2014年11月25日火曜日

原発問題連絡会ニュース 第254号2014年11月22日

電気料金再値上げ認可取り消し抜本的見直しを
泊原発再稼働やめて廃止・廃炉の決断を

  原発連が、経済産業大臣と道経産局長へ申入れ
安倍政権の原発・核燃サイクル推進の暴走政治に厳しい審判を下し原発のない日本と北海道の実現へ政治の大転換を勝ち取ろう
ー 第47回総選挙にあたってうったえます ~ 
                      2014年11月21日 原発問題全道連絡会

国民の世論と運動が追い込んだ解散・総選挙
 安倍首相は11月18日、消費税10%への増税時期を1年半延期することについて国民の審判を仰ぐとして、11月21日に衆議院を解散し、12月2日公示、同14日投票で総選挙を行うと表明、予定通り21日衆議院を解散しました。
表明の中で安倍首相は、消費税再増税延期は国民の審判を受けるべき重要な税の問題だから当然だとか、アベノミクスの3本の矢による経済対策で経済も好循環に向かいつつありデフレ脱却のチャンスを逃すわけにはいかない、3本の矢による経済対策についても審判を仰ぐ選挙だなどといっています。ところが、国民の世論は「今解散して総選挙をやる必要はない」が7割を占め、安倍首相の言い分を認めていません。
解散総選挙の本当の理由は、この2年間の安倍政権の国民無視の強権的亡国政治の暴走に、国民の怒りが沸騰し、国民の知る権利を奪う秘密保護法でも、今年4月からの消費税8%への増税とデフレ脱却をかかげたアベノミクスによる大企業・財界奉仕の経済対策でも、憲法9条を壊す憲法違反の集団的自衛権行使容認の閣議決定強行でも、日本食料や農業、医療、知的財産権までアメリカに売り渡すTPP交渉入りでも、人類社会と共存できない原発の再稼働と海外への輸出強行でも、県知事選挙に示されたオール沖縄の心を踏みにじる米軍基地の辺野古移設強行でも、これら日本の平和と民主主義、国民雄暮らしと営業かかわるどの問題でも、国民の多数が反対し、その世論と運動で追い詰められ、先延ばしすればするほど大敗することを恐れ、今しかないと大義のない解散総選挙に踏み切ったのではないでしょうか。
原発問題でも、世論と運動が追い込んだ総選挙
さようなら原発北海道1万人集会
(2012年10月13日札幌大通公園)
フクシマ原発事故から3年8カ月。いまも12万5千人もの県民が厳しい避難生活を強いられ、汚染水の流出も止まらず、除染も賠償もすすまず、復興の見通しも立っていません。原発と人類が共存できないことはますます明白です。
オール福島の再稼動反対、全原発廃炉のたたかい、首相官邸前の毎週金曜日行動の全国への広がり、福井地裁に続く福島地裁の勝利判決、全国通津浦々での宣伝署名行動や多彩な集会・デモなど、世論と運動の広がりが安倍内閣の暴走に立ちはだかり、原発の再稼働を抑え、原発がなくても電力は足りているなか、原発ゼロ、自然エネへの転換をという流れと広がりをつくり追い込んできたのではないでしょうか。
原発推進の安倍政権の暴走政治をストップさせ、
原発のない安心・安全な日本と北海道を切り開く選挙にしよう
北海道でも、2年半に124回も続く道庁前金曜日行動と道内各地に広がる金曜日行動、全道100万人署名の前進、多彩な集会やデモの広がりなどが、安倍政権とこれに追随する高橋道政を追い込んでいるのではないでしょうか。こうした原発情勢に確信を持ち、一層世論と運動を広げ、安倍政権の暴走に厳しい審判を下し、原発のない日本と北海道の実現への道を切り開く時ではないでしょうか。
いまこそ、広範な道民のなかに大きな世論と運動を広げ、全道100万人署名をやりぬき、安倍政権の暴走に厳しい審判を下しましょう。北海道から、再稼働反対、原発ゼロ、大間も幌延も許さす、再生可能エネの爆発的普及へ、国政転換への道を切り開く選挙にしましょう。
原発推進の政党と政治家・候補者に厳しい審判を下し、原発・核燃サイクルから撤退の旗をかかげる政党と政治家・候補者を勝利させるために、ともに力を尽くしましょう。

北電の電気料金再値上げ認可を取り消し、
抜本的見直しを
   泊原発の再稼働を止め、廃止・廃炉の決断を
   道原発連 ~ 11月21日に道経産局、道、北電へ申入れ
北海道電力が11月1日実施を強行した電気料金再値上げに、道民各層から悲鳴と怒りの声が噴出していることから、道原発連は21日、再値上げ認可の取り消しと抜本的見直し及び泊原発の再稼働問題について、北海道経産局と道、北電へ申し入れを行いました。
電源構成変分認可制度を廃止し、北電の経営全般を見直し
北電本社への申し入れ
(11月21日)
一層の経費圧縮を求めよ
原発連は、今回の電気料金再値上げが電源構成変分認可制度にもとづいているため、北電の申請も経産省の電気料金審査専門家小委員会の審査も、北電の経営全般の見直しを対象としない欠陥があるとして、いったん認可を取り消し、抜本的に見直すべきと求めました。
しかし、道経産局も道庁も北電も、制度の廃止と抜本的見直しに言及せず、「電源構成変分認可制度のもとで厳正で公平な審査を経て認可した」「なお北電には経費圧縮について、道民に丁寧に説明するよう求めている」(道経産局)などと述べるだけでした。

過度の原発依存のツケを道民にまわさず、国と北電が責任を持て
北電の大幅な再値上げの背景には、過度の原発依存(発電量に占める原発の発電量が全国一の44% 2010年度)があることは、原発依存度の低い中国電力や北陸電力が、フクシマ後一度も値上げしていないことを見れば明らかです。原発連は、過度の原発依存が招いた経営危機のツケを電気料金の再値上げで道民に押し付けるのでなく、原発を推進してきた国と北電の責任で解決すべきと求めました。
しかし、北電は、「原発は燃料費が安く電気料金を全国水準に下げることができた、再稼働すれば値下げができる」「引き続きベース電源として推進する」と開き直る態度でした。
30キロ圏内13町村の同意や実効性のない避難計画のまま再稼動するな
北海道経産局への申し入れ
(11月21日)
泊原発の再稼働について原発連は、「30キロ圏内の13町村の同意を再稼働の条件にすべき」「その際、全住民規模のアンケートや住民投票で判断するよう求めるべき」「今作成されている実効性のない避難計画のまま再稼働は認めるべきでない」などを要求しました。
 これに対して道は、「再稼動は安全最優先で国が判断すべきこと」「地元自治体の同意の範囲などの条件整備を行うよう国に求めている」などというにとどまり、道民に責任を負う知事として責任ある態度を示しませんでした。




原発連が4年ぶりに幌延深地層研究センター見学ツアー
深地層処分地にもその研究地にも不適な幌延での工事は中止すべき
幌延深地層研究センターを見学して  佐藤久志(原発連事務局次長)
10月26日原発問題全道連絡会が呼びかけた「幌延深地層研究センター」見学ツアーに参加してきました。
地下350㍍の調査坑道で説明を受ける
今年6月に完成した地下350mの周回調査坑道約760mに入り、工事の進行状況や地層等を見学してきました。周回坑道に掘られた試験坑道に8月29日に廃棄物の模擬体を設置した人工バリアの様子も見学してきました。幌延の地層は粘土質の軟らかい地層で、地下水には海水の3分の1程度の塩分が含まれているとのことです。工事は地下水の湧出やガスの突出などによって予定より大幅に遅れ、当初予算の約90%を使い切っていますがさらに地下500㍍まで掘削することが決まっています。
試験施設では高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を入れるステンレス容器、それを閉じ込めるオーバーパックと呼ばれる厚さ19cm、重さ5トンの炭素鋼容器に入れて密封、さらにそのまわりを粘土を主成分とした緩衝材ブロックで包む人工バリアの様子が展示されています。炭素鋼容器は試作品ということもあり、1本7千万円とのことです。廃棄物は2014年現在で約2万5千本と言われています。原発再稼働でその数は増え4万本の処分が必要と試算されています。
地盤や地質、地下水の状況、サロベツ断層帯ではM7・6程度の地震が10万年に20回前後発生するという専門家の意見もある所で10万年もの長期間の健全性が保障されるのかという疑問を新たにしました。地震列島の日本に適地がないにもかかわらず、核燃料サイクルの推進や原発再稼働でこれ以上核のゴミを増やすのは止め、無駄な高レベル放射性廃棄物の地層処分工事も止めるべきです。
見学後の鷲見幌延町議らとの懇談会で鷲見さんらは「原子力機構幹部は研究終了後(2021年頃)に埋め戻すことについて、「もったいない」発言をするなど協定をないがしろにしかねない、なし崩しの放射性廃棄物の持ち込みや、処分場への転用」と「研究期間の延長」に警戒が必要と強調していました。

《解説》泊原発がトリチウムを海に放出?
原子炉の中ではウランが核分裂していろいろな放射性物質になりますが、その中の一つがトリチウムです。同時に制御棒に含まれているホウ素や一次冷却水に添加されているホウ素とリチウムも中性子と反応して、ヘリウムとトリチウムになります。こうして泊原発で作られるトリチウムの量は、一般的には1年間に400兆ベクレルぐらい、と言われています。北電のホームページによれば、運転開始以来毎年その一部を液体として海中に捨てており、実際に捨てている量は、最も少ないのが1991年度で11兆ベクレル、最も多いのが2011年度の38兆ベクレルで、2013年度末合計で570兆ベクレルになります。
放出の限度を示す北電の管理値は年間120兆ベクレルです。2014年10月18日付の北海道新聞によれば、北電は実際の放出量は管理値を「十分下回っており、健康にも環境にも影響はない」などとしている、とのことです。そうは言っても環境の放射性物質を増やすようなことはあってはならないことです。
トリチウムは二次冷却水に混ぜて放流していると考えられます。最も多かった38兆ベクレルの場合、均一に混ざっているとしてその濃度を計算してみると1リットル当たり70ベクレルくらいになります。これは大気圏内核実験の最盛期である1963年ころの降水中の値に相当します(現在の降水では0・7ベクレル前後)
なお、トリチウムを含んだ水からトリチウムを効果的に取り除くのは難しいとされ、福島原発では汚染水が増え続け問題になっています。
トリチウムとは・・・水素の仲間。普通の水素の原子核は陽子1個のみですが、トリチウムには中性子も2個あり重さは普通の水素の3倍です。そのためか3重水素ともよばれています。半減期12・32年の放射性物質で、ベータ線を出してヘリウムに変わります。
天然では大気中で酸素と窒素が宇宙線と反応して作られていますが、存在量としては普通の水素に比べればごく僅かです。化学的な性質は普通の水素と変わらず、水素の化合物の中には普通の水素の一部がトリチウムに置き換わっているものもあります。水の場合は水分子の水素2個のうち1個がトリチウムに置き換わったのがトリチウム水で、湖沼・海・河川などの水には1リットル当たり1~3ベクレル含まれています。(石崎健二