2015年5月24日日曜日

原発問題連絡会ニュース 第260号2015年5月20日

チェルノブイリ原発事故から29年
「線量放射線被ばくの影響を考える」
学習講演会に40数人
― 4月27日
原発問題全道連絡会・国民大運動北海道実行委主催 ―

 チェルノブイリ原発事故から29周年の今年4月27日、札幌エルプラザ2階環境研室で18時30分から約2時間、「低線量放射線被ばくの影響を考える」学習講演会が開かれました。原発問題全道連絡会と軍事費を削ってくらしと福祉・教育の充実を!国民大運動北海道実行委員会が主催。加盟団体構成員のほか一般市民など40数人が参加、最後まで熱心に視聴していました。
講演する柏樹力さん(’15年4月27日)
 講演会は、最初にDVD「チェルノブイリ28年目の子どもたち」を約20数分上民医連・北海道勤医協中央病院勤務の柏樹力さん(放射線技師)が、パワーポイント
  を使って「原発事故と健康被害~事故から29年目チェルノブイリ被害の全貌から考える」と題して約50分間熱く語りました。
講演で柏樹さんは、①日本では、福島原発事故直後から「ただちに健康に被害が出るものではない」と繰り返し宣伝されたが、その意味は「急性の放射線障害は起きない」というものであり、真相は低線量領域の影響も内部被ばくの影響も未解明であり今後の課題であること、②チェルノブイリ原発事故が健康と環境に及ぼした影響は、岩波書店が2013年4月26日に初版を刊行した「調査報告 チェルノブイリ被害の全貌」に詳しいとして、チェルノブイリ事故後、甲状腺がんや乳がんの発病率の向上、ガンだけではない影響として乳児死亡率、周産期死亡率、先天性障害ダウン症、出生時性比異常(女児が男児に比べて減少)なども起きていることなどを紹介。 ③さらに、NPO法人知的人材ネットワーク“あいんしゅたいん”の宇野賀津子氏(がんの生きがい療法に携わってきた科学者)の提唱する「低線量放射線を超えて 福島・日本再生への提案 ~ 健康で、安心して生きていくために」を映して被ばくの影響を防ぐには、イ、放射性物質の体内への取り込みを少なくする、ロ、生まれつき持っている免疫能力を弱めないように、健康に生活することが必要だという見解を紹介。あわせて2014年5月12日「市民と科学者の内部被ばく問題研究会」が発表した「日本政府の4つの誤り」―①放射線被ばくで病気になるリスクを1ケタ小さく見積もっている(被ばくの過小評価)、②被災区域の放射線被ばく量を極めて小さく見積もっている(被ばくの量の過小評価)、③小児甲状腺がんを被ばくと関係ないと断定している(被ばくの害の非科学的否定)、④がんだけでなく様々な病気が増える恐れがあることを無視している(チェルノブイリの教訓の無視)を指摘し、低線量被ばくの影響を真剣に考えるべきだと訴えました。
質疑の中で、ある参加者から、「福島ではたくさん鼻血を出した
人がいるという話を被災地で私も聞いたが、配布された資料集にある『放射線被ばくの理科・社会』では、低線量被ばくでは鼻血は出ないと否定しているようだが、講師はどう考えるか」と質問があり、柏樹力さんは「私も今朝資料集をもらって目を通したばかりだが、納得できないものを感じている」と答えました。
このほか、「福島県の三春の滝桜を見に行ったが、モニタリングポストの放射線量が0・12と表示されていた。観光客がわんさと押しかけていたが、大丈夫なのか」などの質問も出され、いずれにも柏樹力さんが丁寧に答えました。
閉会挨拶で、米谷道保原発連代表委員は、「美味しんぼによる『鼻血騒動』の問題は、低線量放射線被ばくの影響をめぐって一大論争になっていると聞いています。私たちも『放射線被ばくの理科・社会』の著者を迎えた学習会を計画出来ればと思っています」と述べました。
【注】いわゆる漫画「美味しんぼ」(2014年春発行 作者・雁屋哲氏)による「鼻血騒動」は、漫画の中で「福島原発事故による被ばくの影響で『鼻血』を出している人がたくさんいる、福島は人が住めない放射線量の高い地域になっているとして、福島県民に『避難する勇気を持て』と扇動、原発反対の世論と運動をも分裂させる事態を招いたもの。今回の学習講演会での質疑は、この影響が北海道にも及んでいることを示すものと思われ、北海道でも学習を深める必要があると感じました。
なお、この学習講演会から約10日後の5月6日、「道新」が「美味しんぼ『鼻血騒動』に反論する 雁屋哲さん」とする特集を組んでいます。この点からも、何が真実なのかしっかり学習を進めることが求められています。前記の「放射線被曝の理科・社会」なども学習してはーと感じています(裏面参照)
4・27日チェルノブイリデー
昼休み宣伝行動
― ふくしま復興国会請願署名41筆、
          支援募金1300円など

 4月27日昼休み、原発問題全道連絡会と国民大運動道実行委員会は、気温がぐんぐん上がり正午には25℃に達し、真夏を思わせるほど暑い中、札幌駅北口駅前広場でチェルノブイリ29周年メモリアル行動の昼休み宣伝・署名行動に取組みました。
道労連、新婦人道本部、共産党道委、原発連事務局などから15人が参加、ふくしま復興共同センターが取り組んでいる国会請願署名とフクシマ復興支援募金を訴えました(写真)。
署名する市民('15年4月27日)
署名は、「福島原発事故収束宣言の撤回」、「福島の原発全10基の廃炉と全国のすべての原発の再稼働反対、即時ゼロの決断を」、など7項目。「泊原発の再稼動反対も入っているんですか」「原発はダメですよ」「共和町から来たのですが、泊原発の地元なので声を上げにくいが、とても不安です。こうやって運動してくれるとありがたいです」など、足を止めて30数分間に41筆の署名が寄せられました。ふくしま復興共同センターへの支援募金は2人から1300円が寄せられました。
“安全対策や廃棄物処分など疑問いっぱい”
”やっぱり原発はなくしていくべき“
~ 民青道委員会が泊原発のPRセンター
“とまりん館”見学ツアー ~
 5月16日、民青北海道委員会の青年・学生6人で泊原発のPRセンター“とまりん館”の見学に行きました。とまりん館では、職員の引率で泊原発の核分裂の仕組などの展示施設やこの間の「安全対策」の説明を受けました。




大学で化学を勉強しているAさんは、「安全対策で質問しても、メーカーから詳しいことは説明されていないという返答もあり、知りたい情報が与えられないなかで、安心と言われても心配」「核廃棄物についても、今の政府だったら地元の同意がなくても無理やり埋めてしまいそうで不安」。以前は原発も必要だと思っていたという学生のBさんは、「(原発は)費用対効果がいいというが、安全対策のこととかを考えれば間違いだと思った。初めて行ったけど、びっくりする内容だった」という疑問や不安な感想が次々出されました。
今回のツアーを計画した学生のCさんは、「原発はどこか、誰かを、犠牲にしなければいけない設備だということがよくわかった。だから反対して無くしていくべきだと思った」と話しています。
“福島県民の被ばく線量で、
被ばくが原因の鼻血は出ない”
―「放射線被曝の理科・社会 
~4年目の『福島の真実』」(児玉一八・清水修二・野口邦和著)かもがわ出版)世論を分裂させた漫画「美味しんぼ」の『鼻血』騒動」を厳しく批判 ― ご一読を!
 昨春来、漫画『美味しんぼ』「福島の真実」編の「鼻血」騒動に端を発した放射線被ばくの影響に関する世論の分裂は、道内にも及んでいます。昨秋発行された「放射線被曝の理科・社会 ~ 4年目の『福島の真実』」(児玉一八・清水修二・野口邦和著)は、『美味しんぼ』騒動に明快な見解を示して厳しく批判しています。その一端を紹介し、ご一読をおすすめします。


 同著では、第1章「低線量被ばくをめぐる論争を検証する」で野口邦和氏が、「都合の良いデータだけで主張を組み立てるのは科学ではない」として、航空機乗務員の宇宙線被ばくの問題などの研究を紹介したうえで、「福島は人が住めないのか」の小見出しを立てて、漫画『美味しんぼ』「福島の真実」編で「福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気を持ってほしい」と主人公の父親に語らせる場面も、原作者が「福島県」=「管理区域」=「危ない」と考えているからでしょう」として、この問題について解明し、福島県内で放射線管理区域の基準値、3カ月当たり1・3mSv、年あたり5・2ミリSvを超えるような場所はごく一部の極めて狭い範囲に限られ、「危ないところから逃げる勇気を持ってほしい」と全県民によびかける『美味しんぼ』「福島の真実」編は現状認識に置いて不正確極まりなく、あまりに大げさであり政治的すぎます、と厳しく批判しています。さらに同氏は、中通地方の県北地域で空間線量率の高いと考えられる伊達市でのガラスバッジによる外部放射線量の測定結果を示し、全市民の81・2%に相当する5万2783人が2012年7月~2013年6月までの1年間継続して測定した結果、年間5mSvを超えた市民は全体の0・1%、人数で50人ほどだと紹介しています。
「放射線被曝の理科・社会」の表紙
第2章「『福島は住めない』のか」では児玉一八氏が、血液と出血のメカニズムを明らかにしたうえで、「どれくらいの放射線を浴びると、血小板の減少に伴って鼻血が出るなどの症状が出るようになるのでしょうか」と問いかけ、「鼻血が出るのは、かなり大量の放射線を浴びた時です。どのくらいの被ばくかというと、2Sv(2000mSv)以上と言われています。・・・放射線の大量被ばくで鼻血が出るというのは、全身の出血症状や重篤な感染症がいっしょに出てくる、きわめて厳しい状態です。鼻血だけが出る、というものでは決してありません」として、根拠となる複数の文献を明示しています。その上で「それでは、2Svといった大量の放射線を一気に浴びた福島県民がいたのでしょうか。私は、外部被ばく積算線量の推計などの結果を見れば、鼻血が出るほどの被ばくをした県民がいなかったのは明らかだと考えています」「『美味しんぼ』23回に登場する『専門家』もそうですが、放射線被曝で鼻血が出るメカニズムを無理やり考え出そうという人がいるようです。しかし、そこには被曝量が全く見積もられていません。被曝量がどのくらいであるかを度外視して、放射線被ばくの健康影響を論ずることはできないのです」と明快です。
 また同氏は、「放射性物質による汚染で長期間に住民が帰還できない地域があることは事実ですが、福島県全域が『住めない』とレッテルを張るのは、差別や風評を煽って被災者を苦しめる『加害』以外の何物でもありません」「福島県民の被ばく線量で、被ばくが原因の鼻血は出ない」ばかりか「下痢も起こらない」ことを解明し、「放射線の健康影響は『何もわかっていない』のではない」「放射線被ばくで鼻血」という「『美味しんぼ』最大の問題は『福島には住めない』の扇動」にあると厳しく批判しています。その上で児玉氏は、「原発事故で放出された放射性物質と共存しながら暮らしていかざるを得ないという厄介な状況に置かれてしまった福島県民の皆さんたちの方が、放射線や放射能について福島県外の人たちよりも学習し、科学的な判断に基づいて住み続けるという選択をされている方が多いということです」と書いています。あらためて「放射線被曝の理科・社会」のご一読をお勧めします。(米谷道保)

・26チェルノブイリデー
☆5月26日(火)12時15分~
   ☆JR札幌駅北口駅前広場(西側)
   ☆宣伝とふくしま復興国会請願署名
  ー ハンドマイク宣伝と署名行動 

 「電力システム改革とは何か―を考える」学習講演会
 ◇日時  6月30日()18時30分~20時30分
◇会場  札幌エルプラザ2階環境研修室
◇講師  小坂直人さん(北海学園大学教授)  ―資料代300円―
 ◇主催    原発問題全道連絡会、国民大運動道実行委員会