2015年7月31日金曜日

どうする 高レベル放射性廃棄物学習会 2015年8月4日

予定していた下記の学習会は講師の都合により急きょ中止とさせていただきました。大変申し訳ありませんでした。

「どうする 高レベル放射性廃棄物
日本学術会議の提言を読んで」
―加盟団体、役員、個人会員の皆さん
 多数のご参加を お願いしますー
政府・経産省は、日本学術会議の提言(4月24日)を無視し、政府が前面に立って深地層処分場の候補地選定に乗り出す方針を閣議決定(5月22日)し、すでにシンポや説明会をどんどん進めています。
核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会は、核抜き条例を持つ北海道も候補地の対象地にして説明会やシンポを行うことに厳しく抗議しています。政府は、日本学術会議の提言を尊重することが義務づけられています。日本学術会議の提言を読んで、核のごみの処分場問題はどう考えるべきか、ともに考えましょう。
◇日時   8月4日(火)18時30分~
◇会場   札幌エルプラザ(環境プラザ)2階環境研修室
◇講師   石崎健二さん(日本科学者会議会員)

      米谷道保さん(道原発連代表委員) 
― 参加費300円 ―

2015年7月27日月曜日

道知事に泊原発再稼働反対申入れ 2015年7月24日

北海道知事
高橋 はるみ様
                     2015年7月24日 
                             原発問題全道連絡会  大田 勤
                                       黒澤幸一
                                        春木智江 
                                       米谷道保

泊原発の再稼働を容認せず、即時廃炉を求め、再生可能エネルギーの本格的普及に転じるよう道政のイニシアチブ発揮を求める申入れ

 福島原発事故から4年余が経過しましたが、いまだに11万人余の福島県民が避難を強いられ、汚染水の流出もとまらず、事故収束の見通しさえ立っていません。原発と人間社会が共生できないことは明白です。
 2012年5月に泊原発が停止して3年余、2013年9月に関西電力の大飯原発3、4号機が停止してまもなく2年になりますが、この間道内でも全国でも電力不足は起きていません。人間社会と共生できない原発は、再稼働せず、直ちに廃炉にし、安全な再生可能エネルギーに軸足を移すべきです。
 しかし、政府・経産省は、昨年4月に閣議決定した中長期のエネルギー基本計画にそって、2030年度の電源構成比率を、原発20~22%、石炭火発26%とする一方、再生エネは22~24%にとどめようとしています。とりわけ太陽光は7%、風力は1.7%など現在の低い水準に抑えこもうとしています。まるで福島原発事故などなかったかのような原発推進であり、到底容認できません。
 このような政府・経産省の方針のもとで北海道電力は、泊原発全3基の早期再稼働に躍起となり、その維持費に毎年800億円余、規制基準突破のための対策費には2500億超とも言われる巨額の資金を投入する一方、再生エネ、とりわけこの間設立認可の申し込みが急増した太陽光発電と今後積極的普及が期待される風力発電に対して買取り制限を導入、再生エネ普及に背を向けています。
そのうえ政府・経産省は、太陽光発電について、電気の供給量が需要量を上回ると見込まれる場合における出力制御ルール等を変更する省令「改定」(今年1月22日公布、1月26日施行)を行いました。これを受けて北電は、太陽光発電の認可申請にあたって、発電出力10キロワット未満の一般家庭用についても、今年度(2015年4月1日)から、年間30日間は無補償とする「出力制御システム導入の合意書」締結を押付けていると聞いています。これは太陽光発電の普及を大幅に抑制するものであり重大です。
 このような政府・経産省の原発推進、再稼働ありき、再生エネ(とりわけ太陽光、風力)買取抑制とこれに追随する北電の理不尽なやり方は容認できません。
いまひとつ重大な問題は、原発労働者の労働条件の問題です。福島第一原発事故の廃炉作業は難航し、放射線量の高い中で被ばくしながら困難な作業を続け、累積被ばく線量が上限を超え、次第にベテランの労働者が手薄になってきているとのことです。このため累積被ばく線量の上限を大幅に引き上げる動きが報道されています。一方、福島第一の原発労働者は、元請、下請け、孫受け、ひ孫請けなど、何重もの下請け構造のもとで被爆しながら危険手当さえきちんと支払われないばかりか、最近は死亡事故が増えていると報道されています。
泊原発では現在、再稼働に向けて規制基準をクリアするための作業で多忙を極めていると聞いていますが、再稼働すれば、現場の労働者には、被ばくしながらの作業が強いられます。原発労働者を被ばくから守り、労災事故の発生を未然に防止するよう作業環境の整備に努めるとともに、劣悪な労働条件の改善向上をはかることは泊原発においても重要な課題となることは明らかです。
いま政府・与党の中から、福島原発事故の損害賠償や支援措置を、事故からまる5年あるいはまる6年で打ち切る動きが出ています。一方、自主避難者に対する支援の打ち切り、縮小の動きも強まっています。北海道への自主避難者も例外ではなく、不安を与えています。
以上を踏まえ、次のことについて、道政がイニシアチブを発揮するよう要請します。

1、泊原発の再稼働を容認せず、即時廃炉を決断するよう国と北電に求めること。
(1)泊原発は全3基とも再稼働を容認せず、即時廃炉を決断するよう求めること。
(2)泊原発の再稼働についての地元了解が求められる場合には、①少なくとも周辺30キロ圏内9町村の合意を条件とすること ②安全に避難できる保障がない現状の避難計画のもとでの再稼働は容認しないこと ③避難計画の安全性の検証には、対象地域の全住民参加での実動訓練によって検証すること。

2、再生エネ自給率100%の目標を掲げ、早急に大規模な普及に転じること。
(1)再生エネ自給率100%を長期目標に掲げ、今春の知事選で貴職が公約した「3分の1は再生エネで」の公約を今任期中に実現する年次計画をたて毎年計画的に推進すること。
(2)(1)の推進のために、国の省令「改正」(2015年1月22日公布、同26日施行)を受け、北電が行っている太陽光発電の接続可能量を117万kwとする制限と追加接続にあたっての出力制御(30日間無補償)の「太陽光発電設備の連系にかかる合意書」の押しつけの撤回を北電に求めること。
(3)国の2030年度の電源構成比率については、原発ゼロを前提とするよう国に見直しを求めること。そのためにも、原発をベースロード電源と位置づけ、核燃サイクルの着実な推進を明記した国の中長期のエネルギー基本計画(昨年4月に閣議決定)を、原発・核燃サイクルから撤退することを柱に位置づけるよう根本的な見直しを求めること。

3、原発労働者を被ばくから守り、労働条件の改善・向上をはかること
(1)泊原発を抱える北海道は、福島第一原発の廃炉作業に従事する労働者の問題は他人事ではなく、累積被ばく線量の上限値の引き上げなど行なわないよう国に求めること。
(2)泊原発で働く労働者の労働条件や労働実態がどのようになっているのか、道として、元請、下請、孫請けの労働者の現状や派遣労働者の有無と労働条件などを把握し、必要があれば機敏に是正を求めるべきです。適宜立ち入り調査や聞き取りなどして把握に努めているのか、明らかにすること。
(3)昨年2月10日に泊原発構内で起きた下請会社の労働者が重傷(顔面骨骨折、脳挫傷など)を負い1カ月余も入院加療した労災事故の労働者は、その後後遺症なく回復し、雇用を確保されたのか、明らかにすること。

4、自主避難者への支援の打ち切りに反対し、国に拡充をもとめること
政府・与党による福島原発事故被災者と自主避難者への支援の縮小・打ち切りに反対し、国に拡充を求めるとともに、道独自にも支援の継続・拡充をはかること。

                       以上

北電に原発撤退等の申し入れ 2015年7月24日

北海道電力株式会社
社長 真弓 明彦様
                        2015年7月24日
                           原発問題全道連絡会
                            代表委員   大田 勤
                             “     黒澤幸一
                             “     春木智江
                             “     米谷道

原発・核燃サイクルから撤退し、再生可能エネルギーの本格的普及等を求める申入れ

毎日のご精励に敬意を表します。
私たちは、福島第一原発事故を踏まえ、国も電力各社も早急に原発・核燃サイクルから撤退し、安全な再生可能エネルギーに転換をはかるようもとめています。全国すべての原発が停止して間もなく2年なりますが、今夏も電力不足は起きない見通しです。北海道では、泊原発が停止して3年2カ月、電力不足は起きていないし、今夏も節電要請にとどまっています。
自然が豊かで、再生可能エネルギーの資源の宝庫とされる北海道で、ただちに原発から撤退し、処理・処分技術が未確立な核のごみをこれ以上増やさず、エネルギー政策を再生可能エネルギーの本格的普及に転換すべきと考えます。核のごみの安全な処理・処分技術の確立は待ったなしの課題であり、全国・全世界の英知を集めるべきです。
ところが、国も電力各社も、原発・核燃サイクル政策の推進に固執し、原発の再稼働に躍起となる一方、急速に認可申請が進み始めていた太陽光発電の買取り制限、出力制御に乗り出すなど、事実上再生可能エネルギーの普及を抑制する動きです。また、核のごみの処理・処分については、日本学術会議の提言を無視し、地層処分が最善の方針だとして、国が前面に立って最終処分場の候補地選定に乗り出し、北海道内も候補地選定の対象地だとして、すでにシンポや説明会を開催しています。
こうした状況を踏まえ、貴社に以下のことを申し入れます。

1、泊原発は再稼働せず、即時廃炉入りを決断して下さい。
(1)福島第一原発事故は、原発と人間社会は共生できないことを示し、その後の世論調査では、原発からの撤退が過半数です。公益事業体である貴社は、この民意を尊重し、電力不足が起きていない今、再稼働せず、廃炉入りを決断すべきではありませんか。貴社は、多数の民意を無視し、あくまで泊原発の再稼働を推進するのですか。見解を伺います。
(2)貴社が、早期再稼働を目指し、規制委員会に審査申請して丸2年になります。貴社はこの間、規制基準をクリアするために大掛かりな対策事業を進めており、対策費は2500億円を超えるとの報道があります。また、泊原発1、2、3号機の維持費に年間800億円余を要すると聞いています。これほどの資金を投じて規制基準をクリアしても、規制委員会委員長は「規制基準をクリアしても安全だというのではない」と繰り返し言明しています。安全だと言えないのになぜ維持費と再稼働に向けた対策費にこれほどの巨費を投入するのですか。その一方で、電気料金の2年連続の値上げを押付けるなど、道民の納得が得られるとお考えですか。お聞かせ下さい。
(3)原子力規制庁は6月17日、2014年度に貴社など原子力事業者が実施した事業者防災訓練の結果の試行的評価(A,B,C)結果を発表しましたが、泊原発についてはA評価に該当する項目は無かったとのことです。特に改善が必要だと指摘された項目はあるのか、あるならどのような内容か、今回の評価結果を踏まえ今後の事業者防災訓練の進め方も説明して下さい。
2、原発をやめて、早急に安全な再生可能エネルギーの本格的普及に転じてください
(1)貴社はこれまで再生可能エネルギーの普及に努めて来たし、これからも努めると繰り返し言明してこられましたが、福島原発事故後、自社電源設備についてどのような努力をしたのか、具体的に示して下さい。また、それら自社保有の再生可能エネルギーの電源施設の設備利用率を年度ごとに最近の数年分程度示して下さい。
(2)政府・経産省が今年1月22日に公布した省令(2015年1月26日施行)により、電気の供給量が需要量を上回ると見込まれる場合における出力制御ルール等の変更を踏まえ、貴社は「再生可能エネルギー発電設備の接続申込に関する取扱いについて」を発表し、太陽光発電の接続可能量を117万kwに制限し、これを超える追加接続量については出力制御しても30日間は補償しないとする方針を決めて、今年4月1日以降、発電出力10kw未満の家庭用についても、接続の協議にあたって「太陽光発電設備の連系にかかる合意書」を結び出力制御を行うよう求めていると聞いています。
 これは再生可能エネルギーの本格的普及に逆行し、原発の再稼働を最優先する一方、再生可能エネルギーの普及を事実上大きく抑制するものではありませんか。撤回して下さい。
(3)貴社が保有しすでに稼働中の揚水発電所はどこどこにあり、その設備容量はいくらですか。また、揚水発電所の設備利用率は低いと聞いていますが、各揚水発電所ごとの設備利用率を年度ごとに明らかにしてください。京極揚水発電所は、1号機が昨年10月に運転を開始し、2号機は今年10月から稼働すると聞いています。1、2号機の建設費はいくらかかったのですか、電気料金のコストに算入されることから、明らかにしてください。

3、泊原発で働くいわゆる原発労働者の労働条件を明らかにし改善して下さい。
(1)福島第一原発事故後、その廃炉作業に従事する原発労働者は、高線量の放射線を浴びながら、超近代的と言われる設備や機器を扱うにも拘らず、その作業は単純な手仕事や力仕事が多く、下請け、孫請け、ひ孫請けといった何重もの下請労働で、危険手当さえきちんと支給されないなど極めて劣悪な労働条件のもとに置かれ、すでにベテラン労働者が手薄になり、労働者確保のために、被ばく限度線量を現在の5年間の累積被ばく線量100ミリシーベルトを250ミリシーベルトに引き上げる動きが出ています。まさに原発労働者の労働条件の改善は待ったなしの課題です。泊原発の作業は、今のところ再稼働に向けた安全対策の作業が多いと聞いていますが、再稼働すれば被ばく覚悟の労働者の確保とその労働条件の改善は待ったなしの課題となるでしょう。泊原発の現場で働く労働者は、北電社員は何人で、下請会社や孫請け会社の社員は何人ですか。派遣労働者を雇用していますか。元請会社や下請会社、孫請け会社など協力会社の労働者の労働条件の実態を明らかにしてください。
(2)昨年2月10日に泊原発構内で協力会社の労働者が重傷(顔面骨骨折、脳挫傷など)を負い1カ月余も入院加療した労災事故が発生しましたが、その被災労働者は、その後後遺症なく回復し、雇用を確保されたのか、また貴社は発注元会社としてどのような責任を果たされたのか、明らかにしてください。

4、北海道を核のごみの最終処分場にしないよう国に意見を上げてください
 北海道は、農林漁業・水産業と観光産業が基幹産業です。また、自然が豊かで再生可能エルギーの資源の宝庫でもあります。このような北海道には、原発も核のごみの処分場も不必要です。また北海道には、核抜き道条例も制定されており、今年4月の知事選では、2人の候補者とも核抜き条例を持つ北海道に最終処分場は認めないと公約しました。貴社も、国に対して、北海道を核のごみ捨て場にしないよう意見を表明してください。

                               以上

原発問題連絡会ニュース 第262号2015年7月20日

衆議院での「戦争法案」の
採決強行に厳しく抗議する!
民主主義破壊の暴挙を許さず、
参院で廃案に追い込もう!

 7月16日午後、政府・自公両党は、衆議院本会議開催を強行し、違憲の戦争法案の採決は強行するな!廃案にせよ!との過半数の国民の声を無視し、採決を強行しました。採決強行に、安倍政治への怒りはさらに広がっています。参議院で一層政府・与党を追いつめ、廃案に追い込もう!安倍内閣を退陣に追い込みましょう!
 原発問題全道連絡会常任理事会は7月15日、戦争法案反対の左記のアピールを発表しました。
〈アピール〉 違憲の「戦争法案」、
必ず廃案に追い込もう!

― 原発も攻撃対象とされ、
重大事故の危険が格段に高まる ー

2015年7月15日 原発問題全道連絡会常任理事会
  
 開会中の通常国会で自公両党は、会期を95日間も大幅延長し、違憲の集団的自衛権の行使を具体化する2つの法案=「国際平和支援法」、「平和安全法制整備法」について、7月中旬にも採決を強行しようとしています。
この法案は、歴代自民党政権が長年、憲法違反として認めてこなかった集団的自衛権の行使を容認・法制化し、アメリカが行なう戦争に日本の自衛隊を戦闘地域まで派兵できるようにする戦争法案です。自衛隊が、戦闘地域にまで行って武器や弾薬、燃料や食料などの物資を供給する活動を行うようなことになれば、当然相手側から攻撃され、殺し殺される戦争になってしまうことは明白です。そうなればアメリカやNATO加盟国だけでなく、わが国も相手国や国際的テロ集団などによる攻撃(テロ攻撃)対象国とされ、わが国の電力施設や原発が狙われる危険性も格段に高まることが危惧されます。すでに原発は、昨年強行された秘密保護法の対象とされ、国民の目から原発を隠す監視や規制が強化されていますが、一層国民の目が届かない施設にされかねません。国民監視が弱くなれば、事故が起きる恐れが強まります。
日本の原発は、狭い地域に集中的に立地しているところが多く、一度に何基もの原発が重大事故に見舞われる危険性が高いことは福島原発事故で明らかです。原発だけでなく電力施設も格好の攻撃対象とされるかもしれません。電気が途絶えたら、国民の暮らしも産業も破壊されてしまいます。原発も電力施設も、戦争法案と共存できません。このような戦争法案は、何としても廃案に追い込まなければなりません。
戦後70年の節目の今年、戦争法案を阻止し、日本の平和と国土・国民を守るために、私たち原発連も全力をあげます。政府・自公与党勢力は、今日7月15日にも衆議院特別委で採決を強行し、今週中には衆議院本会議を強行突破する構えです。強行採決を許さず、広範な国民との共同を広げ、違憲の戦争法案を必ず廃案に追い込みましょう。

「電力システム改革とは何か」
~ 小坂直人教授を講師に学習講演会

6月30日夜、「電力システム改革とは何か」を考える学習講演会を開催しました。学習講演会には、札幌市内のほか帯広市、苫小牧市などから約30人が参加し、小坂直人北海学園大学教授の講演を熱心に視聴、数多くの質問も出され、小坂先生が丁寧に答えてくれました。
小坂先生は、豊富な資料を示しながら約1時間30分間、熱く語ってくれました。概要を紹介します。
わが国の電力システム改革は、電源構成の議論と独立に1995年にスタート

わが国の電力システム改革・電力自由化の議論は、電源構成(原子力・自然エネルギーなどの割合)の議論と独立に1995年からスタートし、事業所への小売りの自由化を徐々に拡大し2005年には契約電力50キロW以上の事業所まで拡大された。その後2007~2008年の2年間、一般家庭まで全面自由化するかどうか議論されたが、コストが膨らみ費用対効果がなく条件整備も間に合わないと見送った。

原発コスト優位は虚構。電力自由化と原発推進は並立できない困難な課題

フクシマ原発事故によって、長年原発を基幹電源としてきたわが国の電力政策が、原発ゼロあるいは限りない縮小と太陽光・風力・バイオマスなど再生可能エネの開発普及へ転換すべきだという地殻変動的動きが起きて、今回のシステム改革になった。
講演する小坂教授(15年6月30日)
ところが、政府・経産省など原発推進勢力は、経済成長と温暖化対策を口実に原発推進に固執しようとしている。しかし、原発が他の電源に比べコスト優位にあるなどということは世界的にはまったく通用しない。わが国でもほとんど虚構だと知られるようになってきた。電力自由化と原発推進は、並立できない困難な課題だ。にも拘らず、政府・経産省は、今回のシステム改革で、原発には手を付けない(基幹電源として推進)まま、一般家庭まで小売りを全面自由化し、発送電分離も行うとしている。こういう改革で、原発と再生可能エネルギーはどうなるのかー避けて通れない課題になる。

「広域的運営推進機関」の役割は重要―全面自由化前に体制・財政などの強化が必要

今回の改革では、今年4月1日にスタートした全国的な電力運営を担う「広域的運営推進機関」の構成と体制が重要な役割を担う。しかし、その体制は100人程度でスタートするというが、重要な「運用部」(需給計画の取りまとめ、需給ひっ迫時対応、地域間連携線の管理、広域機関システムの開発・運用・保守、通信回線の運用・保守など)については、8割が一般電気事業者(大手10電力)からの出向者が占める模様だ。これでは、一般電気事業者を中心とした利害調整組織になることはほとんど予定された道であり、従来からあった「電力系統利用協議会」の延長に位置づけられるものだ。これでは改革になるのか疑問だ。任務の重要性に比してあまりにも体制も財政も貧弱であり、来年度(2016年4月1日)からの全面自由化までに体制も財政も強化が必要と考えられる。

改革のポイント ー 従来の地域独占を「発電」「送配電」「小売り」3部門の別会社に託す計画だが、不安な問題がある

今回の「改革」のポイントとして、これまでの部分自由化では、小
売市場への新電力(新しい発電会社など)の新規参入者シェアは、2011年度現在、自由化された需要の僅か3・6%に過ぎず、大手電力会社による市場の独占構造は基本的に変わっておらず、電力10社間の競争もない。北海道の新規参入も苫小牧にあるサニックスなどごくわずかである。
こうした状況下で、全面自由化がおこなわれる。これまでの大手1
0電力会社による地域独占がなくなり、全国規模で全面自由化に入る。それに伴って大手10電力会社による電気の供給義務もなくなる。しかし電気は、水道などと同じような公共財であり、需要家に対する全国一律のサービス供給が保障されなければならない。「供給義務」から「最終保障サービス」へ転換するとしている。
また、今回の改革では、発電部門と送配電部門、小売り部門の3つ
の部門を法的分離で別会社が運営するようになる。いままでは大手10電力会社が、すべての部門を握っており、法的別会社への分離移行をどのように実現するのか、難しい問題がある。とくに、発電会社が発電した電気を、小売り会社が購入し、需要家(企業や事業所、一般家庭)から電気の購入申し込みを受付けて小売り契約を結んで供給する。供給するにあたって、小売り会社は、徴収した電気料金の中から送配電料(託送料)を送配電会社に払い、さらに発電会社に発電料を払う。需要に見合う電気を供給するのは送配電会社の機能とされている。そうでなければ全国一律のサービス提供が実現できなくなり、地方に電気が届かないとか、電気を買えない人が出るなどの心配も…。
肝心なことは、いままで大手10電力会社が独占してきた送配電施
設を中立公平な送配電会社が担うものにする必要がある。私個人としては、国有化が一番良いと思っている。そうでないと全国一律の送配電サービスが実現できなくなるだろう。その際、広域的運営推進機関が、全国規模で発電各社の発電状況を常時把握し、どの発電会社のどの電気をどこに送配電するかを指示できるようにする必要がある。まさに、広域的運営推進機関の役割と権限は絶大なものが必要となる。だからその体制や財政強化が必要だと思う。(以上は講演を事務局でまとめたもので文責は事務局にあります)

会場での質問からー
講演についての参加者からのいくつかの質問と小坂先生の回答を紹介します。
質問:電気料金は下がりますか 
~ 回答:ドイツやイギリスでは下がっていない。必ず下がるとは言えない。

 小坂先生は、すでに自由化しているドイツやイギリスでは(一時はサービス競争で少し下がったが、)今はむしろ少し上がっている。必ず下がるとは言えないと回答。これに参加者から、白老町は新電力(苫小牧にあるサニックスだと思われる)から何%か安く購入している、下がっていると町では発信していると発言がありました。

質問:電気料金を払った場合、小売り、送配電、発電の取り分はどうなりますか 
~ 回答:3者の配分は不明です 

 小坂先生は、電気料金が小売り会社に支払われた後、送配電会社に送配電料(託送料)、発電会社に発電料が払われるが、その配分は不明ですと回答。

泊発電所の現場は、早期再稼働に向け、安全対策工事に大わらわ
   政府は最終補正予算8億円投じ、岩内町と神恵内村に屋内退避用施設づくり 

 泊原発停止から3年2カ月。3基の維持費に年間800億円余、加えて規制基準の審査にパスするため、毎日たくさんの労働者を雇用して審査基準対策工事に大わらわです。当初600億円と言われた対策費が、900億円、1600億円、今では最終的に2500億円を超えるのでないかとの報道も。6月19日に泊原発の見学会に同行しましたが、海抜16・5㍍もの巨大な防潮堤は完成し、その上は作業用の車が行くかう道路になっています。また、海抜84メールの丘に非常時に原子炉を冷却する1基5000トンの真水をためる巨大な貯蔵タンク3基を建設中。非常時の指揮所となる免震重要棟や重大事故時に格納容器の爆発を免れるため放射性物質を放出するフィルター付ベントの建設工事などなど、原発は停止して3年もたつけど、再稼働に向けた工事が至る所で進められている異様な光景でした。
これと別に国は、放射能放出事故を想定し、昨年は泊村と共和町、今年は岩内町と神恵内村に屋内退避用施設の工事予算8億円を計上、全額国費で再稼働前提、避難対策の名による億単位の税金投入です。20億円も投じた移転用オフサイトセンターの移転新築工事が完成し、近く泊原発から10・4Kmの共和町内に移ります。原発推進のために税金投入を惜しまないやり方に怒り心頭です。(米谷道保)

日本学術会議の提言「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言
―国民的合意形成に向けた暫定保管」について

原発で使い終わった核燃料は、その約5%が核分裂して高レベル放射性廃棄物に変わっています。それを核燃料から取り出して融けたガラスに混ぜて固めたのがガラス固化体です。高レベル放射性廃棄物は全てガラス固化体にして地下300mより深い所に埋めて最終処分とする、というのが日本の方針ですが、実際はその通りには進まず、使用済み燃料が溜まり続ける一方です。
そこで原子力委員会は2010年に学術会議に核廃棄物の処分について国民にどのように説明したらよいか審議してほしいと依頼し、学術会議は2012年に「回答」を行っていましたが、今回の提言は回答の内容を政策として反映しやすいように、より一層具体化して2015年4月に発表したものです。
ポイントは二つあって、一つは政府は地層処分することにして処分地探しを始めていますが、ちょっと待て、ということです。もう一つは処分地探しでつまずいているのは国民合意がないからであり、どのようにして合意形成を図るか、ということです。
第一のポイントは、地層処分に固執せず当面は「暫定保管」することです。
保管方法については、使用済燃料もガラス固化体にした高レベル放射性廃棄物も地上で保管する。この場合、水を満たしたプールに入れて冷やす水冷ではなく、空気で冷やす空冷(乾式とも言う)で行う。現在は使用済燃料はほとんどが水冷で、ガラス固化体は全て空冷で保管されています。
保管期間は原則50年とする。最初の30年で最終処分のための合意を形成して最終処分地の候補地を選定し、その後の20年以内に処分場を建設する。暫定保管が50年以上続いてしまう場合は、必要ならば施設・設備を更新して対応する。
第二のポイントは、国民の意見を反映した政策を作るための組織体制を作ることです。「高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会(仮称)」を設置し、そのもとに「核のごみ問題国民会議(仮称)」と「科学技術的問題検討専門調査委員会(仮称)4」を置く。委員の中核メンバーは原子力事業の推進に利害関係を持たない者とし、国民会議は市民参加に重きを置いて原子力発電関係者に対する国民の信頼回復を図る。
なお、学術会議は「現時点での最有力は地層処分」と判断しており、調査委員会は暫定保管及び地層処分の施設と安全性に関する科学技術的問題の調査研究を徹底して行う、としています。(石崎健二)