2017年10月25日水曜日

原発問題連絡会ニュース第289号2017年10月20日


10・9「STOP再稼働!

さようなら原発北海道集会」に2500人

―「自然とともに生きるなら原子力なんていらない」をアピール ー


 10・9「STOP再稼働!さようなら原発北海道集会」が10月9日、札幌市大通公園西8丁目広場で行われました。全道から2500人(主催者発表)が集まり「自然とともに生きるなら原子力なんて必要ない」とボードを掲げてアピールしました。


  集会は午後1時開会し、さようなら原発北海道実行委員会の呼びかけ人小野有五北大名誉教授、西尾正道国立がんセンター病院名誉院長、麻田信二道生協連会長の3氏があいさつ。小野有五氏は、泊原発の周辺の地質や地層について北電の主張には誤りがあり、再稼働審査の見通しが立っていない、原発がなくても北海道の電力予備率は全国一高く電力不足の心配はない、泊原発は再稼働せず廃炉にするのが当然だーなどと訴えました。


続いて、上田文雄弁護士が来賓あいさつで、今度の総選挙は、戦争させない市民の風・北海道が、昨年の衆院5区補選での野党共闘の大善戦も踏まえ、野党に候補の一本化を働きかけ、今回道内で立憲民主党、共産党、社民党が、野党の統一候補の一本化と相互支援、①安保法制、共謀罪法の廃止をめざす、②立憲主義と民主主義の回復をめざす、③憲法9条の改定に反対するー協定書を交わし、候補の一本化に合意しました。画期的なことで、なんとしても全選挙区で勝利し、北海道から安倍政権を退陣に追い込もうと力強く呼びかけました。
道原発連は「やめよう とめよう 原発」のぼりを掲げて最後まで元気にデモパレードに参加しました。



“原発問題を争点に押し上げ、
 安倍政権に「レッドカード」!”などかかげ

10月15日「住民無視の原発再稼働をただす
            全国交流集会福井」を開催
―原発問題住民運動全国連絡センター設立30周年記念 ―
 
 
今年の全国交流集会は、安倍首相による大義なき臨時国会冒頭の衆議院解散で、10月10日公示、同22日投票で突然総選挙が行われる真っただ中での開催となりました。全国交流集会には、毎年原発立地県を中心に全国から200~300人が参加しますが、今年は総選挙の影響で約80人が参加、北海道から米谷道保代表委員一人でした。概要をお知らせします。 

  今号では、井戸謙一弁護士による記念講演「原発訴訟と司法の責任」と伊東達也筆頭代表委員による「全国交流集会への問題提起」を中心に報告します。集会アピール「『原発銀座』―若狭湾からのアピール」は、別刷りでこのニュースに同封します。閉会挨拶で新潟県の立石雅昭代表委員が、来年の全国交流集会を新潟県で開催すると発表、多くの参加を呼びかけました。
《伊東達也筆頭代表委員の「全国交流集会への問題提起」骨子》
 ☆今年の全国交流集会めぐる情勢と集会の重要な意義

   突然の解散総選挙で総選挙戦の真っただ中で行われることから、この5年間の安倍内閣のフクシマ切り捨て、原発推進、海外輸出、核燃サイクル推進の暴走政治に対し、レッドカードを突きつける重要な意義があること、また、開催地の福井県は原発と関連施設が15も集中立地する原発銀座であり、関西電力の高浜原発3、4号機に続き大飯原発3、4号機も再稼働されようとする中での交流集会であり、住民無視の原発再稼働をただす点でも重要な意義があるなどと強調されました。

 ☆3本の中心スローガンを掲げた交流集会

 
   続いて、交流集会が掲げる中心スローガンとして、①原発問題を総選挙の争点に押し上げ、安倍政権にレッドカードを! ②命と暮らしを脅かす原発再稼働はあり得ない! ③国と電力会社は、福島第一原発事故の加害責任を果たせ! の3本が提案されました。

 以下、6点にわたって簡潔な報告提案が行われました。

(1)原発問題を総選挙の争点に押し上げ、安倍政権にレッドカードを!
 
   北朝鮮を挑発する安倍政権の圧力ばかり強調する危険な戦争瀬戸際政策の愚策を、丹羽宇一郎元中国大使の指摘(「日刊ゲンダイ」10月6日付)を引用して解明するとともに、原発問題だけでもレッドカードを突きつけなければならないと、福島原発事故の加害責任を果たさず、原発再稼働、原発輸出へ暴走、研究開発のない核燃サイクル政策を強行し、検証なしの “もんじゅ”の廃炉と「高速炉」開発、竣工延期24回目が必至の六ケ所再処理工場のなし崩し建設、高レベル放射性廃棄物最終処分場選定のための「科学的特性マップ」の公表―などを厳しく告発しました。
(2)原発事故から6年半―「転換期を迎えたフクシマ」  
 6年半の今の深刻な実態とそれを踏まえた中長期を見据えた支援策について、新しい提案が行なわれました。帰った人、帰れない人、県内に住み続けている人、それぞれの事情に応じた中長期の支援策が必要であり、被害が続く限り賠償される仕組みづくりが求められていること、そのために今年春からの3つの避難者集団訴訟の判決で明らかな「加害者である国と東電の責任」による解決を求め続けることも重要ーなど、事故から6年半、「転換期」を迎えたフクシマの事情に見合った新たな運動が提起されました。



 (3)事故の検証がない原発再稼働はあり得ないこと、(4)研究開発の検証がない核燃サイクル政策はあり得ないこと、(5)国と電力会社は原発開発の「負の遺産に真摯に取り組むこと、(6)「原発・核燃からの撤退」「原発ゼロ」の合意形成へ―事故を風化させず福島事故の被災地、被災者を見ること、語ること、行動することーが今も重要であり、原発・核燃サイクルから撤退の合意形成、「原発ゼロ」実現、廃炉まで展望し闘い続けることが求められているーなどが提起されました。


《伊東達也氏のまとめの発言から》  


  原発の “負の遺産 ”は簡単な問題ではないが、廃炉までたたかいは続く。原住連の運動も続く。②福島に来てほしい。新潟県知事は来ました。特に県知事とか議員、若ものなどに来てほしい―と訴えました。


《井戸謙一弁護士の記念講演「原発訴訟と司法の責任」から》


 講師の井戸謙一弁護士は、かつて北陸電力・志賀原発2号機(石川県)の建設・運転差止めの判決を出した裁判長でした。今は弁護士として、原発訴訟に率先して真剣に取り組んでおられる方です。以下に講演のポイントを紹介します。



 
 ☆福島原発事故前の主な原発訴訟から   ~ 16件のうち、勝訴は2件のみ。それも高裁や             最高裁で敗訴。裁判官は、原発安全神話、エネルギー資源のない日本に原発は必要不可欠、裁判をやる原告らは特殊な人たちでは? 最高裁判例に逆らえない―などと悩んでいた。
 ☆福島原発事故前の判決と原発の必要性  ~ 女川1審判決(仙台地裁94・1・31)、志賀1号機1審判決(金沢地裁、94・8・25)、志賀1号機2審判決(高裁金沢支部98・9・9)、女川2審判決(仙台高裁99・3・31)~いずれも電力供給源としての必要性を認めている。
 ☆原発の必要性の崩壊 ~ しかし、福島第一原発事故で原発の安全神話は崩壊。原発のエネルギー源としての必要性は、原発が停止していても電力不足が起きなかったことで崩壊(2015年夏季の需給実績が示している)。さらに、福島原発事故によって原発のコスト高が底なしであることも明白となっている。再生可能エネルギーの電力導入量が世界的に急速に拡大し、電力取引価格が一気に下がり始めており、この点でも原発の必要性は言えなくなってきている。
 ☆世界から立ち遅れる日本 ~ 台湾で2017年1月脱原発法が成立し2025年までに原発をゼロにする。韓国も2017年6月19日、文大統領が脱原発を宣言。ドイツ、スイス、イタリア、オーストリア、イスラエル、ベトナムなども脱原発を宣言。アメリカはスリーマイル事故以降新規建設なし。わが国では、2017年8月30日にエネルギー情勢懇談会に提出された経産省の資料で、福島事故後2012年以降の世論は、原発再稼働反対が50~60%、賛成が20~40%で民意は「反対」が「賛成」の約2倍と明白。
 ☆福島原発事故後の裁判所の判断 (運転差止め請求権の有無について判断したもの)
              ~ 勝訴が4件、敗訴が10件(4勝10敗)
   ・裁判官を縛るものは大幅に減った!
 *福井地裁大飯本訴・樋口判決・決定(2014年5月21日)の特徴  ・司法の責任の自覚と裁判官としての矜持   ・判断枠組み論の構築→伊方判決にとらわれない  ・時代の変化を見据える  ◎大勢に従うのではなく、自分で考える姿勢で決定  
 *大津地裁高浜仮処分認容(2016年3月9日)山本決定の特徴   ・原子力規制委員会に対する厳しい視線    ・事業者の立証に対する厳しい姿勢   ・国に対する批判          ◎大勢に従うのではなく、自分で考える姿勢で決定
 ☆重要争点―原発に求められる安全性は?  ~ 棄却決定の論理―被害発生の危険が社会通念上無視しうる程度にまで管理されていること。決めるのは「社会通念」。福島事故後の規制内容には、社会通念が反映している。規制基準に適合した原発は安全性を具備する。
 ☆原発の運転を認めた判決・決定の特徴  ・司法の責任に無自覚 ・福島原発事故の風化 ・「寄らば大樹の陰」決定・判決の横行(コピペ)
☆「私たちはこう考える」  ~ 社会通念とは ー せめて絶対的安全に近い安全性が条件にならなければならない→それが「社会通念」である。 
 ☆裁判官の揺れる心理を乗り越えるためには
  *弁護団(多くの知識・情報収集約。乗りやすい理屈・考え方の提示。)  *学者・技術者によるー弁護士に対する情報提供。市民に対する知識の提供。  *自覚した市民による裁判の主体形成。情報の拡散、世論の喚起。   *世論~裁判所は市民の信頼が命綱。
 ☆多数者(権力者)の横暴から被害者を救済するのが訴訟の役割 
                       ~ そのためには裁判官の独立が不可欠
   *裁判官も人の子   *裁判官は職人(独立して職権を行使できる。上命下服が嫌だから裁判官を志した人が多い)  

☆これから盛り返す !   当面、今年12月の伊方仮処分広島高裁決定に注目―社会通念めぐり。 来春の大間本訴函館地裁判決も注目。

 
《10月14日午後の高浜原発、大飯原発の現地見学ツアーから》 
           「原発連ニュースにみる道原発連の歩み」は休みます)


“もんじゅ”の交付金で敦賀駅前に福井大学付属国際原子力工学研究所を設立~原子力       
     研究の後継者養成

 原発見学ツアーは、敦賀駅前から大型観光バス1台に約20人乗車、現地案内人が説明してくれました。最初に敦賀駅前に“もんじゅ”の交付金で設置したという3階建て福井大学付属国際原子力研究所について、原子力研究の後継者養成を目的に設置されたと説明がありました。大学のHPに、2018年4月の工学部の総募集定員数は525人、うち原子力エネルギー安全工学の募集定員は27人。国際研究所との位置付けで、今年はインドネシアから大学院生8人が入学、5月に敦賀市長を表敬訪問しているとのこと。

 原発が立地していない若狭町や小浜市は農業や漁業、地場産業振興に力を入れている

 
上り下りとも1車線の若狭自動車道で一路高浜原発へ向かう。途中、若狭町、小浜市、おおい町を経由、高所を走る自動車道から、若狭湾が見え隠れする。若狭湾岸は、原発や“もんじゅ”など15基が立地する“原発銀座”だが、原発が立地していない若狭町や小浜市などには、原発交付金は交付されず、コメ作りを中心に梅や養殖漁業、地場産業などで町おこしに力を入れているという。
 関西電力は、社宅を市街地住宅街のそばに建て城下町にと企てている

 バスは、おおい町を通過し、先に高浜町へ。原発再稼働反対署名でおおい町や高浜町の市街地を訪問した時、町内会の役員は「関西電力は、社宅に運転要員などを住まわせるが、社宅は25才までで、それ以後は地元の娘さんと結婚し、町内会の世話役をするなどして町に協力するのが関西電力のやり方だ」という。そういう説明をした役員自身、関西電力OBだったという。おおい町も高浜町も市街地のすぐ近くに関電が社宅を建て、町内住民との交流に気配りしているとのことでした。

 電源3法がなかった時に建設された高浜1、2号機は、格納容器最上部・ドーム部分を補強工事中!

 
高浜原発正門横の橋の上から4機とも見えました。3、4号機が稼働中で東側の湾内から冷却用海水を取水中で流路が激しく波立っていました。1、2号機の現場では、ドーム部分を囲って巨大なクレーンを動かして大掛かりな工事中でした。それは1、2号機が早い時期に建設されたため、格納容器の最上部ドーム部分の鉄筋が薄かったため、今になって補強工事中だとの説明。また、正門横の橋の後方、高いところに「音海トンネル」につながる長大な橋をかける工事が行われていました。音海トンネルの先に音海集落があり、原発事故時には、この道路を通らなければ避難できない陸の孤島だとのこと。わざわざ原発サイトの前を通って避難しなければならない避難計画のまま再稼働させるなどとんでもないことです。

 大飯原発1、2号機は、出力118万kWと巨大だが、安全対策費がかさみ採算割れだとして廃炉を検討する!

 おおい町へ引き返し、大飯原発を船から見学する「クルージング」(小さなヨットに乗船して若狭湾内を1周50分で周遊する)で、外海との接点部分まで行く。外海との接点近くまで行ったときに、大飯原発のドーム4機が見えました。大飯原発が建っている半島は、かつておおい町市街地からは、船でないと渡れない孤島だったが、関西電力が原発を建設することになり1974年に湾の上に橋を架けたのだという。橋の長さ700㍍、海抜15㍍の巨大な橋です。大飯原発の出力は、4機合計約480万kW超で関西電力最大規模を誇る。ところが関西電力は最近(10月17日)、大飯原発1、2号機は、採算が合わないから廃炉にすると発表したといいます。電気は足りているのだから当たり前です。

それにしても高浜も大飯も4機集中立地です。まさに日本の原発は安全最優先とは程遠い危険がいっぱいだと痛感したツアーでした。(米谷記)