流で供給している特別な商品です。全北海道同時に1秒間に50回の速さでプラス、マイナスを繰り返している商品を扱う難しい商品です。しかも、常に変化する使用量にぴったり合わせて発電しなければなりません。これを行なうのが電力制御で、それを電力会社がやっている(中央指令室で)のが電力会社です。かつては人間がメーターを見ながら電話で指令を出していましたが、今は半導体の発達でコンピューター管理(制御)できるようになり自動化されています。電力会社にとって、天気任せの太陽光や風力発電は迷惑そのものだったのです」と述べました。
“原発推進ありき”で世界の流れに逆行する安倍政権の異常な政治
次いで宮尾氏は、ここ20数年間の世界の原発メーカーの動向、合併の変遷を図表で紹介し、フクシマ後、原発メーカーで元気なのは日本の3大メーカー位だと述べつつ、その日本でも、東芝は今WHの買収問題を契機に危機的状況です、三菱重工業も豪華客船の建造での大規模赤字で危機的状況にある。日立製作所もイギリスの2原発の建設を受注したが建設コストが1基1兆円を超え、コスト高で厳しい状況にある、それはフクシマ後の学生の就職志願状況にもはっきり表れ、今や原発関連会社に就職を希望する学生はフクシマ以前の5分の1、あるいはそれ以下しかいないとグラフで示しました。ところが、安倍政権はあくまで原発推進、原発輸出に前のめりで、世界の動向の真逆を走っており、破たんは必至ですーと強調しました。
原発のような集中型発電設備の脆弱性が明白に
さらに宮尾氏は、福島原発事故で原発のような集中型電源設備の脆弱性が一挙に明らかになる一方、電力自由化時代を迎え、電力制御技術の急速な進歩と分散型電源設備の普及が進み、その強靭性が明らかになってきたとして、再生エネルギー先進国・スペインの電力制御システムの例を、2014年のHTB報道ステーションの古館氏と元経産省官僚の古賀茂明氏との放送番組を映像で紹介。参加者は、半導体やマイコンを使った電力機器が普及し、電力制御技術が飛躍的に進歩、いわゆるパワーエレクトロニクスですが、このおかげで従来は面倒だった家庭などの太陽光発電電力を電力網に送り出せる時代になった、それも家庭レベルまでできる時代になった―など、スペインの電力制御操作室からの映像を食い入るように見ました。
再生可能エネを軸に地域分散型電源設備で強靭性ある送配電網の建設を
宮尾氏は、「それでは、こういう電力情勢の中で我々はどうすればよいか」に話を進め、1つは原発からどう撤退するかが重要だと述べ、①政府にどう決断させるか、②核廃棄物(高レベル放射性廃棄物など)の後始末をどうするかに触れ、その方法は、日本学術会議の提案している“見えるところで管理しながら処理・処分技術の研究開発を進める”(これが今考えられるベストだと思うとのコメントを添えました)、③国民が原発電気の利用を拒否することーも大事だとしました。
その点で、再生可能エネルギーの地産地消を進めることが重要で、大都市や電気をたくさん消費する工業地帯などでは難しいが、小規模自治体は可能だし家庭はもちろん可能ですーと自宅の例も紹介しました。
最後は政治と金です
最後に宮尾氏は、これを実現するには「政治と金が必要です」として、政治力が大事で、これは選挙で勝ち、そういう政府をつくることです。同時に金が必要です。それは補助金でなく自らも金を出すファンド形式がよいとのべ、大規模なファンドは都道府県が、家庭や地方自治体は中小規模の発電設備を設置するファンドも必要です、と語りました。ー
2人の参加者の感想文から ~ わかりやすく面白く大賛成。もっと多くの人に聞かせたいし、賛同者を増やしたいー
「素人の私にもわかりやすい内容でした。小規模自治体の可能性や、これからの取組み、方向性が少し明かりを見たような気になりました。政治を変えることは本当に大事だと思います。」(O氏)「大変面白く、結論に大賛成。政治に働きかける、国民の力を増大させる運動が必要。どう取り組むか、私は札幌北区で革新懇運動に参加している一人ですが、学習会など是非もっと多くの人に(宮尾)先生のお話を聞いてもらい、理解者、賛同者を増やしたい。私自身もっと理解を深めたいと思いました。(高橋重人)
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「原発も核のごみ捨て場もない
北海道の実現を求める」道議会請願の審査促進を!
道原発連9月5日、道議会産炭地振興・エネ特別委員長に申入れー
藤沢澄雄特別委員長「理事会で協議し回答します」
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道知事に
「泊原発の再稼働を認めないよう求める
公開質問状」を提出
9月8日ー「泊原発を再稼働させない北海道連絡会」
(代表 市川守弘 )7氏
9月8日(金)午前10時、市川守弘代表、新藤大次郎副代表、川原茂雄副代表ら7氏が、道庁西別館で公開質問状を提出、2週間以内に知事名の文書回答を求めました(写真
上)。
提出後、参加者からひと言づつ、「道民の安全を守る知事の立場から知事に質問に答えてほしい」「知事は廃炉に向けた決断を」「北電への指導をしっかりやってほしい」などの要望を伝えました(写真 下)。
応対した道総務部危機管理対策局原子力安全対策課の職員は、「質問状は通常公文書。回答は通常課長名で行う。決済は局長まで。文書は知事にはわたっている」などと説明するだけで、知事名で回答するとは言いませんでした。知事が自分で回答せず、通常課長名で行うなどというやり方を認めるわけにいきません。
【公開質問状の要旨】
私たち北海道連絡会は、去る5月19日、貴職宛てに泊原発の再稼動に関する申し入れを行いました。5月31日付で、文書回答をいただきました。しかし、その文書回答には、貴職の名前はどこにもありませんでした。また、文書回答の内容も、道知事が道民の安全に責任を負う立場に立たないもので、納得できないものでした。
つきましては、あらためて貴職宛てに、以下の公開質問状を提出し、貴職名の責任ある回答を求めます。
1、前回の回答に関してなぜ、貴職名の文書回答でなく、関係部局役職者名の文書回答をされたのか、納得いく説明を求めます。
2、泊原発の再稼動を認めないよう求める公開質問状(5項目のうちから3項目の要旨)
(1)福島第一原発事故の最大の教訓は、二度と同じような重大事故を繰り返してはならないことです。北海道でも、泊原発が重大事故を起こせば取り返しのつかない事態になることは明らかです。原子力規制委員会の新規制基準は、重大な事故が起きうることを「想定」し、起きた場合、その被害や影響をできるだけ小さくする立場の基準に過ぎません。フクシマの教訓が生かされているものと言えません。
ところが貴職は、原発は安全最優先と言いながら、泊原発は規制委員会で審査中であり、予断を持って言える段階ではないとして、再稼働を認めないとは決して言ってきていません。これは、道民の安全を最優先にしない誤った対応ではありませんか。明確な回答を求めます。
(2)憲法は主権在民を原則としており、国も地方もこの原則に立った政治を行うのが大前提です。泊原発の再稼働の是非に関し、今年4月に実施された「道新」の世論調査では、泊原発の再稼働に「反対」が59%と報じられました。貴職は、この民意を実現する立場に立ち、きっぱり泊原発の再稼働を認めない決断を下すべきではありませんか。明確な回答を求めます。
(3)万が一、泊原発で重大事故が発生した場合に備え、関係地域の全住民が安全に避難できることは、緊急時対応として不可欠のことです。しかし、原子力規制委員会が策定する原子力災害対策指針では、5キロ圏内を除いた30キロ圏内では、相当量の放射性物質が放出されてから避難することになっており、被ばくが前提となっています。また、安定ヨウ素剤も、各戸への事前配布でなく、避難集合場所で配布することになっている等、二重三重に安全性を保障しえないものとなっています。このような原子力災害対策指針をもとに策定された避難計画のもとでは、何度防災訓練を重ねても被ばくなしに避難できる保障は全くありません。この点からも、泊原発の再稼働は認めるべきではありません。明快な回答を求めます。(以下略)
【道原発連ニュースに見る道原発連の歩み】 第13回
今号では、1994年7月28日付第52号から、1995年3月20日付第61号までから振ります。
新「長期計画」でプルトニウム利用計画を大幅に先送りしたが,電事連会長は「利用に向け努力する」ーその問題点を告発
しかし、プルトニウムの海上輸送の問題、プルトニウム保有と核兵器開発の問題など国際的にも警戒する声が強まっているなか、日本は高速増殖炉が稼働するまではプルサーマル方式でプルトニウムとウランの混合酸化物燃料(MOX)を加工して原発で使用する計画でした。これがプルトニウム保有に対する国際的な警戒の高まりがあり、この批判
をかわすためにもプルトニウム利用計画の先送り「長期計画」を策定せざるをえなかったということです。しかし、電事連の安部会長(当時)は「プルサーマルの費用がかってもプルトニウム利用に向けて努力する」と明言していたのです。
長期計画の大幅先送りと電事連など推進勢力の本音は違うーと問題点を告発しています。
既設原発の老朽化などで事故多発、原発の危険が重大化。非自民連立政権で自社の垣根消え、国会議員の9割以上が原発推進派に
第56号(94年11月29日)や第57号(94年12月1日)には、原発問題住民運動全国連絡センターの第8回全国総会・交流会を取り上げ、藤巻泰男筆頭代表委員が、既設原発の老朽化の進行と営利優先の乱暴な運転によって原発の危険がますます重大化していると強調。同時に、非自民の連立政権の下で、社会党が原発政策でも自民党政治に「熔融」し、原発推進勢力が国会で90%以上を占める一方、原発への不安を抱く国民は90%以上となり、両者の矛盾が深まっていると指摘、広範な国民とともに原発の危険に反対する取り組みや緊急時対策を求める運動を大きく広げようと呼びかけています。
そして第57号には、「トピック・ニュース」として、「浜岡原発で放射能漏れ」
「労働者の被ばく頻発―アメリカのプルトニウム貯蔵施設で」などが紹介されていま
す。さらに第58号(1995年1月1日)には、「事故続発」欄を設け、「『原子炉暴走』の誤信号ー女川原発2号機で」、原子炉の暴走を示すモニターが誤作動したと報道、「『ふげん』自動停止―蒸気調整弁に異常」などを取り上げています。
「労働者の被ばく頻発―アメリカのプルトニウム貯蔵施設で」などが紹介されていま
す。さらに第58号(1995年1月1日)には、「事故続発」欄を設け、「『原子炉暴走』の誤信号ー女川原発2号機で」、原子炉の暴走を示すモニターが誤作動したと報道、「『ふげん』自動停止―蒸気調整弁に異常」などを取り上げています。
阪神・淡路大震災(1995年1月)を踏まえ、原発への不安を行動へ
第59号(1995年2月2日)は、阪神大震災の事故直後のニュースです。原発問全道連絡会が総会を開き、阪神大震災の災害と原発の安全性が問題となり、地元住民の間にも不安が高まっていることが報告され、「阪神大震災の教訓踏まえ、原発への不安を行動へ」の大見出しを立てて、泊原発の防災に関わる問題,幌延核廃棄物施設の問題、下北半島の大間原発の問題などを提案、論議しています。
原発耐震基準見直しと総点検を―全国センターが科技庁と通産省に申入れ 道原発連は北電と道に申入れ
第60号(95年2月15日)と第61号(95年3月20日)は、阪神大震災の教訓に基づき、全国センターが政府・科技庁と通産省に、原発問題全道連絡会が、北電と道へ、原発耐震基準見直しと総点検を申入れたことを伝えています。また、原発問題全道連絡会は、3月13日に、泊村をはじめ泊原発周辺の町村に対し、地震の際の原発の安全性を確保するためとして、①原発の耐震性を見直すとともに総点検を行い、結果を公表すること、②防災計画の抜本的な見直しを道に申入れることーなどを要請しています。(米谷道保記)