2015年11月22日日曜日

原発問題連絡会ニュース 第266号2015年11月20日

「大間原発の何が問題か」
学習講演会に70数人
― 森越清彦弁護士 法廷思わせる熱弁2時間
 ~ わかりやすいと好評 ―

 大間原発の建設中止へ、札幌・道央圏から支援の運動を強めようと、大間原発訴訟弁護団共同代表の森越清彦弁護士を講師に10月31日、札幌市内で学習講演会が開かれました。主催は、道原発連と国民大運動北海道実行委員会。森越清彦弁護士は、ときどき参加者に質問し回答を求めるなど法廷を思わせる熱弁をふるい、大間原発の問題点や核のごみの再処理と核戦略、大間原発訴訟の展望などを語りました。

世界にも例がないフルモックス原発の危険性とは? 
                          事故になれば札幌にも影響がおよぶ

 森越清彦弁護士は、原発の原料となるウランとプルトニウムの核分裂から話をはじめ、電源開発株式会社が建設中の大間原発は、実験炉で検証もせず、いきなり出力138・3万キロワット、日本最大級の商業炉でウランとプルトニウムの混合酸化物燃料=モックス燃料を全炉心で燃やそうという世界にも例がない危険なもの。例えば、「家庭用の灯油ストーブを改良してガソリンを燃やせるようにしました。安全かどうか実験はしていませんが、計算では大丈夫です。灯油の代わりに、ガソリンを1割、2割、3割、5割…とふやし、最後は全部ガソリンで燃やす。実証試験もしないでいきなりやる。皆さん賛成できますか」と問いかけ、参加者が「とても賛成できません」と答える問答形式の語り口もまじえて講演。「とても賛成できないですよね。これが大間原発でやろうとしていることです」「プルトニウムは、ウラン235の20万倍も毒性が強い」「これが事故を起こし、夏の南風に乗って北上すれば、札幌市も安全とは言えないでしょう」と大間原発のフルモックス原発の危険性をわかりやすく語りました。

電源開発の示す津波の高さ、地震の揺れの大きさ、火山対策は納得できません

大間原発問題学習講演会
(2015年10月31日)
さらに森越弁護士は、1993年7月奥尻島を襲った南西沖地震では、津波の高さは16・8㍍、奥尻島ではその津波が高さ30m余までも崖を駆け上がり大きな被害を出した。その時函館もすごく揺れました。ビックリしました。それなのに大間原発の津波の高さは最大6・8㍍という想定、おかしいでしょう。また、大間原発も泊原発も、那須火山帯の真っただ中に位置しています。こんな危ないところですーと。

電気が足りているなか、大間原発で発電した電気は、
                               原発保有の9電力が買取るとは!

次に森越弁護士は、電気が足りている日本で、原発は本当に必要なのか?―に話を進め、この間、日本ではフクシマ第一原発6基の廃炉が決まり、2013年9月から48基の原発がすべて停止してきたけど、電気は足りています。これ以上原発は必要ないはずだが、大間原発を建設するという。いったい、大間原発で発電した電気はどこで使うのでしょうか―と問いかけ、配布された資料を示して、以下の点を明らかにしました。
モックス燃料を燃やして発電する大間原発の電気は、原発を持っている9電力会社が、使用済み燃料を出す量に比例する形で買い取ることになっているーことを明らかにしました。資料には、9電力会社の原発設備容量と大間原発が発電する電気の買取り量がほぼ比例していると読み取れる表が示されていました。大間原発の電気は、9電力が核のごみの再処理量に比例して買い取ってもらうというのです。

核抑止力の立場から日本で原発を動かし続けるとは!

ついで森越弁護士は、何故、安倍政権は原発を再稼働するのでしょうか、と話を進め、原発を動かせば、その使用済み核燃料のなかに1%のプルトニウムが出来ます。プルトニウムは、ウランに混ぜれば原発の燃料になるだけでなく、原爆の材料にもなります。日本の原発から、すでに45トンとか50トンものプルトニウムがたまっているのです。原発は、ウラン濃縮技術を確保するとともに、核兵器を日本でも保有できるようにしておくという、核抑止力の見地から、原発を動かし続ける必要があると公言する石破さんのような政治家がいます。原発を核戦略の一環から動かそうという。とんでもないことですーと告発。

福井地裁の大飯原発運転差止の画期的判決 
                                           ~ その意義は大きい

さらに森越弁護士は、どうやって原発をやめさせるか、大間原発をやめさせるか―に話を進め、大飯原発の再稼働差止の判決を下した福井地裁判決では、人格権こそ最も重要な権利であり、原発を動かし電気を使う経済活動は、人格権より劣位にあるのだと明快に断じ、国冨というなら、人間が国土で安全に安心して働き暮らし続けることこそ最大の国冨であり、その上に位置する国富などないと明快に判決を下したと強調しました。 

司法も結婚退職など、世界の進歩の流れに反する判決は出せない  

最後に森越弁護士は、司法が原発はやめるべきだという判決を下すには何が必要かと問いかけ、かつて結婚退職制という憲法第24条の男女平等に反する不平等な制度があったが、今は女性差別撤廃条約があり、男女共同参画制度~若干問題も感じる点もあるがーもできており、今司法が結婚退職は当然だなどという判決は出せません。司法といえども、世論と運動の広がりを反映せざるを得ないのですと述べ、次のように語りました。

3・11後の原発訴訟~かつてない原告数。
                              司法がストップの判決を書ける大きな運動を

3・11後、原発訴訟がたくさん行われています。かつて原発運転差止訴訟などは、原子力安全・保安院、今は規制委員会が、基準をクリアしているとして再稼働や運転を認めれば、司法も専門的なことが詳しくわかるわけではないから、再稼働や運転を認める判決を下してきた。しかし、3・11後行なわれているたくさんの原発訴訟では、そのような判決を当たり前とすることは、過半数の国民の声に反し簡単なことではない。
大津地裁・高浜原発では、運転差止仮処分申請は却下されましたが、判決文をよく読むと、再稼働しても安全だから仮処分を却下したのではなく、緊急性がないということを仮処分申請却下の理由にしているのです。要するに、審査の中でいろいろな問題点が指摘されており、規制委員会が、再稼働を容認するような状況にはないのだから、再稼働差止の仮処分を求めなければならない緊急性はないということを理由にしているのです。安全だから却下したのではないのです。世論を無視しえないということだと考えられるのです。
だから、司法が再稼働を容認できないような社会的状況を広げ、司法が安心して国民の世論の側に立った判決を書けるような運動をひろげることが大事だということです。3・11後の訴訟は、玄海原発の原告は1万人に達しようとしているし、大間原発も第7次募集までの原告数は1063人となっています。泊原発訴訟も1333人ですか、こんな多数が原告になった裁判はなかったのです。大いに確信にして止めるまで頑張ろうということですと締めくくりました。(文責・米谷)

2015年度全国交流集会in青森に北海道から5人、
                                  全体で240人参加  
フクシマに連帯し、再稼働ストップ、
       原発・核燃サイクルから撤退の合意形成を!

「『原発・核燃からの撤退』の合意形成を!原発再稼働STOP!全国交流集会in青森」が10月18日青森市内で開催され、全国各地と青森県内から240人が参加。午前中の特別報告と問題提起を受けて、午後から討論・交流が行われました。午前の大間原発の活断層問題についての立石雅昭新潟大学名誉教授の特別発言と伊東達也全国センター筆頭代表委員の問題提起の骨子を紹介します。

大間原発の活断層は現地調査での検証が必要 
                     ~ 立石雅昭新潟大名誉教授が特別報告 

立石雅昭新潟大名誉教授は、映像を駆使して報告。大間原発は、12~13万年前の段丘面変形と6000年前以降の地震性隆起が、中田高氏や渡辺満久氏らによって指摘されていることを解説。最後に同氏は、研究者と地元住民団体の共同作業で、地形図をもとに、これらの指摘が正しいかどうか、現地調査で検証することが必要だと力説しました。

原発再稼働の暴走は許されない。
   合意形成は福島の現地を見ることから 
                            ~ 伊東達也筆頭代表委員が問題提起

伊東氏は最初に、福島原発事故の現状をリアルに語り、被災者や被災地の対策を棚上げしての原発再稼働はあり得ない。もともと日本の原発立地は世界一危険で、その構図は変わっていないと述べ、これでは「原発大事故 次は日本」でなく「次も日本」となりうる情けない情勢だと告発。
最後に同氏は、ここ約2年間「原発ゼロ」を実現したが、再稼働を阻止するところまでには、まだ合意形成は進んでいない。原発再稼働についての世論には、福島第一原発の経験・教訓から「まだ大きな隔たり」がある。この大きな隔たりに橋を架ける対話・議論が求められている。この合意形成は、日本経済の原発依存体制を変革する事業と不可分のものと述べ、合意形成のうえでは、入口の対話・議論は深く広いが、個人の認識は、聞き知ること、読み知ること、見て知ること、フクシマに行って知ることから始まる、「百聞は一見にしかず」だと強調しました。
午後から8人が発言、北海道から米谷道保氏が「核のごみの処理・処分問題について」報告。伊東達也氏のまとめのあと、青森からのアピールを参加者の拍手で確認。閉会挨拶で柳町秀一氏が、次回の交流集会開催地について、2カ月後の全国センターの総会で確認すると報告、閉会しました。

原発ゼロの願い強く
  2回の昼休行動で道議会請願署名に次々サイン

9月からスタートした「原発も核のごみ捨て場もない北海道の実現を求める」道議会請願署名行動は、この間10月26日のチェルノブイリデーと11月11日のイレブンアクションの2回取り組まれました。チェルノブイリデーは6団体から8人が参加し、JR札幌駅北口で署名49筆、イレブンアクションは、紀伊国屋書店前で34筆が寄せられました。
福島市上浜町の住所を書いた男性は、「福島の現実は、皆さんが思っている以上に厳しいんだ」と言いながらサイン。札幌市内の女性は何人もが「原発はいらないです」「やめてほしいです」「道知事は受け止めてほしい」とサイン。母親連絡会の柴田郁子事務局長は「原発いらないと10人以上がサインしてくれた。先日の戦争法廃止の署名の時よりたくさん署名してくれた」「やってよかった」と語っていました。(写真)。

泊原発3号機の重大事故を想定した
                         原子力防災訓練を視察して

道原発連は10月21日、道と泊原発30キロ圏内13町村が主催する2015年度北海道原子力防災訓練の現地調査活動を行いました。今回調査したのは、移転した新防災センター(新オフサイトセンター)2階の指揮所運営と岩内町の屋内退避所、寿都町の横間漁港での巡視船など船による避難訓練、倶知安町中央公園と寿都町寿都温泉ゆべつの湯での避難途中の放射能検査と模擬スクリーニングなど。今号には一部を紹介します。
多数の道民が再稼働に反対しているのに、何故再稼働を想定した訓練を行うのか?―

第1は、泊原発3号機で震度6強の内陸型地震で泊原発3号機で放射性物質が漏えいする事故が発生したとの想定で行われました。しかし、多くの道民が泊原発の再稼働に反対し廃炉を求めています。使用済み燃料貯蔵ピットに貯蔵中の使用済み燃料が重大事故で放射性物質漏れを起こしたと想定する訓練ではなく、なぜ停止している泊原発による稼働中の重大事故を想定するのか、道知事は泊原発の再稼働について、原子力規制委員会が審査中であり、予断を持って再稼働の是非を言える段階ではないーと繰り返し述べているのに、防災訓練で再稼働を想定するとはどういうことか、再稼働を容認する考えなのか、疑問を感じました。これで原発周辺町村住民の納得が得られるでしょうか。

参加予定住民は30キロ圏内住民のわずか1%
  とても避難と避難計画の実効性の検証にならない

 第2は、今回の訓練で避難に参加する予定の住民は約800人と想定されていました。実際にはその数を下回っているようでしたが、800人としても30キロ圏内住民の約1%に過ぎません。要配慮者の避難訓練も、配慮者施設は約250施設ありますが、避難の通報連絡を受け、例えば泊村特養ホーム「むつみ荘」から泊中学校に避難している要援護者は2名の想定で、むつみ荘の職員2名が介助し、自衛隊ヘリに4名乗って黒松内防災ステーションに避難する訓練でした。しかし、むつみ荘の要配慮者は59人、職員64人もいます。ヘリ1台で2名だけ搬送(避難)する訓練で、実効性の検証などとてもできるわけがありません。手順の訓練ばかり繰り返しても実効性の検証は不可能です。やはり全住民参加の訓練で実効性を検証すべきではないでしょうか。

傷病者搬送訓練(緊急被ばく医療訓練)― 予定したヘリが緊急搬送で出動したから中止とは?

泊発電所内で放射線被ばくした負傷者を岩内協会病院(初期被ばく医療機関)に搬送、治療して岩内港フェリー埠頭からヘリコプターで札幌医大病院(第2次被ばく医療機関)への搬送を想定していました。ところが、札幌から副知事がヘリコプターで新オフサイトセンターに駆け付け、現場で指揮をとる予定だったが、そのヘリコプターが救急搬送で出動する事態が起き、ヘリで来られなくなった副知事は車でオフサイトセンターに駆けつけることとなったという。想定外の事態だったが、代替ヘリを確保しておらずヘリによる札幌医大への搬送訓練は中止に。代替ヘリを確保する計画をもたない訓練の弱点が露呈。手順確認を中心とする訓練といえ、あまりにもお粗末では?

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「電力自由化とは何か」学習講演会 
~ 電気料金、再生可能エネルギーはどうなるか ~   
◇日時  11月25日(水)18時30分~ 
◇会場  札幌エルプラザ2階環境研修室


 原発問題全道連絡会 
第25回総会開催のご案内
☆日時  2016年1月23日(土)
午後1時30分~午後4時(予定)