高橋 はるみ様
2015年7月24日
原発問題全道連絡会 大田 勤
黒澤幸一
春木智江
米谷道保
泊原発の再稼働を容認せず、即時廃炉を求め、再生可能エネルギーの本格的普及に転じるよう道政のイニシアチブ発揮を求める申入れ
福島原発事故から4年余が経過しましたが、いまだに11万人余の福島県民が避難を強いられ、汚染水の流出もとまらず、事故収束の見通しさえ立っていません。原発と人間社会が共生できないことは明白です。
2012年5月に泊原発が停止して3年余、2013年9月に関西電力の大飯原発3、4号機が停止してまもなく2年になりますが、この間道内でも全国でも電力不足は起きていません。人間社会と共生できない原発は、再稼働せず、直ちに廃炉にし、安全な再生可能エネルギーに軸足を移すべきです。
しかし、政府・経産省は、昨年4月に閣議決定した中長期のエネルギー基本計画にそって、2030年度の電源構成比率を、原発20~22%、石炭火発26%とする一方、再生エネは22~24%にとどめようとしています。とりわけ太陽光は7%、風力は1.7%など現在の低い水準に抑えこもうとしています。まるで福島原発事故などなかったかのような原発推進であり、到底容認できません。
このような政府・経産省の方針のもとで北海道電力は、泊原発全3基の早期再稼働に躍起となり、その維持費に毎年800億円余、規制基準突破のための対策費には2500億超とも言われる巨額の資金を投入する一方、再生エネ、とりわけこの間設立認可の申し込みが急増した太陽光発電と今後積極的普及が期待される風力発電に対して買取り制限を導入、再生エネ普及に背を向けています。
そのうえ政府・経産省は、太陽光発電について、電気の供給量が需要量を上回ると見込まれる場合における出力制御ルール等を変更する省令「改定」(今年1月22日公布、1月26日施行)を行いました。これを受けて北電は、太陽光発電の認可申請にあたって、発電出力10キロワット未満の一般家庭用についても、今年度(2015年4月1日)から、年間30日間は無補償とする「出力制御システム導入の合意書」締結を押付けていると聞いています。これは太陽光発電の普及を大幅に抑制するものであり重大です。
このような政府・経産省の原発推進、再稼働ありき、再生エネ(とりわけ太陽光、風力)買取抑制とこれに追随する北電の理不尽なやり方は容認できません。
いまひとつ重大な問題は、原発労働者の労働条件の問題です。福島第一原発事故の廃炉作業は難航し、放射線量の高い中で被ばくしながら困難な作業を続け、累積被ばく線量が上限を超え、次第にベテランの労働者が手薄になってきているとのことです。このため累積被ばく線量の上限を大幅に引き上げる動きが報道されています。一方、福島第一の原発労働者は、元請、下請け、孫受け、ひ孫請けなど、何重もの下請け構造のもとで被爆しながら危険手当さえきちんと支払われないばかりか、最近は死亡事故が増えていると報道されています。
泊原発では現在、再稼働に向けて規制基準をクリアするための作業で多忙を極めていると聞いていますが、再稼働すれば、現場の労働者には、被ばくしながらの作業が強いられます。原発労働者を被ばくから守り、労災事故の発生を未然に防止するよう作業環境の整備に努めるとともに、劣悪な労働条件の改善向上をはかることは泊原発においても重要な課題となることは明らかです。
いま政府・与党の中から、福島原発事故の損害賠償や支援措置を、事故からまる5年あるいはまる6年で打ち切る動きが出ています。一方、自主避難者に対する支援の打ち切り、縮小の動きも強まっています。北海道への自主避難者も例外ではなく、不安を与えています。
以上を踏まえ、次のことについて、道政がイニシアチブを発揮するよう要請します。
1、泊原発の再稼働を容認せず、即時廃炉を決断するよう国と北電に求めること。
(1)泊原発は全3基とも再稼働を容認せず、即時廃炉を決断するよう求めること。
(2)泊原発の再稼働についての地元了解が求められる場合には、①少なくとも周辺30キロ圏内9町村の合意を条件とすること ②安全に避難できる保障がない現状の避難計画のもとでの再稼働は容認しないこと ③避難計画の安全性の検証には、対象地域の全住民参加での実動訓練によって検証すること。
2、再生エネ自給率100%の目標を掲げ、早急に大規模な普及に転じること。
(1)再生エネ自給率100%を長期目標に掲げ、今春の知事選で貴職が公約した「3分の1は再生エネで」の公約を今任期中に実現する年次計画をたて毎年計画的に推進すること。
(2)(1)の推進のために、国の省令「改正」(2015年1月22日公布、同26日施行)を受け、北電が行っている太陽光発電の接続可能量を117万kwとする制限と追加接続にあたっての出力制御(30日間無補償)の「太陽光発電設備の連系にかかる合意書」の押しつけの撤回を北電に求めること。
(3)国の2030年度の電源構成比率については、原発ゼロを前提とするよう国に見直しを求めること。そのためにも、原発をベースロード電源と位置づけ、核燃サイクルの着実な推進を明記した国の中長期のエネルギー基本計画(昨年4月に閣議決定)を、原発・核燃サイクルから撤退することを柱に位置づけるよう根本的な見直しを求めること。
3、原発労働者を被ばくから守り、労働条件の改善・向上をはかること
(1)泊原発を抱える北海道は、福島第一原発の廃炉作業に従事する労働者の問題は他人事ではなく、累積被ばく線量の上限値の引き上げなど行なわないよう国に求めること。
(2)泊原発で働く労働者の労働条件や労働実態がどのようになっているのか、道として、元請、下請、孫請けの労働者の現状や派遣労働者の有無と労働条件などを把握し、必要があれば機敏に是正を求めるべきです。適宜立ち入り調査や聞き取りなどして把握に努めているのか、明らかにすること。
(3)昨年2月10日に泊原発構内で起きた下請会社の労働者が重傷(顔面骨骨折、脳挫傷など)を負い1カ月余も入院加療した労災事故の労働者は、その後後遺症なく回復し、雇用を確保されたのか、明らかにすること。
4、自主避難者への支援の打ち切りに反対し、国に拡充をもとめること
政府・与党による福島原発事故被災者と自主避難者への支援の縮小・打ち切りに反対し、国に拡充を求めるとともに、道独自にも支援の継続・拡充をはかること。
以上