2017年5月26日金曜日

原発問題連絡会ニュース 第284号 2017年5月20日



フクシマから6年余、「二度と同じ苦しみ味わってほしくない」
               との被災地の願いに応え

泊原発は再稼働せず廃炉を決断し、
    再生可能エネルギーに転換すべき

   ―道原発連が19日、北電と道知事に申入れー



 福島原発事故から6年余、今も7万人超える県民が避難を強いられ、早期帰還と支援打ち切りがセットで押し付けられているなか、道原発連は5月19日、泊原発の廃炉や実効性ある避難計画と防災訓練による検証などを求め、北電と道知事に申入れました。大田勤、黒澤幸一、米谷道保代表委員のほか佐藤久志事務局長、長屋いずみ北区生活相談室長ら7人が参加しました。



北電への申入れ ~ 積丹半島西岸が地震性隆起なら原発立地は不適では? 



 まず原発連は、原子力規制委員会が積丹半島西岸の地形が地震性隆起の可能性を否定できないと指摘しており、そういう場所に原発を立地することは不適でないかとただしました。これに対し北電は、規制委が示した地質図などに基づき安全性をより高める観点で考え方を整理中であり、整理が出来次第規制委に回答すると述べるにとどまりました。
北電に申し入れ文を渡す黒澤幸一氏



  防潮堤の液状化や防波堤の破壊、流亡については調査中



規制委から防潮堤の液状化の恐れが指摘されたことについて北電は、「複数の手法で説明すべき」と指摘があり、今必要な調査や試験、専門家の意見や他電力、電力中央研究所などの意見も聞きながら調査している。防波堤については、津波で損傷した場合の影響や安定性、移動や沈下の可能性があり、いま水理模型実験中で、その結果がでたら審査会合で説明するーなどと答えました。


 労使協定超える長時間残業は是正しているが、新36協定は公表できない!とは?

札幌中央労基署から是正勧告を受けた労使協定の残業限度時間数を超える長時間残業については、「真剣に是正に努めており、2月度は80時間を超える者はいなかった」と回答としました。しかし、今年4月からの新労使協定の内容は公表できないと拒否。その一方で「健康が第一だから月45時間を超えないよう努力中」と弁明。黒澤幸一代表委員(道労連議長)が、「4月以降の労使協定が改善されたのかどうかくらいは明言すべきだ」と迫りましたが「協定内容は公表しません」「健康第一で限度時間を守るよう努力中」に終始しました。


 道への申入れ ~「国が責任もって対応すること」
 「規制委が審査中で予断持っては言えない」~道民の安全に責任ないの?


道には、「泊原発は再稼働せず廃炉の決断を」「再稼働の地元了解の範囲は?」「道独自に再稼働の是非を判断するために、新潟県知事の例を参考に独自に3つの検証委員会設置を」「防災訓練は実効性を検証できる内容に改善を」「安定ヨウ素剤は事前配布を」などを求めました。
しかし道は、「再稼働の是非や地元了解の範囲は国が責任もって示すべきこと」「地元了解は、道議会の審議状況を踏まえ判断する」「3つの検証委員会設置は考えていない」「安定ヨウ素剤の事前配布は、規制委から服用のタイミングが指示される。いろいろなケースに応じ対応する」など、道民の安全に責任を負う姿勢が感じられない答弁に終始し、参加者から「これほど国任せとは」「道民に責任を負う姿勢がまったく感じられない。ひどすぎる」と怒りの声があがりました。



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「泊原発を再稼働させない北海道連絡会」がスタート


昨年11月以来3回の設立準備会などで準備を進めてきた泊原発を再稼働させない一致点での共同組織・「泊原発を再稼働させない北海道連絡会」が5月14日、52団体の加盟で結成集会を開催してスタートしました。さっそく5月19日には道知事宛てに泊原発を再稼働させないようにとの申入れを行ないました。

  北海道連絡会の代表には、市川守弘さん(泊原発の廃炉をめざす会共同代表・弁護士)を選出、5団体(泊原発の廃炉をめざす会、Shut泊、後志原発とエネルギーを考える会、21世紀の未来を拓く会、原発問題全道連絡会)が幹事団体に承認され、泊原発の廃炉をめざす会以外の4幹事団体から副代表を各1名選出、道原発連からは米谷道保代表委員が副代表に選出されました。

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被ばく2世、3世を含む被災住民の
        健康障害は一層深刻
「チェルノブイリ30年に学ぶ」講演会で
         室崎和佳子さん熱く語る
―道原発連・国民大運動道実行委共催で
        チェルノブイリ原発事故31周年記念講演会




講演する室崎和佳子さん
 4月26日夜札幌市内で、チェルノブイリ原発事故31周年メモリアル講演会が開催され、約30数人が参加、昨秋チェルノブイリ原発事故30周年記念現地調査団(ユーラシア協会と原発問題住民運動全国連絡センター共催)に参加し、ウクライナとベラルーシの2か国を訪れた江別市在住の室崎和佳子さん(元教員)がパワーポイントで現地の写真を示しながら講演、参加者は最後まで熱心に視聴しました。(写真) 



 室崎さんは、冒頭「訪問した2つの国は、人類史上最悪の放射能被害を蒙ったが、人災事故から30年がたち、被爆2世、3世を含む被災者の健康被害は一層深刻さを増しています」「健康障害は、甲状腺がんだけでなく、様々な病気も広がり、今が一番深刻だと言われるような実態があります」と講演を始めました。



ベラルーシでは保養施設「サナトリウム希望21」に希望を感じる一方、国立と民間の支援施設の落差の大きさに胸が痛む



最初の訪問先はベラルーシの子どもの保養施設「サナトリウム希望21」。ここは1994年国際プロジェクトとして6歳から17歳までの子どもを放射能から守るために設立された保養施設で「24日間の保養期間中に98%の子どもに健康回復の効果がある。とくに頭痛やめまいの減少などがみられる」と胸を張る広報担当職員の笑顔に希望を感じた。

次の訪問先、民間のベルラド放射能研究所では、政府がチェルノブイリ原発事故の実態を国民に知らさず支援も不十分な中、自前のホールボデイカウンターなどを購入し、自動車に積んで村々を回って測定し、放射能汚染を減らすビタペクトを開発、製品化して子どもたちに配るなど被災者に寄り添った活動に頭が下がった。

ところが次に訪問したベラルーシ国立放射線生物学研究所は、被災者のための研究所といわれたが、まず御殿のような巨大な建物に驚く。応対したのは副理事長1人で、大講堂のような大会議室の檀上から紳士服姿で、「汚染地帯に住んでいる人に健康の問題はない。あるとすれば放射能のせいだと気にしすぎる精神的な問題だ」などと講演。ルカシェンコ長期独裁政権下での被災者支援の後退の深刻な実態を目の当たりにして落胆と怒りで涙が出たと語りました。



ウクライナでは、チェルノブイリ原発4号炉を見学後、被災者支援優先の国立放射能医学研附属病院を訪問し救われた思いに



訪問国・ウクライナでは、まずチェルノブイリ原発4号炉を視察。しかし、石棺崩壊が進み見学は短時間に制限され、建設中の新巨大シェルターを一望できたが、廃炉作業の困難さを痛感させられたと報告(視察直後の11月末にシェルター完成し4号炉を覆った)。

最後の訪問先は、ウクライナ国立放射能医学研究所附属病院。所長(医師)はじめ所員5人が出迎え、「この施設は事故直後の86年10月に完成し30周年を迎えた。設立当初からヒロシマの被ばくの影響の研究にお世話になりました」と感謝の言葉から始まり終始和やかな雰囲気で見学。所長さんなどから「この病院は被災者の健康回復を最優先に取り組んでいる。低線量被ばくでも白血病、甲状腺がん、乳がん、白内障の発病があることがわかってきているがWHOやIAEAは認めていない。世界の流れが、放射能の他に原因があると言い、世界は私たちの研究を認めてくれない」「しかし病院のベッド大人用400床、子ども用130床は、すべてチェルノブイリ被災者のために使っている。チェルノブイリ法が被災者への優遇措置を決めているから当然です」などとの説明に救われた思いがしたと報告してくれました。



チェルノブイリ法の2つの特徴に感銘――国が全責任を負っている。被災者の範囲が広範囲に及び今も支援を継続


最後に、チェルノブイリ法に触れて室崎さんは、2つの特徴、①国が責任をもって被災者支援を行うことを法律に明記、②被災者の範囲が広範な被災地に住民を対象にしていることーと紹介し、国が責任を負わない日本の福島被災者子ども支援法との落差の大きさに触れて、日本の課題だと思うと語って講演を終了、大きな拍手がわきました。室崎さんは講演後の質問にも丁寧に答えました。



連係が求められる2つの大間裁判
    町会連合会が秋にも3回目の市民集会開催を計画


大間原発訴訟の会が国と電源開発を相手に、建設差し止めを求めている27回(2月21日)と28回(2月22日)の口頭弁論が行なわれました。2日間原告側証人である専門が変動地形学の渡辺満久東洋大学教授の反対尋問と被告側証人である山崎首都圏大学東京の名誉教授と同じく被告側の証人として出廷した電源開発の職員2人の主尋問および反対尋問が終日行なわれました。


6ヶ月間行なわれた証人尋問は、すべて終了し、6月30日の最終の口頭弁論では3人の原告が意見陳述を予定しています。大間原発訴訟の会では、来春の判決が出るまでの1年間を重視し、学習会、公演、宣伝などを強めて、多くの人たちに運動を広げることとしています。

函館市が提訴している大間の裁判は、4月21日第12回口頭弁論が東京地裁で行なわれました。原告(函館市)側は、事前に提出されている準備書面21~23の内容に沿って2人の弁護士がプレゼンテーションしました。書面21では、原発建設位置が、伊方原発最高裁判決や確立された国際基準に従わなければならないにもかかわらず、万が一にも事故が起こらないための審査が不十分であり、最悪事故が起きた時の対応策も取られていないと主張しました。また新規制基準も本来あるべき立地審査指針を放棄していると述べました。書面22では、避難基準が確立されていないため、函館市が地形や人口、避難ルートなどから緊急の避難計画は不可能と述べている点についても立地審査の対象としていないことを告発しています。書面23では、原発事故は、他の科学的な技術の利用に伴う事故と比較し特殊性があり、不可逆・甚大性、広範囲性であり、しかも長期にわたり都市そのものを破壊する異質なものであると述べ、司法に他の科学技術と原発事故の違いを判断基準にするよう求めています。
 住民訴訟が6月30日結審、来春までは判決が予定されていますが、判決の結果が、2年遅れで進められている函館市が原告の裁判にも大きく影響することは間違いありません。両裁判の連携が今後も重要です。函館市の町会連合会は、今年の秋にも、大間原発凍結を求めて、3回目となる市民集会を開催し、市民にアピールすることとなっています。(紺谷克孝函館市議・道原発連理事)